北里大学医学部外科学 渡邊昌彦教授

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がんになったら、どんな治療法があるの? 仕事は続けられるの? がん患者を取り巻く医療や社会の現状と課題、就労に関することなどを学べる無料の市民講座が2017年10月22日13時からパシフィコ横浜・国立大ホールで開かれる。

主催は、同時に開催される第55回日本癌治療学会学術集会。会長を務める北里大学医学部外科学の渡邊昌彦教授に今回の市民講座の特徴を聞いた。

「それぞれの癌」と共に、「それぞれの生」を生きる

市民講座のテーマは「『それぞれの癌』と共に、『それぞれの生』を生きる」。テーマを決めた理由について、渡邊教授は、世の中にはがんに関する情報があふれているが、がん治療の本質を知り、そして患者さんの人生に合った医療やサポートを考えることが求められていると話す。

「『それぞれの癌』は、大腸がん、胃がん、乳がんなど各々のがんの個性を知り、それに対する治療法を選択する必要があるということです。また、遺伝子研究が進み、同じがんでも遺伝子の異常個所によって特性が違うことが分かってきました。将来的に『個人のがん』に応じた医療・治療がさらに求められるでしょう。『それぞれの生』は、患者一人ひとりが違う人生を歩み、それぞれ違う価値観や哲学を持っているということ。その人が何を望むのか、どう治療したらいいのか、その人全体をサポートできるような社会の仕組みが求められていると感じています」

テーマを具現化した3部構成

市民講座は3部構成。第1部は「それぞれの癌を支える」と題し、医療者や専門家らが講演する。現在のがん治療について解説するほか、がん専門の相談員「がんナビゲーター」や、新しい治療法を開発する上で欠かせない臨床試験についても取り上げる。

「患者が自ら治療法を選択する時代になり、効果だけではなく副作用や後遺症なども学んでおかなくてはなりません。医療者とよくディスカッションして決める上で、がん治療の総論を知っておくことは大切です。また、科学的根拠のない情報や周囲のウワサなどに翻弄されて困っている患者さんが多いため、身近に相談できる『がんナビゲーター』の育成が急務となっています。そして、それぞれのがんに応じた治療法を確立するために、患者さんが臨床試験にご協力いただくことが欠かせないということを多くの人に知ってもらいたいと思っています」

確かな情報を知ってほしい

続く第2部は、「『それぞれの生』を生きるがんサバイバー」。38歳で子宮頸がんになった女優の仁科亜季子さんが登壇し、自身の体験談を披露する予定だ。

第3部は、「それぞれの生を支える」として、がん患者が直面している社会的な問題や患者就労支援の現状についての講演がある。

「一番の問題は、がん患者さんの就労支援きちんとできていないことだと思います。行政、患者団体、医療者などが共によりよい改善策がないか議論の場を設けました。がんは自分の生き方を見つめ直す機会を与えてくれる病気ともいえます。より多くの方にご参加いただき、がんのことを正しく知ってほしいと思っています」

講演の後には、森山良子さんのチャリティーコンサートが予定されており、最後まで楽しめるイベントとなっている。

市民講座に参加するには事前に申し込みが必要。専用ウェブフォームからか、FAXまたはハガキに、必要事項(郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号、同行者がいる場合は参加総人数)を記入の上、株式会社コンパス内「第55回日本癌治療学会学術集会 市民公開講座」申込事務局(〒113-0033 東京都文京区本郷三丁目3番11号 NCKビル5階 FAX:03-5840-6130)まで送付する。締め切りは10月10日(火)、ハガキは必着。

医師・専門家が監修「Aging Style」