学歴次第で、セミナーや説明会、インターンシップの案内を優遇する企業は相当数あります (写真:Nutria / PIXTA)

就職活動は学生に多くの負担をかける。自己分析や企業研究、SPI・エントリーシート(ES)、面接対策と、学生がやることは多い。その努力が報われ、早期に内定を得る学生もいるが、うまくいかない学生もいる。

今の就活は、3年生時のサマーインターンシップから実質的に始まっている。経団連の「採用選考に関わる指針」では、翌年3月から採用広報が解禁されて各社のホームページがオープン、説明会が開かれ、選考は4年生の6月からということになっている。しかし、実際の動きはもっと早く、3月以前に、”実質内定”を出している企業も多い。だから就活は早く始めたほうがいい。

学歴フィルター」で大量応募を処理


ところが、インターンシップや説明会に応募しても、参加できない学生がいる。その理由として考えられるのが「学歴フィルター」だ。

学歴フィルターとは、文字通り、学校名で選考対象を絞っていくもの。特定の大学の学生には、インターンシップやセミナーの案内を送る一方で、それ以外の大学には情報を送ることはない。企業の中には、学生を選考する際にも学歴でフィルターをかけており、その対象でない大学に在籍する学生が選考に入れることはない。これが学歴フィルターだ。

学歴フィルターを行う理由はいくつかある。

まず応募者の数である。人気の高い大企業の場合、万単位の学生がエントリーする。その一方で、対応する人事の数は限られている。そこで、何らかのフィルターをかけて学生数を絞り、まともに選考できる数にする必要がある。いちばんわかりやすいフィルターが「学歴」というわけだ。

もうひとつの理由は「優秀人材の獲得」である。企業はこれまでの採用によって、どの大学の学生が入社後に活躍したかのデータを持っており、その実績がある大学から採用したいと考えている。

出身大学と入社後の活躍を定量分析している企業は少ないかもしれない。しかし、人事部の多くの人間は、自分が採用した学生のことを気にかけている。「活躍している○○さんと同じ大学」に親しみを持つだろうし、採用したことのない大学にはなかなか関心が持てないのも事実だろう。

学生の声を聞いてみよう。HR総研が今年6月に楽天「みんなの就職活動日記」と共同で行ったアンケート調査がある。2018年卒業予定の就活生約2500人に対して、「企業の学歴フィルターを感じたことがあるか」を聞いたところ、全体の55%が「ある」と回答している(詳細はこちら)。

約半数なのだが、旧帝大クラスや早慶クラスでは「ある」と答えた学生が多く、およそ3分の2となっている。ただし、これは上位校の学生にフィルターがかかり、除外されているわけではない。旧帝国大学や早稲田・慶応大学クラスでは、選考が進んでいく過程で、自分が優遇されていることを実感するのだ。

フィルターに気付くのは選考に”残る”学生


学歴フィルターが存在し、上位校の学生が優遇されていることは、就活生のコメントに現れている。

「エントリーシートが通過しやすかった。リクルーターが大学別につく」(一橋大学、文系)、「同時刻でも座談会の予約がすでに満席表示の人と余裕がある人がいた」(東北大学、文系)、「抽選で参加できる見学会に、上位校の人しかいなかった」(大阪大学、文系)、「まったくwebテストができなかったが、次の選考に進むことができた」(早稲田大学、文系)、「プレエントリー後、即リクルーター面談の連絡が来た」(名古屋大学、理系)といった声である。

「説明会の抽選に漏れたが、わざわざ空き日程を案内された」のは早大生。「自分は東大なのでESが通りやすいと感じた(インターン含む)」(東京大学、理系)、「自身が参加した企業の説明会、面接には、旧帝大、東工大、早慶がほとんどであった」(東北大学、理系)という声もある。また、「適当に予約した説明会が、特定の大学限定の開催だったこと。学生側は、誰もそれを知らなかったことより、秘密裏に集められたと感じた」(早稲田大学、文系)。そこに集まった学生にだけ、大学で選別されたことがわかるのだ。

それとは反対に、冷遇されていることに気付く学生もいる。「マイページから説明会の予約が全く取れないが、他の大学の子は取れると言っていたとき」(同志社大学、文系)、「説明会への予約が常に満席の状態で表示されている」(九州工業大学、理系)など、自分だけなぜ満席? という疑問から、「学歴フィルターなのでは」と気付いたケースである。

「メールが届いてすぐに採用ページにログインしたのにセミナーが満席だったこと」(東京女子大学、文系)、「友人と同時刻に説明会予約をしようとしたが、わたしの画面ではすでに満席になっていた」(聖心女子大学、文系)といった女子大生からの声もあった。

優遇されている学生、冷遇されている学生のいずれを見ても、応募者が殺到している人気企業での出来事のようだ。学生が一部の企業に集中するからこそ、学歴フィルターが生まれるとも言える。

企業側のデータも紹介しておこう。HR総研では2017年3月に企業向けの調査を行った。学生向け調査には学歴フィルターという言葉を使うが、企業向けでは「ターゲット大学」という言葉で質問している。ターゲット大学を設定しているのは全体の39%の企業だ。

学歴フィルター」の学生調査では、旧帝大・早慶クラスで「ある」という回答が多かったが、企業調査の「ターゲットとする大学グループ」では旧帝大・早慶クラスは2割台と少なく、もっとも多いのはGMARCH(学習院・明治・青山学院・立教・中央・法政)・関関同立(関西・関西学院・同志社・立命館)クラス。学生のレベルが安定しているので、評価されているようだ。

キャリアセンターや「就職四季報」で調べる

ターゲット大学を設定している企業の採用施策だが、ターゲット大学に採用を限定している企業は実際には少なく、約2割。企業規模で「1001人以上」に限れば約3割である。

ターゲット大学を設定していても、「すべての学生を通常の選考ルートに上げている」という企業が多く、全体の7割強に達している。平たく言えば、ターゲット大学を設定していても、「その大学以外はダメ」という企業は約2割、「その大学がほしいけれど、それ以外の大学でも公平に扱っている」という企業が7割強、ということになる。

裏返せば、この約2割の企業を志望から外せば、就活でいやな思いをすることは少なくなるはずだ。では、その約2割の企業を、どうやって調べられるのか?

調べる方法はある。大学のキャリアセンターに行けば、就職実績企業リストがあるはずだし、『就職四季報』(東洋経済新報社刊)でも大学の先輩が入社しているかを調べられる。採用実績校の欄には、採用校(大学院を含む)とその人数が掲載。また、自分の大学からの採用実績があれば、大学のOB・OGがいるはずだから、コンタクトを取って、くわしい話を聞くことも可能だろう。

学歴フィルターは、学生が一部の人気企業に殺到して起こる出来事だが、知名度の低い中堅・中小企業も、あえてターゲット校を選ぶということをしている。そういう企業の目的は学生の足切りではなく、より確度の高い応募につなげるために、対象大学を絞り込む採用を行っている。

「研究室への定期的な訪問」(従業員1001人以上、メーカー)や、「学内セミナー等への参加」(同1001人以上、情報・通信)といった地道な努力をしており、さらに、「キャリアセンターだけでなく、ゼミや部活等との接点を増やす」(同300人以下、金融)ことや、「大学教授、研究室との直接的な接点強化」(同300人以下、マスコミ・コンサル)を行っている企業もある。

いわばその大学の学生をぜひとも採用したいと、企業側が積極的にアプローチしているわけだ。BtoB企業は、学生への知名度が低いものの、業界内でのシェアが高く、社会人に評判がよく知られている企業はたくさんある。こういう企業の話を聞かない手はないだろう。

大学に頻繁に通い、いい人材を探す企業も


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現在の就活は、自己分析・業界研究などの準備期間を経て、就職ナビへのプレエントリー、説明会出席、ES提出、面接と、ベルトコンベヤー式に進んでいく。「ひとりの人間としてみてほしい」という学生もいるが、流れ作業のように進んでいくために、じっくりと見極めることは難しい。

学歴フィルターや面接官の態度に苛立つ学生は多い。それでも、企業側を見れば、採用に満足している人事部は少なく、何らかの課題を感じているのが実態である。

ターゲット大学へのアプローチ方法は企業によって異なる。どの企業もキャリアセンター、研究室、教官との交流を強化しようとしており、手作り感が強い。このような大学基点の採用は、学生・企業双方のメリットになるし、就職してからのミスマッチも少ない。

誰もが知っている有名企業に就職することが、就活のゴールではなく、自分が生き生きと働くことのできる企業に出会うことが大事なはず。就職での選択権を持っているのは学生だ。学歴フィルターなど、周囲の環境に惑わされず、ぜひ自分の道を切り開いてほしい。