衆参同日選挙の可能性が、日に日に高まっている。国会で安倍総理が、憲法改正への意欲を改めて示しているからだ。憲法改正をするためには、衆参で3分の2以上の議席を得なければならない。そのためには、自民党に有利に働く同日選挙が不可欠だ。

 もちろん同日選挙が噂される根拠は、それだけではない。まず、辺野古基地建設での沖縄県との法廷闘争の休戦だ。
 3月4日、政府は基地建設をめぐる代執行訴訟で、福岡高裁那覇支部が示した工事中止を含む暫定和解案を受け入れると表明した。これにより工事をいったん止めて沖縄県と政府が改めて協議に入ることになるが、安倍総理は「辺野古が唯一の選択肢であるという国の考え方に変わりはない」と主張しており、協議の決裂は必至だ。
 それでも、なぜ政府がこれまで拒否してきた和解案を受け入れたのかといえば、沖縄県との対話姿勢を見せて、選挙を有利に運ぼうという戦略だろう。
 加えて、政権交代前から民主党と約束していた衆議院の定数削減について突然取り組み始めたのも、衆議院選挙の準備としか考えられない。

 さらに衆参同日選に勝利するための安倍総理の“切札”は、消費税引き上げの凍結だ。これまで凍結を完全に否定してきた安倍総理だが、最近になって「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り確実に実施する」と凍結の条件を口にするようになった。
 また、ロイターは3月7日に「消費税率10%への引き上げをめぐり、一部の経済官庁で延期した場合の経済効果や実施した場合の経済への打撃について、非公式に検討を始めた」と伝えている。
 消費税引き上げ凍結は、二番煎じの戦略ではあるが、家計が厳しい状況に追い込まれている現状では、絶大な効果を発揮するだろう。与党圧勝で、一気に憲法改正に進んでしまう可能性も否定できない。

 それを防ぐために、民主党と維新の党が合流を決めるなど、野党共闘の動きが本格化し、一部の選挙区では政策協定も結ばれている。ただし、共通政策は安全社会保障関連に限定されているのが現状だ。しかし、いま一番必要なのは、アベノミクスに代わる経済政策の提示なのだ。
 安全保障法案の強行、原発の再稼働、TPPの大筋合意など、国民生活を根底から脅かす政策を採りながら、安倍政権が高い支持を誇っている最大の理由は、景気を改善した実績だ。しかし、アベノミクスに陰りが見えてきた今こそ、野党は足並みを揃えて、景気をよくする共通政策を示すべきなのだ。

 一つの案は、立命館大学の松尾匡教授が提案する、社会保障の大幅拡充を国債の日銀引き受けを財源として行う政策だ。私はこの案を、有効かつ実現性の高い政策だと思うが、高いインフレを恐れる一般国民がすぐには納得しない可能性が高い。
 もう一つの案は、消費税率を5%に戻し、法人税の実効税率を40%台に戻し、国家公務員の給与を3割カットする政策だ。それくらい思い切った政策を打ち出さないと、野党は政権獲得どころか、安倍政権の暴走を止めることもできないだろう。