一流営業は「先手必笑」笑顔5秒キープの挨拶をする

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ちょっとした一言や仕草が顧客に不快な思いを与えている。一流の営業マンと三流の行動を比較することで、数字に直結するマナーのポイントを探っていく。

初めての顧客への訪問だと、どんなベテランの営業マンでも緊張するもの。外資系教育会社で世界ナンバー2のセールスウーマンになったことのある営業コンサルタントの和田裕美さんは、「第一印象が悪かったら、次はもう会ってもらえません。一流の方々は挨拶を含めた最初の5秒間を大切にして、必ず笑顔をキープしています」という。

しかし、特に年配の男性の場合は、部下や後輩を前に威厳を保とうとして、自分の笑顔を忘れてしまっていたりする。そうした男性諸氏に貴重なアドバイスをしてくれるのが、マナーコンサルタントの西出ひろ子さんだ。

「お客さまに好印象を持っていただける笑顔づくりのポイントは『目』にあります。どうすればできるのかというと、まず鏡に向かって鼻から下をマスクや本などで隠します。そして、感じのよい目の表情になるように、自分の目を動かしてみましょう。これを朝晩繰り返していると、自然と口角も上がって、顔全体で微笑むことができます」

基本的に挨拶は訪問した側からするもの。しかし、初対面でプラスの印象を与えるためには、訪問された側から行っても構わない。それが一流の作法だと西出さんは考えている。そうした“先手必笑”で来訪者の心をつかめれば、ビジネス交渉だって有利に進められるはずだ。

かといって、闇雲に笑顔を振りまいていればいいのかというと、そうではない。三流の営業マンは少し親しくなると、「どうも、こんにちは、エヘヘ……」といった挨拶をして、相手に不快感を与え自ら墓穴を掘ってしまうことが多い。特に気をつけたいのが、ドアを開けた際の挨拶の作法である。

「ドアを開けながら、『こんにちは』と挨拶して入ってくる営業マンが結構いますね。一度に2つ以上の動作をするということは、何かのついでということです。相手の方に対して無礼であるのみならず、見た目もだらしなく、みっともない印象を与えてしまいます」

そんな手厳しい指摘を行うのは、成約率99%の“営業の神様”として知られる営業セミナー講師の加賀田晃さんだ。加賀田さんは、「ドアを開けるのであればきちっと開けて、それから挨拶をしなくてはいけません」と釘を刺したうえで、具体的な手順を紹介する。

(1)ドアをノックしてから開ける(2)右手でドアノブを押さえながら部屋の中に一歩入る(3)そのまま直立不動で「失礼いたします」といって一礼する(4)静かにドアに向き直って、両手ないしは右手で丁寧にドアを閉める(5)振り向いて軽く一礼し、相手の方のところへ歩んでいく

次に行うのが名刺交換を交えた挨拶。ここでも三流の代表的な行動パターンがある。「目を合わせずにうつむいたまま、社名や自分の名前をいわずに、『こういった者です』といいながら出す人が意外と多いのです。暗に『名刺を見ればわかりますよね』といっているようなもので、大変失礼なことです。それに目を合わせないことも、大きな間違いです」と西出さんは話す。

「目は心の鏡」といった格言があるように、目はその人の人柄や考えていることを表すもの。自分から目を合わせないということは、何かやましい気持ちを持っていたり、自信のなさを相手に伝えてしまうのだ。

また、和田さんは三流の失敗例として、人によって態度を変えることをあげる。「訪問先の社長にはパーフェクトな挨拶をするのに、受付にいる女性に対しては『ヨッ! 社長いる?』といったような横柄な挨拶をする人がたまにいます。でも、そんな底の浅さはすぐに見透かされてしまいます。受付に社長のお譲さんが座っていたらどうなるのでしょう」と注意を促す。

■訪問時の入室

▼三流は……
ドアを開けながら挨拶する

無意識のうちに失敗してしまうのが、この入室に際しての挨拶である。自分が顧客の立場になって考えてみてほしい。いくら挨拶をしているからといって、ずけずけと家の中に入ってこられたら反感を覚えるだろう。それに、ドアを開けるということと、挨拶という2つの動作を同時に行うということは、「何かのついで」を意味しているのだ。お客さまにはだらしなく映ってしまうだけなので要注意である。

▼一流は……
きちっと立ち止まって挨拶

ドア開けと、挨拶を一つひとつ分けることで、顧客の目には折り目正しい、きちっとした所作に映るようになり、一目で好印象を与えることができる。挨拶した後は両手ないしは右手で丁寧にドアを閉める。それから振り向いて一礼をして、顧客のところへ歩み寄っていけば挨拶のマナーとしては完璧だ。また、このときに最初の5秒間は笑顔をキープしておくという大原則を守ることも、どうかお忘れなく。

■初対面での名刺交換

▼三流は……
「こういう者」ってどんな者?

名刺交換は営業の現場で自分を知ってもらうための重要なセレモニーである。それがわかっていながら、ごそごそと鞄のなかから名刺入れを取り出して、「こういう者」ですとぽつり一言いって名刺を渡す人が少なくない。確かに、顧客は名刺を見れば、会社名も営業マンの名前もわかる。しかし、それでは「読めばわかるでしょ」というようなもので、その後の商談は弾まなくなってしまうだろう。

▼一流は……
きっちり名乗って両手で差し出す

自己紹介で自分の名前をいわない人はいないはず。名刺交換は自己紹介の場であるのだから、きちんと名乗る。それと何か人に手渡すときには、片手ではなくて両手で渡すのが原則と覚えておこう。そのほうが丁寧な印象を与えられる。同時に名刺を交換し合う場合には仕方がないが……。また、名刺交換の際にきちんと相手の目を見ること。目をそらしていると、何か一物を持っているのではと勘繰られかねない。

(伊藤博之=文 後藤範行=イラストレーション)