DVは「依存症」―「暴力」が達成感に変わる

年々と被害が増加しているDV。「暴力を振るうほど頭にくるなら別れれば?」と思うのが自然だが、残念ながら「別れに対する」恐怖がきっかけなので、解決が難しい問題でもある。
DVは一種の依存症で、自分が傷つくのを恐れるあまり、相手を服従させようと暴力にはしる。幼少期に暴力的な光景を見て過ごすと、暴力=達成感に変換され、おとなになっても止められないひとになってしまうのだ。
■傷つきたくないから傷つける?
近年問題になっているのが家庭内の暴力、いわゆるドメスティック・バイオレンス(DV)だ。内閣府の資料から、相談件数と、事件として扱われた件数をあげると、
・2002年度 … 35,643件 / 1,398件
・2010年度 … 77,334件 / 3,114件
・2011年度 … 82,099件 / 2,739件
・2012年度 … 89,490件 / 3,152件
・2013年度 … 99,961件 / 2,984件
と、事件はじわじわと、相談件数はうなぎ登りに増えている。これらを取り締まるために、2001年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」が公布され、現在は配偶者だけでなく、事実婚や元配偶者、同棲相手(元も含む)も対象とされている。
それほど「身近」な問題になっているのだ。
DV=暴力と解釈されがちだが、なぐる/けるなどの「身体的暴行」だけでなく、暴言や監視などの「心理的攻撃」、たとえ夫婦であっても「性的強要」も含まれる。ストーカー行為も一種のDVと表現することもでき、女性が加害者のパターンもある。
年間10万件近くも発生している背景には、DVが「依存症」であることが一因となっている。
DVの根底にあるのは、相手に対する未練だ。「裏切られた」「許せない」などと立腹しながらも、「別れよう」という選択肢がない。捨てられてしまう=自分は不要という感覚が生まれ実行できないのだ。これは回避依存症とも呼ばれ、端的にいえば自分が傷つきたくないという気持ちが強いため、相手を服従させるための行動をとる。
それが「暴力」という形であらわされているのだ。
■「暴力」が達成感に変わる!
なぜ暴力的な方法をとるのか? これは人間の本能に加え、幼少期の体験が強く影響する。親が乱暴な行動をすると、子はそれをまね、やがて「悪いこと」ではなくなってしまうからだ。
ヒトは危険や恐怖を感じて興奮状態になると、本能的に「戦う」か「逃げる」を選んでいる。「逃げる=別れる」を「捨てられる」と感じるなら、残された道は戦う=暴力的な行動をとるしかない。パートナーとの別れを「危機」と定義しているひとこそDVに走りやすいのだ。
くわえて、幼少期に親の暴力をまのあたりにすると、子も暴力的な行動を取りやすい。自分にもできる!という気持ちが生まれ、自発的にマネしてしまうからだ。
心理学者・アルバート・バンデューラの実験では、乱暴なおこないをしている親の姿を見せると、子どもも攻撃的になるという結果がある。「自分にもできるかな?」という気持ちから始まり、やがては「できた!」自信につながる。
これは自己効力(じここうりょく)感と呼ばれ、つまりは達成感であり、自分への報酬(ほうしゅう)に変わる。暴力的なシーンに慣れてしまうと、最終的には「良いこと」となってしまうのだ。
これらをDVに当てはめると、
・「別れる=逃げる」という選択肢はない
・相手を服従させるしか方法がない
・暴力を振るう=自己効力感が上がる
がループし、抜け出せなくなる。これでDV依存症の完成だ。
アルコールやギャンブルと同様に、依存症になってしまうと「誰か」の力で回復させるのは難しい。被害を受けても「いつか直るだろう」と我慢するケースが多いのだろうが、当人が自覚しない限り改善の見込みはないので、相談センターに電話するのが良いだろう。
■まとめ
・DVは一種の依存症
・根底にあるのは「見捨てられるのがコワい」という気持ち
・幼少期の体験によっては、暴力を振るう=達成感につながることも!
(関口 寿/ガリレオワークス)外部サイト
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