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◆解説◆
 アルルト所長は中国人観光客が「海外で起こす問題」について、かなり好意的に論じたと言える。実際には、中国人自身が海外に出かける“同胞”の行状について、極めて厳しく批判しつづけている。

 中国社会科学院旅遊研究中心(旅行研究センター)の特約研究員の劉思敏氏は、「人の素養というものは、旅の際にあらわれる」、「自国内できちんと振る舞えない人が、国外に出てきちんと振る舞えるわけがない」などと指摘した。

 習近平国家主席は2014年9月、モルディブを訪問した際に行った現地駐在の中国人を集めた会合で「わが国の国民が海外に出かけた際に、もっとマナーを守るように教育しなければ、ダメだ。ミネラルウオータを飲んだあと、ボトルを投げ捨てるようじゃいかん。人様のサンゴ礁を荒してはダメだ」などと注文をつけた。

 アルルト所長の言葉で「文化と文化の間には差異があるだけで、優劣があるわけではない」の部分は、中国人にありがちな考え方に対する「根本的な批判」と解釈できる。

 中国人は相手国の発展の度合いや国力が自国より劣っているとみなすと、相手国人を露骨に見下す場合もある。その場合、相手の伝統や習慣も「劣っている」と見なし、無視/軽視することも多い。そのことが、旅先でのトラブルや中国人に対する嫌悪感を増長することにつながっている。

 中国駐サウジアラビア大使館は2012年、同国を訪問する自国人が現地の宗教や伝統を軽視したためにトラブルが発生しているとして、「酒や豚肉を携帯してのサウジアラビア入国は厳禁されている」、「非イスラム教徒の中国人は、モスクや公共の場所にある礼拝室に入らないこと」などと、注意を喚起した。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)