ドイツに本部を置く中国海外旅行調査研究所のヴォルフガング・アルルト(Wolfgang Arlt)所長は中国人客の特徴を「自分の考えを貫く気持ちが強い」や「購買意欲が旺盛」と説明。旅先の「問題行動」については「正常な現象」と指摘した。(イメージ写真提供:123RF)

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 中国では2014年、海外旅行者数が初めて1億人を突破して年間延べ1億900万人に達した。ドイツに本部を置く中国海外旅行調査研究所のヴォルフガング・アルルト(Wolfgang Arlt)所長は中国人客の特徴を「自分の考えを貫く気持ちが強い」や「購買意欲が旺盛」と説明。旅先の「問題行動」については「正常な現象」と指摘した。

 1949年に中華人民共和国が成立して以来、中国人の出国は、留学などを含めて「公務」と認められた場合のみだった。一般庶民の「自費による海外旅行団」が初めて認められたのは1983年で、「香港・マカオ地区への親族訪問」と行先も目的も限定されていた。

 しかし80年代にはタイへの団体観光旅行が実現。その後、マレーシア、フィリピン、韓国、オーストラリアなど、行先はどんどん拡大。団体旅行だけなく個人による観光旅行も認められるようになった。

 2014年には海外旅行をした中国人は初めて延べ1億人を突破して1億900万人になった。同年の海外旅行による支出は前年比28%増の1648億米ドル(約19兆3000億円)だった。2015年には1940億米ドル(約22兆7400億円)に達すると見込まれている。

 2日付の中国メディア・広州日報によると、ドイツに本部を置く中国海外旅行調査研究所のヴォルフガング・アルルト所長は1990年代の状況について「欧州にくる中国人団体客は、『一生に一度の機会』と考えていた」と説明。現在では、裕福な中国人が「週末だということで上海からソウルに飛び、さらに別の場所に移動する」ことも珍しくないと指摘。海外旅行も国内旅行と同様になったと説明した。

 米サンフランシスコで仕事をしている男性ガイドによると、2000年ごろまで訪米する中国人団体の多くが「公務」によるものだった。彼らには「素朴で謙虚で、他人とは円満な関係を心掛けていた。旅行目的はシンプルで、要求も厳しくはなかった。責任感があり比較的自律的」との特徴があったという。

 現在は、さまざまな旅行の経験がある中国人が多い。外国語もわかり「大胆で冒険的。斬新さを求める」ようになった。特に若者の場合には個性が強く、「(ひっきりなしに鳴く)アヒルと同じで、『私の旅行は私が決める』(と主張しつづける)」との特徴がある。

 また、2000年ごろまでの中国人団体では、即席麺(めん)を持参する人も多かった。「米国で食べるものが口に合わないのではと心配していた。お金を節約する意味もあった」という。また“あごあし付き”である公務の旅行なので「公金は節約せねばならない」という考えもあったという。

 現在の中国人は「ほぼ逆」になった。「宿泊、飲食、遊びにすべて満足することが必要で、楽しみのためには金を惜しまない」という。

 海外において、中国人の「不行跡」が問題になることも増えた。エジプトで遺跡に文字を刻んだり、航空機の客室乗務員に即席麺を浴びせかけたなどの話も伝えられている。

 中国海外旅行調査研究所のアルルト所長は「一部の旅行者に旅先の習慣に合致しない行為があるのは、多くの場合経験不足によるものだ。海外旅行が“発展途上”の場合、個別にそういった現象が出現するのは正常だ。実際には、礼を逸した行為をするのは中国人客に限ったことではない」などと説明。

 さらに、かつては米国人や日本人の海外旅行客も「非難と対象」になったと指摘。米国人旅行客は「金持ちだが傲慢で粗野」と言われた。日本人は団体行動ばかりして、言葉も通じないなどとして「最もいやな観光客」と言われた時期があったと指摘。

 アルルト所長は、教育を通じて、「問題ある行為」は減少できると説明。「人は経験と教育を通じて『人と人は平等だ。文化と文化の間には差異があるだけで、優劣があるわけではない』と、学ぶことになる」と説明した。