「安い」「速い」「長時間駆動」と三拍子そろったGoogleのノートPC、Chromebook

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クラウド化の波とともに、Gmail、Google Map、Google Driveなど、気がつけばパソコン上のほとんどの処理が、ブラウザ上でできるようになった昨今。「だったら、すべての処理をサーバ上で集約させて、ユーザー側のPCはブラウザに特化すれば良いのでは?」というラジカルな発想で開発されたのが、Googleが提唱する新しいPCの形、Chromebookです。「価格が安い」「動作が軽い」「バッテリーが長持ち」という長所を活かして静かなブームとなっており、2014年11月から日本正規品の店頭販売も始まりました。

筆者がはじめてChromebookについて耳にしたのは、ゲーム開発者向け国際会議、GDC2011会場のこと。GoogleがAndroid向けのセッションで、参加者全員にChromebook(当時はChromePCと呼ばれていた)をプレゼントしたのです。当初は「処理速度が遅くて実用的ではない」という意見も耳にしていたのですが、周囲で「どうも結構使えるらしい」という噂をちらほら。サブマシンのMacBook Air(Mid 2011)でバッテリーがへたり気味だったこともあり、思い切ってDELLの「Chromebook11」を購入してみました。

最大の特徴はインターネット環境下での使用に特化していることです。Googleが提供するブラウザ「Chrome」が作業スペースとなり、様々なサービスが使用できるほか、Chromeウェブストアで提供される多数のアプリケーションも使用できます。操作の軽快さは想像以上で、電源ボタンを押して使用可能になるまで7秒程度しかかからず、バッテリーの持ちも実測で7-8時間は可能。直販サイトなら2GBモデルが3万円強!という価格も魅力的です。

またChromebookを購入するとGoogle Driveの無料試用権が100GB(2年間)ついてきます。さらに期間限定で1テラバイト分の使用権まで提供中(2015年1月31日まで)。Google Driveの使用料は1テラバイトが月額9.99ドルなので、約2万4000円のペイバックとなります。まだ二週間ほど使用しただけですが、想像以上に使い勝手がよく、Google Driveのヘビーユーザーなら文句なしにおすすめ。戸外でもモバイルルータやスマホのテザリングなどを使用すれば、特に問題なく使用できます。もっともSIMフリーのカードが挿入できるようになっていると、さらに良かったのですが・・・。

購入前はライターという職業柄、キータッチとGoogle IMEの変換効率に一抹の不安がありました。しかし、キータッチはMacBook Airより少し固めな程度で、特に問題なし。ATOK Passportのユーザーで、常に最新のATOKを使用しているにもかかわらず、変換効率も特に違和感を感じませんでした。初期のGoogle IMEより格段に変換効率が向上していますね。内臓の16GB SSDにより、電源のオンオフやスリープ状態からの回復も非常に高速です。PC上のフォルダとGoogle Driveがシームレスに統合されており、クラウド上のファイルか否かをまったく気にせず使える点も先進的ですね。UIもGoogleらしからぬシンプルさが貫かれており、好感触です。

ただ、主要アプリの中でもSkypeだけは使用できないため、業務などで使用頻度の高い人は注意が必要です。マイクロソフトは現在、Skype for Webのβ版をテストしており、正式サービスが待たれます。Google Driveに起因すると思われる問題(Googleドキュメントで時折、日本語入力時に変換キーを押しても未変換のまま残ることがあるなど)もそのままです(そのため筆者はテキストエディタに「Writer」を使用しています)プリンターで印字する際には、WindowsかMacでプリンター側の事前設定が必要な点にも注意が必要です。

むしろ、マイクロソフトのクラウドストレージ、One Driveが想像以上に使える点が嬉しい誤算でした。Officeのクラウド版であるOffice365の機能が統合されており、個人使用なら15GBまでの容量が無料で使えます。Officeのファイルをそのままブラウザ上で開くことができ、Excelデータのデザインや計算式もそのままです。Windowsを使う理由として「Officeを使うため」という人も多いかと思うので、これは嬉しいところ。今ではスマホ版のOfficeも提供されており、データの改変が可能です。むしろ「Windowsが不要になるのでは?」と感じてしまったほどでした。

コンピュータの歴史はダウンサイジングの歴史です。メインフレームからミニコン、パソコン、モバイルといった具合で、それを支えたのが半導体技術の進化です。その一方で1990年代半ばから、ネットワークを活用して端末側のスペックは最小限におさえ、サーバ側で処理を行おうとする動きも登場します。Oracleの「Network Computer」や、Sun Microsystemsの「Java Station」などです。これらはシンクライアントという流れを作り出しましたが、一般ユーザーの活用は限定的でした。こうした文脈のうえに、ようやく個人ユースでも実用的な商品が登場してきた・・・Chromebookにはそんな思いを受けます。

なんといってもデータが常にクラウド上にあり、紛失や盗難に強い点が、ビジネスノートにうってつけではないでしょうか。アメリカのノートPC市場で35%のシェアを占めるまでに成長しているというデータもあるほど(NPD調べ)。ASUSではChromebookに続いて、デスクトップ型のChromeBoxも国内発売を始めました。指紋認証によるログインや、SIMカードスロット、有線LANポートなどの機能を備えた、上位機種版の登場も期待したいところです。
(小野憲史)

ライター小野憲史が動画でレビュー