弘兼憲史先生(中央)とエレキインストバンドB.C.V.の皆様

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『課長島耕作』『人間交差点』『黄昏流星群』などの作品で知られる漫画家、弘兼憲史先生。その弘兼先生の企画するライブイベント「弘兼憲史と昭和のエレキ祭り」が大久保にて行われました。

 今回はエレキインストのイベントということでしたが、パンクロッカーである僕はエレキインストと言われてもよく分からない……。ググって出てきた「ヴォーカルの代わりにエレキギターがメロディを弾いているもの」という定義を頼りに会場に向かいました。

 ベンチャーズ、寺内タケシ、加山雄三なんかがエレキインストの有名人なんだそうです。ああ、ベンチャーズ……。おとうちゃんのカーステレオで聴いたことがある。

弘兼憲史を魅了させたB.C.V.のスーパーテクニック

「今日は新しい曲は一曲もやらない! 古い曲のみ!」という弘兼先生のMCを皮切りにイベントはスタート。





 エレキインストバンド「B.C.V.」のアクトを中心に、弘兼先生がMCを務め、マジシャンであるMAGUSさんのマジックショーあり、"偶然"会場に居合わせた市井紗耶香さん(ex.モーニング娘。)による『LOVEマシーン』ありの、ごった煮お祭り的なノリで進んでいきます。



150年前、近代奇術の父・ロベール・ウーダンが生んだ伝説のマジック「オレンジの木」など多彩なマジックで観客を魅了したMAGUSさん(中央)

美貌も歌声も全盛期のままの市井紗耶香さん。弘兼先生と熱唱するひとコマも

「ベンチャーズみたいなもの」と思って来てたので、もっとしっとりした雰囲気かと思ってたんですが……全体的にイケイケなノリ。ていうか、B.C.V.は演奏上手いなー。速弾きもライトハンドもガンガンやるし、チョッパーもバリバリだし。……って、いやいやちょっと待って。ベンチャーズってライトハンドとかやってたっけ?!

「いや、ベンチャーズはやらないですよ(笑) ベンチャーズがやらなかった色んな技とかも使ってるので、B.C.V.はちょっと異端的ではありますね」

 イベント終了後、インタビューに応じてくれたB.C.V.のギタリスト小山さんの言葉。あ、やっぱそうですよね。

「そもそも僕がギターを始めたのは、母親がKinKi Kidsが好きで『LOVE LOVEあいしてる』を一緒に見てたからなんです。吉田拓郎さんがKinKi Kidsのお二人にギターを教えるコーナーがあったんですけど、そこでベンチャーズの『パイプライン』を弾いてまして。うちにもギターあるし、僕もパイプライン弾いてみよ、って感じで始めたんです」

 おお、「LOVE LOVEあいしてる」……。僕も見てました。イングヴェイ・マルムスティーンが出てた回スゴかったですよね……。

「でもですね……! ベンチャーズも今でこそしっとりしたイメージありますけど、当時のライブとか見てると意外とそうでもないんです。かなりテンポも速いし相当ロックで。そういうの見てて、いいな!ってなって今エレキインストやってるんですよ。だから、僕らもライブではそんな感じで……(笑) まあ、ベンチャーズは今はしっとりした感じになってますけど」

 弘兼先生いわく「ベンチャーズは手が動かなくなってきたからね」とのこと。そもそも弘兼先生とB.C.V.の出会いは、先生がたまたまネット検索している時に動画を見つけて、そのテクニックに魅了されて彼らのライブに訪れたことから始まるのだそうです。

「僕たち団塊の世代はエレキギターが大好きで、エレキギターで育った世代なんだけど、最近はエレキギターでインストやってるグループが少なくって。聴きたくてもなかなか聴けないんですよ。それで見つけたのがB.C.V.。彼らみたいに若くてテクニックのあるバンドは珍しいんです! 今回のイベントもエレキの火を消さないように、もっと機会を設けようと思って企画しました」

 しかし、先生が一般的な歌モノよりもエレキインストを好んで聴いているのはなぜ? とお聞きすると、

「やっぱりテクニックですね。指がババーッて動いてギャーンギャーンと弾いてるの見てるだけでも楽しいじゃないですか! もちろん、エレキの世代だからマイナーコードが好きってのもありますけどね」

 確かに「ベンチャーズ」の名からイメージするしっとりとした雰囲気とは裏腹に、B.C.V.のライブはノリノリで全編ギターソロのような勢いがありました。弘兼先生は「団塊世代のための企画」と仰ってましたが、B.C.V.を見る限り、ギターインストは音楽が好きなら若い人でも全然前のめりで楽しめるジャンルではないでしょうか。パンクロッカーである僕も楽しかったよ!

著者プロフィール

作家

架神恭介

広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『仁義なきキリスト教史』(筑摩書房)