能年玲奈主演『海月姫』が物語る?脱・漫画原作”できない映画界の窮状
主演映画『海月姫』の公開を間近に控えた能年玲奈(21)。能年といえば、『あまちゃん』(NHK)で一躍ブレイクしたのは誰もが知るところ。次回作は何かと期待された中、彼女が選んだのは漫画を原作とする映画『ホットロード』(紡木たく原作/集英社)だった。
原作自体は大人気少女漫画だが、それは80年代のこと。いまさら感がありヒットは難しいと思われた。しかし、『あまちゃん』後の能年が主演する話題性も手伝って、興行収入22億オーバーのヒット作となる。
そして今回の『海月姫』も、東村アキコの漫画を原作としている。
漫画原作の連続登板に垣間見えるしたたかな戦略立て続けに漫画原作の映画に主演する能年。ここに事務所の戦略があると、芸能関係者は言う。
「事務所は能年を大切に育てたいと思っています。映画ならば、ドラマと違い視聴率という具体的な数字が出ない。能年ブランドに傷はつかず、映画主演のキャリアを積むことができます。なによりも、原作があれば役作りが比較的しやすく、こけた時の責任も分散される」
高視聴率女優=能年のイメージを崩さない戦略だ。
「能年主演映画を見たい客=能年を見たい客ですから、ドラマで露出を増やしてしまうよりも、しばらくは映画のヒットメーカーとしての役割を大切にするでしょう」
『あまちゃん』の次の連続ドラマが期待されていた能年だったが、しばらくは映画女優として活躍していく方針のようだ。
やめられない、漫画の実写映画化しかし、このところ、漫画の実写映画化がやけに目立つ。
2014年だけを見ても『黒執事』『土竜の唄』『るろうに剣心』『ルパン三世』『寄生獣』『アオハライド』と、実にトータルで40本近くの漫画が実写映画化されている。2015年は、世界的にヒットしている漫画『進撃の巨人』も、実写映画となる予定だ。
この流れは10年ほど前から加速しているが、それはなぜなのか。ある映画関係者によると、漫画原作にはメリットが多いという。
「まず、原作があるからストーリーを作らなくていい。ベースをいじるだけですから、大幅な時間と予算の削減ができます。さらに、すでに世に受け入れられている作品である。これが大切です」
映画製作のための予算獲得には、この“すでに世に受け入れられている作品”がポイントのようだ。
「ベースがあるからマーケティングがしやすい。原作ファン+役者ファンで、説得力を持ってスポンサーを募れます。つまり、制作費を集めやすくなるということです」(同前)
しかし、漫画の実写映画化で成功した作品は一握り。惨憺たる評判の作品が多い。公開前から原作レイプと揶揄されてしまう作品も多く、キャスティング発表だけでイメージが違うとこき下ろされ、原作ファンからは、内容も見ないで悪評をたてられてしまう危険性もある。
だが、それでも実写映画を作り続けるのはなぜなのか。
「ネタが不足している。それもありますが、やはり、予算の問題です。スポンサーが集めやすい。制作費が削減できる。それに尽きます。そして、たまにヒット作が出るからやめられない。オリジナルの作品を作りたい業界人も多くいますが、資金が出ません。だから、たとえ原作ファンがどれだけ反対しても、これからも漫画の実写化は増えていくでしょう」(前出の映画関係者)
漫画の実写化は麻薬のようなもの。どっぷりハマった映画業界は、もう抜け出ることはないだろう。
(取材・文/タナカアツシ)