「テスト」は、百害あって一利なし。産業に携わる担当者が、そう言いたくなるのは理解できる。だが、長い目で見れば、一戦必勝の先に明るい未来が待ち受けていないことも事実。この方法論では、日本代表は強くなっていかない。少なくともW杯で好成績を収めることは望みにくい。

 W杯における好成績か。親善試合の勝利か。どちらを優先すべきかと言えば、W杯での好成績だ。これがものの道理だ。親善試合の勝利は、まさに目先の利益だ。目先の利益を追い求めすぎると道理を忘れるという意味の諺に「鹿を追うものは山を見ず」、「木を見て森を見ず」等があるが、そうした状態にあるのが、いまの日本だと思う。 

 日本という国が、W杯での好成績を、最優先事項として考えているようには見えないのだ。W杯本大会での1勝は、親善試合の何十勝分に相当する。3勝すれば、世の中は一変する。

「強い代表チームが見たい!」というファンの声を最近、耳にするが、強い代表とは何を意味するのか。ブラジルに0―4で惨敗する姿は、その願いに反するものだ。しかし、今回の惨敗劇は、前回、前々回より救いがあった。新顔を試し、戦術的交代も行った。上積みが期待できそうな余力を感じた。
 
 今回のブラジル戦は、4年続く帯ドラマの4回目。300ページの小説で言えば、20ページあたりを読んでいる感じだ。決して悪い手応えではない。少なくとも現場で俯瞰する限り、これまでのどんなストーリーより、面白くなっていきそうな気配、良い意味で先が読めないスリルを感じる。何より、ブラジル相手にメンバーを落として戦う度胸に、僕は可能性を感じてしまうのだ。