國學院久我山vs日本学園
投打の柱・一柳大我（日本学園）
この試合の注目度は高かった。なぜ高いかというと、日本学園の主将で、エースで、主軸を打つ一柳 大我（2年）が大きく注目を浴びていたからだ。一柳は調布シニア出身で、大物感溢れる雰囲気、投打の才能を強豪校から高く評価されていたという。
1年夏から試合出場し、この夏は本塁打を放つなど、ぜひ一度見ておきたい逸材だった。第2試合の前に、主将である一柳が先頭に立って球場に入ったが、確かに179センチ83キロと恵まれた体格といい、自信に満ち溢れた面構えといい、一際際立つ存在だった。
そして試合前のブルペンで一柳が投げている姿を見た多くの指導者が「この選手は違う。投げ方が良い」と絶賛をしていた。國學院久我山が一番警戒していたのは、もちろん一柳の長打力である。
対策として、・一柳の前に、走者を絶対に出さない・シングルヒットはOK、状況によってはソロ本塁打もOKつまり一柳の長打力、得点力を最大限に発揮させないためにも、その前の打者を抑えることに全力を注いだのだ。
試合を優位づけるためにも先制点を上げたい。國學院久我山は1回表、二死から3番安藤が左前安打で出塁すると、4番了海 航がカーブを捉え、右中間を破る三塁打で、1点を先制。4番の一打で先制するというこれ以上ない形だ。
一柳に打席が回ったのは1回二死。外野は一柳の長打に備えて、後ろを守っている。一柳は外角直球に対して、しっかりとおっつけて右前安打。國學院久我山はシングルOKの立場。後続の4番遠藤を三振に打ち取り、無失点に切り抜ける。
攻守でチームを引っ張る了海（國學院久我山）
先制した國學院久我山だが、なかなか一柳の前に追加点を奪う事が出来ない。投手・一柳は完成度の高い好投手だ。コンパクトなテークバックから、打者寄りにリリースを行い、そして滑らかな体重移動から投げ込むストレートは、常時130キロ台を超えていそうな勢いは有り、さらに大きく滑るスライダー、カーブのキレは悪くない。結構粘られて、球数を重なっても、一柳の直球の勢いは衰えず、勢いあるストレートに國學院久我山の打線は打ちあぐねていた。
そういう状況のなか、國學院久我山の先発・福富は、粘り強く投げて、無失点に抑える。球速はある投手ではないのだが、コントロールが良く、スライダー、カーブ、チェンジアップを低めにしっかりと集められるのが強み。
その福富の持ち味を発揮していたのが、捕手の了海だった。「夏を経験している選手なので、守備については信頼しています」國學院久我山の尾崎監督が振り返るように、了海は守備で盛り立てる。相手打線を狙い球を外すリードができており、また機転を利かして、内野手に指示をするなど、視野の広さ、また1.90秒前後を計測する強肩と、ディフェンスはハイレベル。また広角に打ち分ける打撃も良かった。
試合は1対0のまま進み、7回表、二死から敵失で出塁し、二死一塁から1番長田が右前安打。またライトの打球処理のミスもあり、一塁走者が生還。さらに8回表にも二死二塁から敵失で1点を追加し、3対0と点差を広げる。
打っても4駄数2安打と活躍した一柳（日本学園）
日本学園にとっては0対1のまま試合を進めて、終盤で、一柳の前に、走者を溜めて、勝負をかけていきたいところだったが、4打席ともに一柳の前に走者が出ることがなかった。一柳は第1打席の右前安打に続き、第4打席でも、左前安打。4打数2安打と孤軍奮闘。
得点につながらなかったが、一柳の打撃フォームは大きな癖がなく、バットがスムーズに出る。かといって小さくまとまらず、ゆったりとしたタイミングで、大きく鋭いスイングが出来ている。前評判通りの逸材であった。
本人は投打で、「自分のプレーは出来ました」と振り返るが、野球は1人の活躍だけでは勝てない。國學院久我山が9回裏も0に抑え、3対0で完封勝利した。
尾崎監督は「チームも一柳君を一番警戒していましたし、彼の前に走者を出さないことが鉄則と選手たちが分かっていたので、作戦通り出来たと思います」プラン通りに試合運びが出来たことを評価していた。
國學院久我山は、試合流れ、相手打者の力量を考えながらの試合運びで、秋のチームとは思えない盤石さを感じさせた。次は日大二と対戦するが、この試合を乗り越えれば、捕手・了海を中心にディフェンス力は高いだけに本大会でも活躍が期待できるだろう。
（文＝河嶋 宗一）
