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●Photoshop CCで3Dモデリングから出力までDMM.comは26日、同社が運営するWebサイト「DMM.make」が提供する3Dプリントサービスと、アドビ システムズの写真編集ソフト「Adobe Photoshop CC」が連携したことを発表。同日、東京都・恵比寿ガーデンプレイスタワーのDMM.comオフィスにて発表会が行われ、同社の連携のいきさつや狙いなどの説明やPhotoshopによるデモなどが実施された。

それに加え、3Dプリントの歴史や現状などの解説、3DプリントやDMM.makeと関わりの深いパネラーによるディスカッションなどが行われた。本レポートでは、同発表会の内容をまとめてお伝えする。

○Photoshop CCの3Dプリント対応で「勝利を確信」

まずはDMM.comの代表取締役社長 松栄立也氏が発表会の冒頭挨拶に登壇。3Dプリンタによる出力などを提供するWebサイト「DMM.make」を運営している同社だが、松栄氏は「この数年間、3Dプリンタは何度かブームになりかけたがうまく乗り切れなかった」とコメント。新たに3Dプリントサービスを展開していく中で、アドビ システムズが行った「Photoshop CCの3Dプリント対応」の発表を聞いた時に「勝利を確信」し、すぐさま提携を申し出たことを明かした。

続いて登壇したDMM.com 3Dプリント事業部 営業部長の岡本康広氏は、オンラインによる3Dプリントサービスのトップリーダーとしての「DMM.make」と、デジタル画像編集ソフトのデファクトスタンダード「Photoshop CC」が連携したことで、Photoshopからより簡単に同サービスでの3Dプリントが可能になった」と明言。それに続けて、今回の連携で注目すべき3つのポイントを挙げた。

そのひとつ目は、Photoshop CCからDMM.makeへシームレスにデータを転送できるプロファイルを同社が開発し、アドビ システムズのアドビ米国本社で検証され、公式に認定されたこと。Photoshop CCに3Dプリント用プロファイルを実装することは国内初とのことだ。このプロファイルをユーザーがDMM.makeのWebサイトからダウンロードしインストールすることで、3DプリントデータをDMM.makeへのアップロードを簡単に行えるようになる。

ふたつめは、今回の連携を記念して、アドビ システムズとの共催による「Adobe × DMM.make共催 3Dデザイン&プリントコンテスト」を開催することを挙げた。期間中(8月末まで)にPhotoshop CCで制作した3DデータをDMM.makeに投稿し、コンテストページからエントリーした人の中から抽選で40名に特典が提供される。DMM.makeからは、「DMMマネーカード5,000円分」または投稿作品の3Dプリントの無償提供。アドビ システムズからは「Creative Cloud 個人版 年間プラン」が4名にプレゼントされるということだ。同コンテストについての詳細は、Webページで確認してほしい。

3つめが、Photoshop CCを使用した3Dデータの作り方やDMM.makeでの3Dプリントの手順などを解説した動画コンテンツを公開したこと。Photoshop CCでの3Dモデリングや3Dモデルへのペイント手順、そしてPhotoshop CC上からDMM.makeでの3Dプリントを注文する手順などが順序に沿って公開されている。

●過去にもあった"3Dプリンタブーム"、現在の熱との相違点は?○Photoshopの3D機能が国内向けに本格対応

次に、アドビ システムズ デジタルイメージング製品担当の栃谷宗央氏が登壇。Photoshop CCは2014年1月に3Dプリントへ対応し、米国の「Shapeways」が提供するオンライン3Dプリントサービスとの連携をスタートさせていたが、日本国内のサービスとの連携を求める声が非常に多かったことを明かした。また、アドビ システムズがDMM.makeをパートナーとして選んだ理由としては、品質、サービス内容、価格の面でベストだったということだ。

続いて、先日リリースされたばかりの「Photoshop CC 2014」を使ったデモンストレーションが行われた(今回の連携機能は従来の「Photoshop CC」でも利用可能)。デモンストレーションでは、最初に3Dプリンター向けの「STL」や「OBJ」など6種類の3Dデータを読み込めば、Photoshop内で3Dデータを扱えることを強調した。

さらに3Dオブジェクトにテクスチャを設定したり色を塗ったりできることを説明したのち、「プリント先」の選択メニューに今回の主役である「DMM」が選択肢として追加されていることを紹介。加えて、利用可能な材質やカラーが多彩に用意されていること、仕上がり具合を事前にプレビューできること、DMM.makeへのアップロードが簡単なことなど、ユーザーエクスペリエンスにも優れている点に言及。最後に、「Photoshopの中でDMMさんの3Dプリントサービスを選択でき、そのまま素材やカラーを指定でき、注文までの連携が取れているのはとても素晴らしく、当社としても個人的にも今回の提携を非常に嬉しく思っている」とコメントし、場を締めくくった。

○3Dプリンタの歴史や市場の現状を開設

続いて、ケイズデザインラボの代表取締役社長 原雄司氏が、3Dプリンターの歴史や市場などついての講演を行った。同社が関わってきた数多くの3Dプリントサービスの事例を紹介したほか、3Dプリンタの歴史、世界と日本の市場比較、過去の3Dプリンタブームと現在のブームのきっかけ、金型と比較しての優位点、将来の市場予測など、古くから3Dプリンタに関わってきた同氏ならではの、興味深い話がテンポ良く展開された。

「過去のブームと現在のブームの違い」について同氏は、安価なものが出てきたこと、インターネットが普及しデータの流通手段が確立したことで、個人でも作れるようになったことなどを挙げた。最後に「多くのクリエイターが利用しているPhotoshop CC(2次元)と、ものづくりのプラットフォームが融合することによって、これまで2Dしか扱わなかった人が3Dに触れることで3Dデータを作成できるクリエイターが増え、それにともなって3Dプリンタの普及することを期待したい」と述べた。

●チームラボ、pixivの両トップが見据える「3Dプリントの未来」は?○気鋭のクリエイティブ企業トップが3Dプリントについて思うこと

続いて、チームラボ 代表取締役社長の猪子寿之氏、ピクシブ 代表取締役社長 片桐孝憲氏、そしてアドビ システムズの栃谷氏(司会進行)の3名によるパネルディスカッションが実施された。

「デザイナーやクリエイターと3Dの関わりについて」というテーマに対して片桐氏は「3Dという分野は、これまで発表の場が少なかった。若いクリエイターはどんどん3Dへ進むべきだし、僕らもサポートしていきたい」と述べ、猪子氏は「3Dで作成したデータは再利用しやすく、長期的には作業効率も上がる」ことを強調し、さらに「プロジェクションマッピングなど立体的な空間に投影するものは、やはり3Dで作る必要があるのではないか」と語った。

次に「3D市場について、3Dプリントの現状や今後の期待値」について猪子氏は、「3Dプリントが普及することで、これまで2Dでイラストを描いていたクリエイターが3Dの道に入りやすくなっていくのでは」と予想。片桐氏も「たとえ簡単なものであっても自分だけのフィギュアを簡単に作成でき、それを立体的な作品として残せるメリットは大きい。フィギュアのようなものも同人の間でマーケットになっていくかもしれない」とし「マーケットで成り立つかどうかは関係なく、趣味の延長で作りたいモノを作れるのはすごいこと」だと述べた。

最後に「DMM.comに期待すること、アドビに期待すること」に関して、猪子氏は「現状でもかなり安くなったが、コストを下げてさらに価格を下げること」と述べ、片桐氏は「納期まで何日もかかるとテンションが下がってしまう。納期を早めてほしい」と語った。

○秋葉原に"ものづくり"の拠点をオープン

発表会の締めくくりには、DMM.com 3Dプリント事業部 事業部長 白井秀範氏がDMM.makeの広がりと今後の展開についての概要を説明した。3Dプリントサービスで作ったモノを売ったり買ったりできる「クリエイターズマーケット」では現在、スマートフォンケースなど約1,800点出品されているということだ。

また、クリエイター向けのメディアとして「ものづくり系のニュース」や「クリエイターからの投稿記事」のコンテンツが用意されていることも紹介。今後の展開として、東京都・秋葉原に新しいものづくりの拠点を作ることを明かした。秋葉原駅からほど近い富士ソフトビルの3フロアを使用し、工作機械などを取りそろえた「ガレージ」、3Dプリンタやレーザーカッターなどを取りそろえた「3Dプリントセンター」、さらにものづくりを行う企業が入居できる「テックシェアオフィス」を構築。ここでは、3Dプリンタで実際に造形しているところを見学・体験できるということだ。

さらに、3Dプリンタで作成した造形物のコンテストを積極的に主催・協賛し、その製品化をサポートしていくということだ。最後に白井氏は、「今後もアドビ システムズとDMM.makeは今回の連携に限らず、さまざまなサービスを通じて、今後もクリエイターの方々がもっと活躍できるような場をどんどん提供していきたい」と締めくくった。

(早川厚志)