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PS4 対応の VR ヘッドセット「Project Morpheus」は、マイクロソフトや Oculus を一気に抜き去るほどの可能性を秘めている。

ソニーの新しいバーチャルリアリティー・ヘッドセット「Project Morpheus」は、最近一世を風靡した「Oculus Rift」に良く似ている。

Kickstarter で話題をさらい一躍有名になった Oculus Rift は、まだシステムが一般向けにリリースされていない状態(※)にもかかわらず、既にバーチャルリアリティー(VR)ゲームの代名詞になっている。間違いなくバーチャルリアリティーは没入型のゲーム体験に革命をもたらし、これまで明確な成功例が存在しなかった 3D ゲームの未来を変えてくれそうだ。

※ Oculus VR 社は 2 世代目となる開発キットの公開を発表したため、近いうちに状況は変わるかもしれない

PlayStation 4 は次世代のゲーム・コンソールのリーダー格になりつつある。そしてソニーが新しく発表した「Project Morpheus」も、消費者向け VR の世界で同じ役割を果たすことになるかもしれない。マイクロソフトが 新しい Xbox One に Kinect(今やリビングルームの Siri 的存在になってしまっている)をせっせと同封している一方で、ソニーは着々と次のヒット商品の準備を進めているようだ。

これまでの世代から学ぶこと

実は、ソニーは VR ヘッドセットの研究を 2011 年頃から続けている。当時のコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)で、同社は OLED ディスプレイを二つ搭載した実際に動作するプロトタイプを披露して話題を呼んでいた。これを商品化した「パーソナル 3D ビューワー」、HMZ-T1 が海外で発売されている(今でもAmazonで買えるようだ。値段はなんと758.88ドル!)。

4年ほど前、マイクロソフトの Kinect やソニーの PlayStation Move などのインタラクティブな周辺機器は、モーション・トラッキングやジェスチャー・コントロールといった没入型の一風変わった技術をゲーマーに使わせることで、VR への道を開き始めた。当時マイクロソフトの 3D センサーは大ヒットしたが、Playstation Move はさっぱりであった。現在、両者の差は明確に示されている。Kinect がすべての Xbox One に同封される一方で、ソニーは PlayStation Move が失敗であったことを認めている。

Kinect は任天堂の勢いを横取りし、ソニーの不格好に光るコントローラーを小馬鹿にしながら、モーション・ベースのゲームの先頭に立った。しかし最新世代のゲーム・コンソールでは状況が一変している。現在 Xbox One はカジュアルユーザーをターゲットとしたリビングルーム用エンターテイメントを目指しており(値段は PS4 よりも100ドルほどプレミアムだが)、一方の PS4 はポリシーをオープンにしてインディーズ・ゲームを誘致したり、不要な周辺装置を箱から取り除いたりと様々な方法で、ソニーのルーツでもあるコア・ゲーマーを呼び集めようとしている。

Project Morpheus 対 Oculus Rift

話は変わるが、Project Morpheus のような PS4 専用の VR 機器が、よりオープンなデベロッパー・ベースを持つOculus Rift に対抗できるものだろうか?答えは「ほぼ確実にイエス」だ。全てはゲーム・タイトル次第である。

2つの VR ヘッドセットは現在、正反対の課題に直面している。Oculus Rift は素晴らしいハードウェアを構築したが、まだ一般向けには販売されておらず、ハードを活かせるソフトウェアを必要としている。Oculus は、この全く新しい未知のプラットフォームに投資してくれるようトップレベルのゲーム開発会社を説得するのに苦戦していることを認めている。

一方巨大企業であるソニー側は、クオリティーの高いゲームを呼び集めるのには苦労しない。何しろゲーム開発会社を 16 社も所有しており、「アンチャーテッド」や「リトルビッグプラネット」といった PlayStation 専用のヒット・タイトルも生み出しているのだ。ソニーは Project Morpheus のプロトタイプについて、「新しい VR というプラットフォームに注目している PS4 開発者にとって初の開発キットとなる」と述べている。プロトタイプが成功すれば、VR に興味を持つ開発者は自然とソニーのプラットフォームに集まっていくことになるだろう。

Oculus は勢いのある素晴らしい会社だ。インディーズからの支持も多く、今年の SXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)での圧倒的な露出もそれを物語っている。しかしもしソニーが Oculus と同じレベルのハードウェアを構築し、コンセプト通りに動作するVRソフトウェアを仕上げ、開発者にインディーズ・フレンドリーなストアフロントを提供することができるとすれば、Project Morpheus はマイクロソフトと Oculus、そして自社の PS4 にすら多大なインパクトをもたらす存在になるかもしれない。

VR の波に乗る

今のところ、ゲーマー達はバーチャルリアリティーに興味津々だ。一度でも Oculus Rift を試してみれば、没入型バーチャルリアリティーの驚異的な可能性を感じられることだろう。Oculus によって開拓された VR 体験は今、大きな口コミとなって広がっている。大手メーカーによって売れてもいない商品が無理やり宣伝される 3D テレビのマーケットとはえらい違いである。

もし Project Morpheus が適切なタイミングで正しく世に送り出されれば、ゲーム界の次の10年は大きく変貌することになるだろう。Kinect 型のモーション・ベースのゲームでは Microsoft の安価で独創的な 3D モーションカメラに敗れたソニーだが、同社には再びチャンスが訪れている。しかも今度のチャンスは以前よりもはるかに大きい。Kinect(あと、少し程度は下がるがWii)のモーションゲームが消費者にとって単純に「すごい!」と思われる程度の技術だとすると、VRの場合は「信じられない!これこそ未来だ!」といった格段に違う反応が返ってくるだろう。

VR ゲームへの堅い扉をこじ開けたのは Oculus だが、その扉から颯爽と出てくるのは Project Morpheus なのかもしれない。

画像提供:Sony and Oculus

Taylor Hatmaker
[原文]