グーグルは一刻も早く、HTML5にもっと力を入れるべきだ
このままではグーグルはモバイルウェブとその広告収入を失ってしまう。HTML5 への大きな賭けが必要だ。
グーグルはアップルとのモバイル・プラットフォームを巡る争いを征したかのように見えるが、争いの焦点が少しずれているようだ。グーグルは Android によってモバイルを支配してはいるが、コンテンツのアプリ化が進むに従って、500 億ドルを越える同社の広告ビジネスは重大な危機に直面しつつある。ネイティブアプリ用のプラットフォームに集中することで、結果的に HTML5 を無視する形となり、グーグルは自社の検索技術の支配下にないマーケットを支えることになってしまっている可能性があるのだ。
ネイティブ・アプリの脇役に甘んじるウェブ
私はモバイルでいつもグーグルのサービスを利用している。調べもの、翻訳、辞書など、様々な用途で使う。だが、ひょっとしたら私は例外的な存在なのかもしれない。一般的にはモバイル・インターネットよりもモバイル・アプリのほうが良く使われているのだ。Nielsen の最新の調査データは、モバイル・デバイスを使用する場合、人々は大部分の時間をウェブではなくアプリに費やしていることを示している。
グーグルの Android がモバイル OS マーケットを支配しているために、同社の本業が 500 億ドルを超えるウェブ広告事業であることはつい忘れがちだ。この広告事業はウェブのコンテンツをインデックスし、その内容に沿った広告を表示させることで成り立っている。しかしウォール・ストリート・ジャーナルのロルフ・ウィンクラーが指摘するように、ウェブよりもアプリに集中しているモバイルの世界では、グーグルは大きな問題を抱えている。
Google spiders can’t freely crawl apps, where mob dev users spend 80% of their time. Big challenge to its search biz. http://t.co/rWKDV5wQMN
- Rolfe Winkler (@RolfeWinkler) March 10, 2014
グーグルのスパイダー(検索ロボット)はアプリを自在にクローリングできていない。モバイル・ユーザは 80% の時間をアプリに費やしているのにもかかわらず、だ。これは同社の検索ビジネスにとって大きな問題である
検索の最大手はどう出るつもりなのだろうか?
Deep Linkに救いを求める
この問題を解決するため、グーグルは複数の対策を講じている。その一つがアプリ内「Deep Link」だ。これはデベロッパーが、意図的にアプリ内のコンテンツをグーグルの検索にひっかかるようにするというものだ。ウィンクラーは次のように説明する。
グーグルは去年の秋、スマートフォンやタブレットのユーザーがデバイス上で何をしているのかを分析し、その内容に直接誘導するための取り組みを開始した。この試みは、グーグルがウェブで作り上げた仕組みと似ている。モバイルアプリ内にあるコンテンツをインデックスし、スマートフォンのグーグル検索結果にリンクを表示するのだ。
この「Deep Link」を利用すればグーグルは、現在は同社の目から隠されてしまっているアプリ内コンテンツをインデックスできるようになるかもしれない。しかし、ウェブのコンテンツのように勝手にクローリングするわけにはいかないため、各アプリの所有者と個々に提携する必要がある。グーグルは信じられないほど困難なタスクを自らに課したわけだ。
何しろアップルの AppStore には100万を超えるアプリがあるし、グーグルの Play store にも同じぐらいのアプリが登録されているのだ。たとえデベロッパー側がその気になったとしても、グーグルが個別に相手をするには数が多すぎるだろう。
HTML5 とモバイルウェブ
こんなはずではなかった。そもそも HTML5 の基本精神として、HTML5 アプリ(たとえそれが HTML5 とネイティブコードが組み合わされたハイブリッド・アプリであったとしても)は自由に検索可能であるべきなのだ。これはグーグルのためでもあるが、同時にデベロッパーのためでもある。デベロッパーにとって重要なのは皆に自分のアプリを発見してもらうことであり、この原理はオープン・ソースの成功にも通じている。アプリを閉鎖的にすれば手っ取り早くマネタイズできそうに思えるが、誰にもアプリの存在を知られなければそもそもマネタイズなど望めるはずもないのだ。
グーグルの HTML5 に対する努力はまだまだ消極的である。
グーグルが全く HTML5 を促進していないというわけではない。グーグルは HTML5 Rocks という開発者向けサイトを公開したり、優れたデザインツールを提供するなどし、HTML5 の普及活動を行っている。しかしアップルとマイクロソフトはグーグルよりもさらに強く HTML5 を後押ししているのだ。
グーグルの HTML5 に関する表向きの態度はさておき、モバイルウェブを検索可能にするための同社の努力がはっきりとした形や道筋として示せていないことは事実だ。Mozilla の元 CEO(現在はベンチャー・ファーム Greylock のパートナー)ジョン・リリーは次のように指摘している。
@mjasay it’s almost like they’re divisionalized & fighting a multi-front war. puts incredible pressures on even very good companies.
- John Lilly (@johnolilly) March 10, 2014
Matt Asay @mjasay:もしグーグルが今後もコンテンツのインデックスを続けたいと考えるなら、アプリ内 Deep Link よりも HTML5 を推進すべきだ
John Lilly @johnolilly:彼らは複数の戦線に戦力を分散させられているように見える。グーグルほどの素晴らしい企業でも、計り知れないほどのプレッシャーがかかっているようだ
グーグル流ウェブ構築
確かに HTML5 には色々と問題がある。ネイティブ・コードと比べるとパフォーマンスも低い。しかしこの批判は 100% HTML5 のアプリに限ったもので、よりポピュラーなハイブリッドのアプローチには当てはまらない。VisionMobile の最新レポートも示しているように、まだまだ Android と iOS の予備軍としてではあるが、デベロッパーが HTML5 をターゲットとする機会は高まっている。グーグルはこれをもっと促進して大切に育てるべきなのだ。
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グーグルは、ウェブをインデックスする手法には長けている。HTML5 を改善して促進することは、グーグルのモバイルウェブ構築を助け、間違いなく収益化につながるはずだ。
このような前例は過去にも存在した。2001 年に IBM は、Linux をエンタープライズ向けオペレーティング・システムにするために 10 億ドルを投じると発表した。13 年経った今、Linux は幅広いマーケットを支配するに至っている。そろそろ、グーグルが HTML5 に 10 億ドルほど投資してもいいタイミングだ。
Matt Asay
[原文]