パリコレでの一幕。会場には多くのオシャレパリジェンヌが集まる

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ファッション誌などでよく「パリジェンヌのような……」という言葉を見かける。これに限らず「オシャレ」というイメージを伴って、しばしばフランスは登場するが、実際のフランス人は本当にオシャレなのだろうか。

EU各国を比較しても、実はフランス人は特別、服にお金をかける国民ではない。INSEE(仏国立統計経済研究所)が出した2009年の統計によれば、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、英国の家計消費を比べた時に、ドイツ(+12%)、イタリア(+51%)、英国(+44%)はEU平均より服飾にお金をかけていたが(スペインは平均と同等)、フランスは平均より5%少なかった。一方でフランス家計の総消費額はEU平均より13%高い。つまり全体の消費額は多いものの、洋服代にはお金を使わないのだ。

確かに街中を見渡しても、ジーパンに無難なトップスを合わせ、冬はとりあえず黒を着ている人が多く、統計の結果と比べても納得できる。ただしシンプルな服装を好む代わり、フランス人はレジャー・文化費(+20%)や健康のため費やす額(+19%)はEU平均より高い。芸術やスポーツに触れる機会を生活に取り入れる人は多い。

もちろん高い服を買うことだけがオシャレの度合いではない。選び方や着こなしのセンスこそ大事なポイントだろう。そこで日本と比べた時に、フランス人の服装への気の使い方はどうだろうか。

パリの服飾関係者に聞いてみると、フランス人より日本人の方が平均して服装に気を使っている人が多いイメージだという。ただしフランスと日本では、オシャレの考え方は少々異なる。

日本はオシャレといえば流行を追う傾向がとても強いが、フランスでは多くない。特にパリは色々な国から多くの移民が集まる街だ。日本ほど均質ではなく、それぞれの文化や価値観があり一つの枠ではなかなか捉えられない。ゆえに一つの流れになりにくい。それぞれ違っていることが普通なので、周囲とそろえるという意識も無い。よってフランス人は日本人に比べて思い思いの格好をしている。このことは年齢と着る服にも当てはまり、年齢による服装やブランドの区別というのがあまりないため、年配の人も若者と同じ店で買い物をする。

一般的にフランスでは日本ほどお金を使わずとも、それなりに芸術に触れられるし、その機会も多い。こういった雰囲気が、フランス人の周囲に流されない性格と服装に相まって、日本人から見た時にオシャレなイメージとして映るのかもしれない。
(加藤亨延)