「ペン」を盆栽に見立てて味わう「ペン栽」
一方で、こんな盆栽もあるらしい。いや、「盆栽」と言ってよいのか躊躇いますが……。何やら、自宅のペン立てを盆栽のように愛で、鑑賞して、楽しむニッチで雅な「ペン栽」なる文化が話題になっているようなんです。
とにかく、画像をご覧いただきましょうかね。決して「ただのペン立てじゃん」と、興をそいではいけない。これを、盆栽に見立てて楽しんでください。独特の見方を覚えたら、趣があることがわかるから。
まず、ナビゲーター役の御三方が登場！ 「色物文具」（使えない文具のこと）に造詣の深いライター・きだてたく氏。文房具関連の記事やラジオ企画を手がける、放送作家でライターの古川耕氏。そして、世界中の試し書きを収集するコレクター・寺井広樹氏。こちとら魅力がちっともわかってない状況なので、丁寧な解説お願いしますよ！
さて、今回の流れについて。まずTwitte上で、自身のペン栽画像を一般から広く募集。最終的に寄せられた332点の内、厳選された作品をスライドショー形式で鑑賞し、楽しんでいくという趣旨のようです。
「一晩で、およそ100作品が寄せられました！」（古川氏）
しかし、鑑賞前に最低限の知識は踏まえておきたい。何だかんだで盆栽というテイなので、楽しみ方も正統な盆栽に準ずるみたいです。専門用語に「双幹（そうかん）」という言葉があるが、シュッシュッとペンが勢い良く伸びるサマを楽しむのも一興。「懸崖（けんがい）」という言葉があるが、ホッチキスだとかテープだとかが縁からへたり下に垂れ下がる様子も味わい深い。
「言いたいことは、単に『人のペン立てとか筆箱を見るのは楽しいよね』ってことなんです」（きだて氏）
では、いよいよスライドショーのスタート！ さぁ、次々と矢継ぎ早にペン裁画像が映し出されていきます。そして好き勝手なことを言い、独断で評価を下していくナビゲーター陣。ペン裁を頼りに、性別や職業、パーソナリティを予測していく。ゴチャゴチャしたペン裁には「これは編集者です」とか、あまりに大量のペンが刺さっていると“廃人”（いい意味で）呼ばわりしたり、JRロゴ入りの定規を発見しただけで“鉄子”とキメウチしたり……。
ではそんな言い放題の中から、グッと来た指摘をいくつかご紹介したいと思います。
・ワンカップ焼酎は酔っ払って口をガンガン当ててしまうから、縁が丸くなっている。なのでワンカップをペン立て代わりにすると、優しい雰囲気になる
・見られることを意識して撮ったペン裁は、「盆栽」よりも「生け花」に近い。生活感がにじみ出てしまうのが、「ペン栽」の魅力
・ペン裁は、撮るシチュエーションも込み。背景の障子が破れてたりしたら、高得点
どうでしょう。何となく、わかっていただけますかね？ 要するに、筆箱は外に持って行くから他人から見られる可能性がある。しかし自宅のペン立ては、基本、人には見せない。だからこそ、その人のエゴだったり生活の態度だったりが表れてしまうのだ。
「恥ずかしいものを見せてもらったような、“おトク感”があります」（きだて氏）
確かにカッターの刃を上にしてたり、耳かきとか羽ぼうきを立ててたり、ペン裁画像には日常からはみ出たワビやサビが立ち昇ってるな！
そんなこんなで、最後は決選投票。来場者の挙手によって、優秀作が決定します。
結果、『春・夏・秋・黒』、『カップから溢れ出るらせん』、『森』の3作品が、「第1回・最優秀ペン裁」に選ばれました！ 特に『森』には「廃工場みたい。ペン栽の醍醐味が出ている！」、『カップから溢れ出るらせん』には「渦を見てほしい、ペンからハサミへ、ハサミから耳かきへ、耳かきからペンへ。この流れに美しさがカッコいい！」といった絶賛コメントが寄せられました。
そういや自分のペン立てって、どんな感じだろう？ 自宅に戻って見てみると……。我ながら、生活感がスゴい。ということは、「ペン裁」として悪くないということだ。
次回があるなら、応募してみようかしら。
（寺西ジャジューカ）
