暦本の老舗による神社ガイド『神社の基礎知識』
日本各地には8万社以上の神社があるといわれ、昔から日本人の暮らしには身近な存在。だが、毎年、正月に初詣に行く人でも、その神社にどんな神様が祀られているかまでは、知らない人がほとんどだろう。いや、それどころか基本的な参拝マナーすら、自信がない人も少なくないのでは!?
美しい表紙に見入ってしまうが、中身もオールカラーで見やすく、やさしい語り口でスルスル読める。
「式年遷宮をきっかけに神社や神様のことに興味を持った方にそのなりたちや場所の関係性を、『古事記』をベースにして つながりをもって理解していただけるように構成しました」
と言うのは同書を手がけた編集者の朝比奈千鶴さん。
第一章では、神社の起源や参拝の基本といった“神社のいろは”をやさしく解説。続く第二章では神社と関係の深い神様たちの話を紹介。とりあえずこれだけは！ という有名どころの神様と神話を集めたダイジェスト版で、執筆したのは自身も神職の資格を持つ（！）ライターの平松温子さんだ。
さらに、第三章では「自然と神様を感じるための聖域ガイド」と題し、全国各地の神社を紹介。ユニークなのは神社別ではなく、淡路島・高千穂・出雲といったエリア別にまとめてあること。そのため、どこか旅行ガイドブックっぽくもある。
「1泊2日、もしくは2泊3日で巡れるくらいの範囲で関係性のある神社を紹介しています。 聖地といわれるところがなぜそうなのか、というゆえんを他の場所との歴史的な関係性をひもづけることで、日本の神秘的な自然と神様の話にもっと興味をもっていただけたら嬉しいです」
写真も豊富で、見ているだけで旅心がそそられるはず！
このほか、第四章の神道用語辞典も便利だし、随所にあるコラムも楽しい。朝比奈さんいわく、
「神社目的の旅行や旅行の際、神社に立ち寄られる方に読んでいただきたいです。また、神社のマナーを知りたいという方、古事記を読んだことがないけど興味があるという方、日本の神秘的な自然に興味のある方にも」
執筆陣は前述の平松さんをはじめ、神社ひとすじで全国をめぐってきた人たちばかり。第一章の神社の基本は、國學院大学の茂木貞純教授が解説している。
ちなみに同書は神宮館が出版する「おとなの取説シリーズ」の記念すべき第一弾でもある。今後も、おとなが知っておくべき、おとなだから知りたいものをとりあげてシリーズ化していく予定とのこと。
単にブームだからというのではなく、日本人なら知っておきたい神社のこと。読めば自然に知識が身に付く教科書のようでもあり、旅先に携帯したいガイドブックのようでもある。神社をさまざまな角度から楽しめる一冊だ。
（古屋江美子）
