【就職】現役人事が語る! 詐欺まがいの就活塾、ヘッドハンティングの手口と騙されないためのポイント

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人事を続けていると、いろいろな出来事に遭います。楽しいことも、そして辛いことも。

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内定時に握手までしてこれからがんばりますと言っていた学生が、内定式間際に他社に行くと辞退してきたりするのは序の口。入社した社員から、人事はあれだけいいことを言っていたのに内情が違うと苦情が親御さんからあったり。

しかし、世の中にはもっと悪辣な人間がいます。
今回はいままであった就転職にまつわる詐欺の手口を公開してしまいます。

■1.(新卒学生向け)詐欺まがい就活塾

学習塾のように、就職活動にも塾(就活塾)が存在します。これがくせ者で、入塾金に高いお金を払った割には、ろくな指導も受けられない詐欺まがいの就活塾が数多く存在します。この就活塾、当然開業・運営するのに免許も資格もいりません。町中の学習塾と同じで、規制する法律がないのです。

就活塾の主な内容に模擬面接・エントリシート(ES)添削・就職相談がありますが、詐欺就活塾は、「ここがだめ、こうするといい。あるいはブレーンストーミングで、自分の答えを導き出す」などの指導が当然はいりますが、詐欺就活塾は人事未経験者(面接もしたことがない)人物が講師を務めていたり、ESの添削に、裏でなんと「大学3年生」つまり同級生や下級生をつかっているところもあります。

表向きはいかにも人事経験豊富「そうな」人物が塾の良さを語りますが、かならず内情を把握するため、かならず一回は無料体験を受けてください。無料体験がないところは怪しんだ方がいいでしょう。

■「詐欺就活塾を見分けるポイント」

○入塾金が高く、模擬面接や就職相談の料金が安い。
(本当にサービスに自信があるなら、入塾金は最低限、実際のサービス利用に対してアドバイス料金がかかるのが普通の姿です。)

○大企業や有名会社の就職した塾生の人数をやたらアピールする。
(大企業や有名会社に本当にその塾のカリキュラムのおかげでは入れたのか、調べるすべがありません)

○ES添削をその場で実施せず、回収され、あとで赤ペンが入って帰ってくる。
(これでは、だれが添削しているかわかりませんし、なぜそう添削したのかわかりません)

○講師陣の紹介で、ほとんどの講師が、すべて大企業・有名企業出身となっている。
(これでは、大企業・有名企業以外を狙う場合に対応できません。どこ出身ではなく、どんな経験を積んできた講師なのかが重要(特に人事経験)です。また人それぞれの価値観はあると思いますが、大企業や有名企業をスピンアウトして、就活塾の講師になっている人は、何か理由があって辞めているのです。もし会うことが出来たら、なぜ辞めたのかを聞いてみると良いでしょう)

○入塾説明会の際、個別の説明がない。
(大抵の就活塾の場合、多人数で塾の概要を説明した後に、それぞれの入塾希望者の就職先希望に基づいて、個別に塾の体制を説明するのが普通です。希望業界が○○業界なら、それに一番近い講師がカリキュラムを説明すべきです。)

○インターネットでその塾の名称を検索すると、評判が悪い。
(これは論外でしょう。評判が悪いところにわざわざお金を使うことはありません)


代表的な6つのポイントをあげましたが、それ以外にも「創立してどれくらいたつのか」「就職活動にどう考えても役に立たなそうなカリキュラムがないか(例 1週間 寺での修行など)」、などなど、いろいろチェックできるポイントはあります。

現状、ざっと見回してもまともな活動をしている塾は5件に1件くらいでしょうか。焦らず、説明をじっくり聞いて、本当に役に立つのかを自分の目で確かめる必要があります。

■2.(人事担当者向け)偽人材紹介会社

企業が人を採用するときに、人材紹介会社を使うことが多くあります。人材紹介会社を企業が使うメリットは、「採用に至らなければ、一切企業側に金銭負担がないことです。」正式には有料職業紹介事業というのですが、紹介された人を採用したときに、年収の20%〜30%を企業から紹介手数料(成功報酬)として、紹介会社に支払う仕組みになっています。(入社した人からは金銭は徴収しません。)

そして早期退職した場合は、大抵3ヶ月で紹介手数料50%返金としているところが多いのです。この制度を悪用した人材ブローカーが、特に大都市圏周辺の企業や医療機関に下のような手口で、詐欺を仕掛けてきます。

ある医療機関での実例をあげましょう。

A病院では看護師が慢性的に不足しており、採用担当の事務長は現場から増員を矢のように催促されていました。そこに現れたのが人材紹介会社の営業を名乗るBという人物です。

Bは事務長の相談を聞き、「当社にも多く看護師が登録していますので、10人は紹介できるかと」と言いました。事務長は早速お願いしたいと人材紹介契約を締結し、Bは言ったとおり、10人以上の看護師を紹介してきました。とにかく看護師を採用したかったA病院は、10人すべて採用し、紹介手数料として年収の2割にあたる1000万円をBの会社に支払いました。

やれやれと思っていたところ、2ヶ月後、採用し普通に勤務していた10人全員が一斉に退職することを表明。どういうことだと、Bに連絡しましたが、電話も通じない、名刺に書かれた所在地にいってみると、すでにもぬけの殻でした。

辞めていく看護師を問い詰めても、退職は労働者の自由ですからといわれるばかり。そうです。Bの所属していた会社はなんの許可もうけていない偽人材紹介会社で、紹介された看護師ももちろんグル。辞めた後Bの元に再集結し、分け前を受け取った後で、また別の医療機関をターゲットにする。実は、筆者も人材紹介会社(もちろん許可有)に在籍しているとき、医療機関に営業をかけましたが、埼玉・栃木・群馬・茨城等の病院にほとんどBのようなブローカーが声をかけてきていたそうです。おかげで、「アナタのところは本物?」と言われる始末。非常に仕事がやりにくかった思い出があります。

見分けるポイントはただ一つ、有料職業紹介は許可制なので、各都道府県の労働局の許可がいります。名刺に許可番号が書いてあるか。あるいはホームページに許可番号が記載されているか。実際に人材紹介会社に出向く際は、目立つ場所に厚生労働大臣発行の許可状が掲示されているかをチェックする必要があります。念を入れるなら、各都道府県の労働局に電話して、許可番号と企業名が一致しているかを確認すべきでしょう。

この手のブローカー詐欺は後を絶ちません。詐欺罪で訴えても、看護師はそんなことは知らなかったといってしまえば、それまで。ブローカーもすでに逃亡しているので、見つけるのは非常に困難です。

■3.(在職中の社員向け)偽のヘッドハンティング

ある日、どこで調べたのか、電話がかかってきます。

「Cさんですか。わたくしDと申します。実はCさんを是非ヘッドハンティングしたいという企業様がいらっしゃいまして、お話だけでも聞いていただけませんか」

Cさんはヘッドハンティングなどうけたことがないので、自分を評価してくれていると浮かれてしまいました。そして、ヘッドハンターを名乗る男とホテルのロビーで密会してしまいます。そしてヘッドハンターはこう言います。

「会社名はまだ明かせないのですが、Cさんがお勤めの企業より、規模で3倍ほどでしょうか。そこの○○部長待遇でお迎えしようと先方様は申しております。年収はおいくらですか」

「700万円くらいです」

「そうですか。そうですか。先方様は急いでいるとのことで、1500万円までなら出すとのことです」

さすがにこの待遇の急上昇にCさんは期待と不安がよぎります。本当にこの話大丈夫なのんだろうか・・・でもチャンスかもしれない。

「ただし、選考はもちろん受けていただきます。それはよろしいですか?」

「はい。よろしくお願いします」と、選考くらいなら・・・とCさんは受諾しました。

そして、1週間後、ホテルの一室を指定されたCさんは、企業はCさんの会社と同業だが、はるかに大規模のE社で専務の肩書きをもつFという人物の名刺を渡され、面接が始まります。しかしそれは面接というよりも、F専務の説明に終始しました。

「Cさん。今回の求人は実に微妙でしてね。E社では○○部を統括する人間がいない。そこで実力がある人を探していたところ、それにCさんが適任と判断したわけです。ただ、早期に即戦力としてやってもらいたいが、Cさんの意志を確認したいと思って、およびだてしたわけです。Cさんがすぐきてくれるならいいが、そうはいかないでしょう。ただ当方も1ヶ月待つのが精一杯だが、どうですか。」

Cさんは就業規則では1ヶ月前に退職の願いを出せばいいと書いてあったことを思い出し、
「いえ、規則では1ヶ月なので、大丈夫だと思います」
事前に家族とも相談していたCさんは、E社への転職を決意しました。

「それはありがたい。それなら条件通知は持ってきてあるから、この場でお渡ししよう。ただし、この求人はいわゆる経営トップの極秘求人だから、会社に来たり、絶対に名刺の電話番号にかけてこないようにね。なにか質問があったら、彼を通してくれ」
と言って、同席していたヘッドハンターのDを指さします。

しかしCさんは慎重な性格なので、念のためE社の登記簿にF氏の名前があることを確認、企業信用調査もおこなっておきました。それから、勤めていた会社に退職願を提出しました。その後、ヘッドハンターは退職が順調に進んでいるか、いまE社での準備状況を説明してきていました。そして退職日を迎えた翌日、E社への入社に際して必要な書類をすべてそろえて、E社に初出勤しました。しかし・・・・Cさんを待っていたのは。
人事担当からの冷酷な回答でした。

「確かに当社に専務でFというものはおりますが、海外専従役員です。また、お預かりしたFの名刺は当社のフォーマットではありませんが・・・」

Cさんは、あわててヘッドハンターに連絡しますが、電話が通じません。名刺に書かれたF専務の番号にかけてもE社の代表番号にかかるだけでした。人事担当に事情を説明しても、人事担当役員の知らないところで求人が行われることはないとの冷たい返事でした。
「Cさんは、巧妙な罠にかかってしまったのです。」

まずヘッドハンターの話はすべてウソ。専務として出てきた男もニセモノ。よく見ると条件提示書の印鑑も、まるで社名の読めない印鑑でした。

あわてて、退職した会社に行き、事情を説明して、退職を撤回したいと申し出ましたが、なしのつぶて。年収につられていくような社員を雇用する必要は無いとの役員判断で、Cさんは失業しました。
だれがなぜCさんを罠にはめたのかはわかりません。推測ですが、3つのパターンが考えられます。

1.Cさんをリストラしたいが会社都合でなく自分から退職を申し出るように仕組んだ。
2.Cさんを今度重職につける予定なので、会社への本当の忠誠心を試すテストをした。
3.同業他社が戦力低下を狙って仕掛けた。

真相は闇の中です。しかしこの手の手法は、水面下でうごめいています。ヘッドハンティングの話に乗る際は、せめて会社見学等はするべきでしょう。Cさんは慎重でしたが、その点が欠けていたのです。そんな重職で雇うなら、一回ヘッドハンターに会社に行ってみたい。来客としてなら大丈夫だろうと申し出れば、この茶番劇は崩壊したはずです。うまい話には裏がある典型的な例です。

このほかにも、いろいろな人事にまつわる詐欺、詐欺まがいのエピソードはあります。人事担当者はそれに引っかかったら、軽い懲戒ではすみません。またCさんのように職を失う場合もあります。くれぐれも「石橋をたたいて壊して渡れない」くらいの慎重さが求められる時代になってきました。

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