一軍登録を抹消され、ファームで再調整中のファイターズの斎藤佑樹。今日(4日)はイースタン・リーグの混成チーム、フューチャーズとの試合に先発。五回までは被安打1の無失点と好投したが、六回に5安打を集中され5失点。この回限りでマウンドを降りることになった。

栗山英樹監督からファームでしっかりと結果を出さないと一軍復帰はないと告げられたという斎藤だが、最初の実戦登板は残念な結果に終わった。

拙blogにお越しになる方には説明不要だろうが、一応フューチャーズについて説明しておく。

2004年の球界再編騒動の結果、大阪近鉄バファローズがオリックス・ブルーウェーブと合併してオリックス・バファローズとなり、東北楽天ゴールデンイーグルスが新規参入した。この結果、球団数は十二球団で維持出来たが、ファームがウエスタン・リーグに所属していた大阪近鉄バファローズが消滅して東北に新球団が誕生したため、球団の所在地の東西でリーグを分けているファームに関してはそれまでウエスタン6球団、イースタン6球団と均衡が取れていたのに、ウエスタン・リーグが5球団と成り、イースタン・リーグが7球団になってしまった。リーグの球団数が奇数と言うことはリーグ戦期間中、対戦を組んでも常に1球団余ることになる。“両方のリーグともに余るのだから、余った同士の球団で交流戦をすればいいじゃないか“との意見が出そうだが、コストを考えてパとセではなく、地域でリーグを分けているのだからイ・ウ交流戦は簡単には実現しない。そこでアマチュアチームや独立リーグとの交流戦を組むなどで試合機会を保つことを考えているのだが、イースタンでは各球団のファームでも出場機会をなかなか得られない選手で1チームを作り、リーグ戦の組み合わせで余る1球団と対戦させる事を考えた。


ちょうど育成選手制度が導入され、球団によってはファームでも試合に出場できない選手が増えており、彼らの試合経験を積ませる意味で需要があった。フューチャーズは清武英利前ジャイアンツ球団代表の尽力が大きかった。ジャイアンツはもともと支配下選手の70人枠を撤廃したい考えで、語弊はあるがその隠れ蓑のように育成選手制度を導入し、今度は人数が増えても試合に出る機会を増やすため、試合数を増やそうとしてイースタン・リーグ第8の球団、フューチャーズを考え出したのだ。

フューチャーズの試合はイースタン・リーグでは非公式戦だが、チームと謳っている以上、各所属球団のユニフォームのままのオールスタースタイルでは拙いと考え、ユニフォームも統一した。イースタン・リーグ7球団はゴールデンイーグルスを除いた6球団が関東圏に集中しているが、それでも選手の移動の費用もバカにならない。フューチャーズ立ち上げの際にはサントリー株式会社がスポンサーになった。スポンサー探しに奔走していた当時の清武代表にサントリーを紹介したのはジャイアンツの原辰徳監督。この当時はまだ蜜月関係にあったようだ。


フューチャーズは“各球団のファームでも出場機会をなかなか得られない選手で1チーム”作っているのである。したがってメンバーは固定されていない。今日の場合もそうだが、イースタンの各チームは今日も試合をしており、ファームの中でも一軍に近い選手は通常所属するチームの公式戦に出場し、その他の選手がフューチャーズに回る。そんなことからフューチャーズと対戦するチームも普段の公式戦にあまり出場しない選手をテスト的に出場させることもよく見られる。したがって、たまにフューチャーズが独立リーグのチームと対戦する時に、“イースタン・リーグ選抜チーム”と形容されることがあるが、それは事実ではない<苦笑>。


前置きが長くなったが、今日、斎藤佑樹が対戦したチームはそういう相手だと言うことを頭に入れて欲しかったのである。フューチャーズの先発メンバーを紹介しよう。

(遊)荻野貴幸<G>
(二)北野洗貴<Ys>
(右)江村直也<M>
(一)神戸拓光<M>
(捕)鬼屋敷正人<G>
(指)藤澤亨明<L>
(三)伊集院峰弘<G>
(中)木本幸広<M>
(左)駒月仁人<L>
(投)成瀬功亮<G>

なお、試合前に両チームの先発バッテリーが発表された時に「フューチャーズ、ピッチャー成瀬」と発表されると、一部の佑観マダムがマリーンズの成瀬善久と勘違いしたのか色めきだった。驚いたことに、佑観マダムはマリーンズの成瀬のことを知っているのだ!

話が逸れた。このメンバーでは四番を打つマリーンズの神戸拓光がせいぜい一軍経験豊富な選手と言えよう。今季は角中勝也の頭角でめっきり影が薄くなった形だが、イースタンでは首位を快走するマリーンズの打線を最近までファームにいたジョシュ・ホワイトセルとともに引っ張っている。

斎藤はさすがにこの、イースタン・リーグでも出場機会になかなか恵まれない選手相手の混成チームに力の差を見せつける。
一軍の登板ではあまり見られないストレートも伸びがあるように見え、隙を見せない。四回までは打者12人をパーフェクトに抑えた。

フューチャーズの、マリーンズではなく、左投げでもない成瀬も好投し、ファイターズのファームの打線を無失点に抑える。チャレンジマッチには珍しい0対0の投手戦の様相を呈してきた。ただ斎藤の調整が主目的であるファイターズと違い、フューチャーズは選手を満遍なく起用したい。
成瀬功亮が3イニングを無失点に抑えた後、二番手にはかつてファイターズのユニフォームを着ていたスワローズの木下達生が登板。斎藤に次ぐ大きな拍手を受けていた。



五回裏、フューチャーズ四番の神戸と斎藤の二度目の対決。神戸は見事に左中間を破る二塁打を放ち、斎藤は初めて走者を許した。
五番の鬼屋敷正人が三塁前に綺麗な送りバントを決めて一死三塁。斎藤は先制点献上のピンチを招いた。ここで藤澤亨明が放った打球は前進守備の二塁手、加藤政義の正面に飛ぶ二塁ライナー。前進守備を敷いていただけにちょっと左右に飛んでいたら外野に抜ける安打になっていたことだろう。二死三塁となり、伊集院峰弘を三振に仕留め、斎藤はピンチを切り抜けた。


五回を終えて、フューチャーズとのチャレンジマッチには珍しい0対0の投手戦。実は一部のメディアに“今日の斎藤佑樹は5イニング”と報じられていたそうで、敗戦処理。の周りの佑観マダム数人が席を立った。しかし六回裏のマウンドにも斎藤は続投。佑観マダム達も戻ってきたが、この六回に佑観マダムにとってはまさかの事態が起きる。


先頭の木本幸広に綺麗に一、二塁間を破られると、続く九番の駒月仁人はバントの構えからバスターエンドラン。これが三遊間の深いところに飛ぶ高いバウンドの打球と成り、内野安打となり無死一、二塁。「今のは金子さんだったらアウトよね…」と佑観マダムから不満が出る中(筆者注.たぶん誰がショートでも内野安打)、荻野貴幸が送りバントを決めて一死二、三塁。ここでスワローズの北野洗貴に左中間に運ばれ、ついにフューチャーズに先制点を奪われた。

さらにマリーンズの江村直也に四球、神戸に一、二塁間を破られた一死満塁から斎藤は暴投で3点目。
一死二、三塁となって鬼屋敷に三塁線を破られてさらに2点を追加され、この回一気に5失点となった。



ここでようやく島崎毅投手コーチがマウンドへ。交代かとも思える状況だったが、続投。
後続を断ったが、斎藤はこの回限りで降板。6イニングで被安打6の、すべて自責点の5失点。投球数はちょうど90球だったそうだ。


五回までのほぼ完璧な投球の印象が一気に崩れる六回の乱調。先頭の木本に安打を打たれてから、この回は常にセットポジションだった。一軍の試合でもそうだが、好投しているように見えてもひとたび走者を許すと粘りきれずに簡単に失点をしてしまう印象があるが、今日も修正が利かなかったようだ。


七回裏、斎藤に代わって運天ジョン・クレイトンがマウンドに上がった当たりから佑観マダムが席を立ち始め、ようやくいつもの鎌ヶ谷らしい姿になった。佑観マダムの中には「今日は五回までって書いてあったのに六回まで投げさせる監督が悪いのよ…」とあからさまに筋違いな監督批判をしている人もいたが…。

フューチャーズは八回裏にファイターズの三番手、松家卓弘からライオンズの藤澤の犠飛で1点を加えて6点差と拡げ、試合としてもほぼ決まったかに思えたが、九回表にファイターズ打線がフューチャーズ七番手、マリーンズの鈴江彬に突然襲いかかった。

先頭の大嶋匠の二塁内野安打を皮切りに村田和哉の安打と今浪隆博の四球で一死満塁とすると松本剛の三遊間安打で1点を返す。
続く谷口雄也の左犠飛でもう1点。市川卓もレフト前にはじき返して3対6とし、鈴江をKO。フューチャーズ最後の投手、ジャイアンツの土本恭平を引っ張り出した。
ァイターズは佐藤賢治が四球で二死満塁。石川慎吾の三遊間の内野安打で4対6とし、ワンヒットで同点、長打が出れば逆転も…という状況で大嶋がこの回二度目の打席に立ったが、二塁ゴロに倒れ試合終了。


【4日・ファイターズスタジアム】
F  000 000 004 =4
FT 000 005 01× =6
F)●斎藤、運天、松家−荒張、大嶋
FT)成瀬<G>、木下<Ys>、渡辺<G>、○林<M>、山本<M>、鈴江<M>、S土本<G>−鬼屋敷、藤澤
本塁打)両軍とも無し


もしも最終回に逆転、あるいは同点になって斎藤が敗戦投手を免れる形になっていたら明日のスポーツ紙に“佑ちゃん、やっぱり持ってる”なんて提灯記事が載ったかもしれないが<苦笑>、そういう問題ではない。前述の如く、ファームの、それも所属球団の公式戦に少なくとも今日はしない選手の集まりに、6イニングのうちの1イニングだけとはいえ、めった打ちにあったのだ。

フューチャーズの今季の戦いぶりを振り返る。

3/25 FT1−3B

4/1 FT2−3L
4/5 FT0−6M
4/7 FT0−7F
4/10FT2−4L
4/17FT2−11F
4/21FT2−12B
4/25FT0−10G
4/29FT0−8M

5/1 FT0−3Ys
5/8 FT1−2L
5/13FT6−11F
5/23FT3−2Ys(今季初勝利!)
5/27FT2−10M
5/30FT1−5B

6/1FT 7−7L
6/13FT1−6M
6/17FT1−2Ys
6/20FT3−14F
6/27FT5−10G

7/1 FT1−14M
7/3 FT0−9四国ILplus選抜
7/4 FT0−1四国ILplus選抜
7/5 FT6−12四国ILplus選抜
7/11FT2−12F
7/25FT3−3L
7/28FT2−8B

8/4FT6−4F

今日の試合の勝利を入れて、ようやく2勝24敗2分けである(四国アイランドリーグplus選抜との三試合を含む)。連敗を12で止めたのだ。

試合後、鎌ヶ谷の常連さん、イースタン観戦マニアの方何人かと話したが、敗戦処理。が「年に一、二試合しか見ないけど、フューチャーズが勝ったのを生で見たのは初めてだ」というと皆「私も初めてだ」という感じだった<苦笑>。


斎藤佑樹は大丈夫なのだろうか?




何度も言うが、フューチャーズに打たれたのだ。

ほんの二週間前にはオールスターゲームに先発していた投手がファームの選手につるべ打ち…。


何とかパ・リーグで首位を走っているファイターズは斎藤が登録抹消になってから今日で4勝1敗と好調だが、斎藤の登録抹消で空いた枠に多田野数人を登録して先発させ、その翌日には多田野を抹消して谷元圭介を登録して先発。谷元も登板翌日には登録を抹消し、明日、本来なら斎藤が上がるべきマウンドに上がる中村勝が谷元抹消で空いている枠で登録される。好調に見えて先発ローテーションに関しては自転車操業に近い。次節は幸いにも五試合なので、八木智哉を加えれば先発ローテーションを凌げる。ただその次の週からは六連戦が三週続く。真夏の一番苦しいときに開幕投手を務めた男が欠けるのはやり繰り上手とも言われるファイターズでも苦しいだろう。


一軍は何とか首位戦線にいるが、思い起こせば開幕戦で斎藤がライオンズのエース、涌井秀章に投げ勝って完勝したのが大きいだろう。昨年までの梨田昌孝監督とは異なり、新人監督の公式戦初試合だ。あの1勝が単なる1勝でないことはファイターズファンの多くが感じていることだろう。

だが、あの頃の斎藤も、今の斎藤も同じ斎藤佑樹なのである。

あの頃の斎藤にもう一度戻るために、鎌ヶ谷でもがき苦しんで欲しい。今日も多数詰めかけた佑観マダムにとっての佑ちゃんの原点はあの甲子園大会だろう。炎天下の鎌ヶ谷から新しい斎藤佑樹を作り直して欲しい。一皮むけた新しい斎藤佑樹が出来るなら、一軍先発ローテーションが多少苦しくなろうとも、時間をかけてじっくり作り上げて欲しい。