民主党政権になって良くなったところ〜不透明な天下りOBの影響力の排除
今回はseinantaroさんのブログ『うさみのりやのブログ〜旧名:三十路の官僚のブログ〜』から転載させていただきました。
■民主党政権になって良くなったところ〜不透明な天下りOBの影響力の排除
酒飲んで『ニコニコ動画』見ながらブログ更新……ながら族ですね。さて民主党政権になって良くなったところです。まず今回は“天下り”自身の話ではなくて“天下りOBの“不透明な”影響力排除について”ですのでそこはお間違いなく。正直僕は「天下りをした」というだけでマスコミや世論がまるで殺人でも犯したかのように敵視する理由が本当のところはよくわからないんです。憲法では職業選択の自由が保証されていますし、50歳を超えた人が転職するとなるとこれまでの仕事の経験を活かせる従来の仕事に近い分野に転職先を求めざるを得ないわけで、それは必然役所と近しい関係にある職場になるのは仕方ないと思うんですよ。
ただ問題は天下りが早期退職慣行っていうものと結びついていることだったと中にいる身では感じてました。要は「君はもう出世できないから早期退職してよ。再就職先を見つけてあげるからさ。君のポストには君の後輩の○○くんが着くよ」ってある日突然幹部が言われちゃう制度、ってことです。
て感じで課長クラスになると自分もいつ将来早期退職を求められるかわからない立場なわけで、きっと課長勢にとっては天下りOBっていうのは明日の我が身にみえて、自分の将来の不安がよぎって天下りOBに強くものを言われると弱くなってしまうっていうところが事実あったと思うんですよね。“その結果として天下りOBが存在しなければ成立しないような税金で食ってるゆがんだ公益法人が結構あった(ある?)のも事実”なわけで、こういう早期退職と結びついた制度的な天下り(はじめに書きましたが、僕は天下り自体は転職の一環と思ってます)の弊害の影には、官僚はクビになる、っていう厳然たる事実がありました。
よく「親方日の丸で公務員はクビにならない」という半ば誤った認識がマスコミを通じて流れていることは非常に残念で、大企業よろしく公務員も上位層の官僚は仕事ができなければクビになるってことをみなさん是非知っていて欲しいなと思います。●2.若手として政権交代後の変化をどうみていたか?
よく「お前らも将来“天下り”するんだろ、このクズが」みたいなことを罵られるんですけど、国民感情を考えれば“早期退職と結びついた制度的な天下り”っていうのはすぐになくなるものと、僕ら若手の大部分は思っています。だから先に述べたような天下りOBの不透明な影響力っていうのは、僕らが1年生のころから非常に苦々しく思っていて、3年目くらいまでは新橋〜赤坂界わいの飲み屋で「OBって一体何様なんだよ」って同期同士でくだを巻くこともありました。
で、本題ですが、民主党は政権交代してからこの“天下りOBの不透明な影響力の排除”っていう課題には徹底して取り組みました。例えばある事業で公募が行われた場合、Aという会社が非常に優れた提案をしてきても「Aに天下りOBがいる場合は提案の採用は認められない」、という指導があったくらいです。その点は本当に僕は「やりすぎ……でもあっぱれ!!」と心の中では思ってました。
多分多くの国家公務員が一度はOBの不透明な影響力のせいで、政策の立案や執行がゆがんだ経験をもっていたはずで、こんぐらいやり過ぎないとそういう長年の問題はなくならないもんなんだろうな〜とも思ってました(その一方で突然はしごを外された天下りOBに多少の同情は感じました)。ただその結果としてこと自分の担当する範囲に関しては政権交代後に政策立案の自由度が増したことは間違いなくて(もちろん業界構造の変化など他の要因もありますが)、従来に比べればイノベーティブで世界にも誇れるような国家プロジェクトが近年結構立ち上がったと自負しています。そういう意味じゃ、僕は天下りOBの影響排除という点に関しては本当に民主党はよくやったな〜、と思っているところです。
●3.今の問題なのは天下り“だけ”に着目して取り締まったことによる弊害ではないか?ただ最近感じるのは、天下りに関して非常に厳しい政策を民主党をとった結果、今度は早期退職慣行が崩れて、組織の新陳代謝がなくなり若者が酷使される、という現象が起きているということです。天下りOBに対して厳しいスタンスをとればとるほど、早期退職を受け入れる人は減るわけで、そうすると組織内の高齢者が増えて、その人件費がかさんだ結果、若手を採用できない、という当然の帰結を迎えているわけです。ちょっとまとめると
☆早期退職慣行と天下りっていうのは非常に近い関係にあったわけで、どちらかが崩れればもう片方もおかしくなっちゃうわけです。
☆一方従来のキャリア官僚制度自体は、幹部になると出世レースに敗れたものはクビにするという早期退職慣行とその保証としての天下りあっせんという2つの前提の元に成り立っていたので、このバランスが崩れた今、キャリア官僚制度は事実上崩壊しつつあります。
☆そしてキャリア官僚制度に変わる官僚育成システムが今ほとんど議論されていないので、我々の職場=日本の官僚制度は今漂流しているわけです。
さてこの問題を誰が、どう解決するのでしょうか? 解決できるのは、企業で言えば経営者や株主に当たる、大臣や政治家だけだと思います。国会議員の皆さん、私はまだなんだかんだ言って、みなさんに期待しています。それはみなさんが、国民の投票によって選ばれたという意味で唯一無二の存在だからです。我々の新しいあり方、働き方を考えてくださいな。よろぴくね。
執筆: この記事はseinantaroさんのブログ『うさみのりやのブログ〜旧名:三十路の官僚のブログ〜』から転載させていただきました。