原発事故は経済的な利益を追求した人災、原発の建設現場で働いた経験もあるベルギーの巨匠ダルデンヌ兄弟
第64回カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞した映画『少年と自転車』の監督ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟が、10日に都内で来日記者会見を行い、日本の少年の話に着想を得て製作した本作をアピールしたほか、日本の原発事故について「これは人災で、経済的な利益を追求しすぎたために起こった事故だと思う」と見解を語った。
『少年と自転車』は、ダルデンヌ監督が2003年に『息子のまなざし』のプロモーションで来日した際、少年犯罪についてのシンポジウム出席時に聞いた「赤ちゃんのころから施設に預けられた少年が、親が迎えに来るのを屋根にのぼって待ち続けていた」という話に着想を得て作られた感動作。親に見捨てられた少年が、初めて信頼できる大人の女性に出会うことで人間的に成長する姿を描く。
リュックは「親から捨てられた日本の少年は成長した後犯罪に走りましたが、その事実をそのまま映画にするのは興味がなかった。彼がひとりの女性の愛によって違った道に進むことができることを描きたいと思った」と作品に込めた思いをコメント。ジャン=ピエールも「子どもにとって大事なのは、自分を気にかけてくれる人がいることを確信すること。まさにそれを求めて、この映画の少年は走っていくのです」と付け加えた。
また、会見の終わりには、若いころに原発の建設現場で臨時雇いとして働いた経験を持つというダルデンヌ兄弟に、「日本の原発事故をどう思うか?」と質問が飛ぶ場面も。ジャン=ピエールは「ニュースで見る限りでは、経済的な利益を重視し、周囲に住む人々の安全を少し忘れたために起きた事故のように思える。この事故が原子力発電をしている世界のすべての国々にとって教訓となることを望みます」と真摯(しんし)な表情で語っていた。(古河優)
映画『少年と自転車』は3月下旬よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開