「寄付、おねがいします」

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インターネットのフリー百科事典、ウィキペディア。年末になると運営資金の寄付を募集するのが恒例行事(?)になっており、今年も11月頃から寄付の募集を訴えている。どうやって募集しているか、というのは最近ウィキペディアを使った人ならお分かりかと思うが、ウィキペディアのページ上方に、「○○からのお願いをお読みください」という写真付きのメッセージがあり、それを開くと寄付のお願いが書かれている、という感じのものだ。

このお願いメッセージ、はじめのうちは創業者であるジミー・ウェールズ氏からのものだったのだが、時間が経つにつれていろんな人が登場するようになり、筆者が海外版も含めて確認した範囲だと5、6人以上はいるようだ。このお願いメッセージ、結構目立つのでちょっと煩わしく感じる人もいるみたいだが、筆者の場合どちらかというと、このお願いしている人たちは一体何者なのか、ということが気になったので、調べてみた。

まず紹介したいのが、多分一番知名度の高いブランドン・ハリス氏。長髪で男前なウィキペディアのプログラマである。ウィキペディアに所属する前は、アメリカのゲーム販売会社で「シムシティ」や「FIFAワールドカップ」などのゲームを販売するエレクトロニック・アーツ社に所属していたらしい。メッセージの中で彼は「子どもたちから金を巻き上げるように設計されたくだらないものを作ったりもしていた」と告白しているが、それがこの会社での出来事だったかは不明である。

ハリス氏は、今年の7月、ウィキペディアが「寄付のお願い」のテスト版を作ったときにいち早く登場しており、ウェールズ氏に匹敵する寄付を集めることに成功したのだという。彼の個人ウェブサイトのURLは「gaijin.com(ガイジン・ドットコム)」というものであり、何か日本とつながりがあるのかな、と思って調べてみたが、筆者が調べた範囲ではそのつながりを発見するには至らなかった。

ウィキペディアに所属していない人物もお願いに登場している。例えばスーザン・ヒューイットさん。彼女は過去に549もの記事をウィキペディア上に作った「著者(Author)」である。アメリカ自然史博物館(American Museum of Natural History)でボランティアスタッフをしており、ここのホームページで紹介されているところによると、イギリスのケント州に生まれ、近所にダーウィンの家があり、たびたび遊びにいっていたらしい。ダーウィンは1882年に死去しているので面識があるわけではないが、彼女が貝やカタツムリ等に関する記事を幅広く執筆しているのは、このような少女時代の経験が関係しているのかもしれない。

これ以外にも、インドで育ち、専門書が十分にない環境の中でウィキペディアを使って勉強し、今はソフトウェア開発者をしているアクシャヤ・イェンガー(Akshaya Iyengar)さん、ヒンズー語、ウルドゥー語、英語、サンスクリット語を操る盲目のウィキペディア著者、アニルッダ・クマール(Aniruddha Kumar)さん(目が見えない人は、ネットの情報を全て聞かなければならないので、広告のないウィキペディアはとても便利なのだそうだ)、学期ごとに500ドルの教科書代がかかることからウィキペディアに目覚めた女子大生のゴリラワーフェア(GorillaWarfare)さん(仮名?)など、さすが世界で5番目に大きなウェブサイトだけあり、その多様性には目を見張るものがある。

ウィキペディアの寄付については、「毎年寄付をお願いするのなら、広告を載せるなどして収益が入るようにした方がいい」など、賛否両論あるだろうが、実際、ウィキペディアはたくさんの人に使われている。「今度出てくる人はどんな人かな」と、おおらかな気持ちで見ると、それはそれで楽しいかもしれません。
(エクソシスト太郎)