■ 2002年の主役となった韓国

2002年6月のこと。世界中の人々が、韓国代表の快進撃に驚くと同時に、冷ややかに見つめていた頃、欧州のサッカージャーナリストが書いた「韓国に関する記事」を目にした。そして、それが、今でも記憶に残っている。

もう9年前の出来事になるが、2002年の日韓W杯では、FWロナウド、GKカーン、MFベッカム、MFリバウド、FWデュウフといった一流選手のプレーとともに、「韓国代表」が話題を集めた。この大会は、ピッチ上でも、ピッチ外でも多くの問題が起こったが、その中心が「韓国」であり、ある意味で、「2002年のW杯は韓国による韓国のためのW杯」となった。

その記事は、「スタジアムに集まった『赤い悪魔』たちは、目の前のサッカースタジアムで、『別のスポーツ』が始まっても、何も気づかずに、韓国代表チームを応援し続けるだろう。」という趣旨のもので、「なるほどね・・・。」と感じるとともに、W杯の共同開催国の国民の一人として、ちょっと恥ずかしくて申し訳なく思ったと記憶がある。

■ 本当にサッカーが好き???

記事中では、韓国人サポーターの熱狂ぶりを揶揄した「やや過激な内容」になっているが、一方で、かなり的を得ているように感じてしまう。国民のほとんどがサッカーという競技には興味がなくて、「韓国代表チームが活躍すること」や、「韓国人選手が海外で高い評価を受けること」にのみ関心がある、ということは、傍から見ていても気になる部分である。

普段、国内リーグに全く興味を示すことなく、韓国代表チームの試合だけに熱狂する姿は、滑稽に見えなくもない。ほとんど馴染みのない(はずの)選手たちに対して、どのように感情移入するのか、不思議に思うが、そういうスタイルが、国内では「一般的」なようで、今後もずっと変わらないだろう。

(個人的には、韓国サッカーに「リスペクトする気持ち」はあるが、韓国内で、こういった部分が改善されていかない限り、今後、日本サッカーとの差は広がっていく一方ではないか、と考えている。)

■ MFキム・ボギョンが重傷

その韓国サッカーの特徴というと、「異常なまでの執念」である。「勝利への執念」というと、ネガティブな言葉ではないが、韓国の場合、時として、「勝利のためには、何をしても許される。」という意味に変換されてしまう模様で、ダーティーなプレーは、なかなか減ってこない。

韓国人Jリーガーで、ダーティーなイメージを持つ選手はいないので、韓国人プレーヤーというよりも、Kリーグの問題なのかもしれないが、ACLの場合は、その傾向が強くて、「選手達が怪我をしないか。」とヒヤヒヤしながら、見守ることが多い。

勝敗も大事であるが、フェアプレーも同じくらい大事だと思うので、ACLのC大阪と全北の試合も、クリーンな試合になることを期待したが、今回、MFキム・ボギョンが犠牲になって、開始早々に相手選手から「ヘッドバット」を食らって、「顔面骨骨折」という通常では考えられないような重傷を負うことになった。

ゴール前で、「決めるか」、「守るか」という瀬戸際の状況になったとき、文字通り、命を懸けて、そういう危険なプレーを選択せざる得ない状況になることもあるが、ミドルゾーンで、ここまで当たってくる必要は全くなかった。「はじめから、ボギョンを壊そうと狙っていた。」とは考えたくないが、全北と対戦した4試合で、MFキム・ボギョンは、何度も悪質なタックルを食らっていて、全くの偶然だったとは思えない。「完全に狙われていた。」と考える方が自然である。 (1試合目2試合目3試合目4試合目)

■ ドライな関係を築くべき

結局、このプレーで「レッドカード」が出ることはなかったが、「勝利のためには、何をしても許される。」と考えるような選手がいるならば、韓国サッカーとは、今後、距離を置いて、歩いて行かざる得ない。もちろん、ACLのようなアジアの舞台で対戦することは避けられないが、震災の横断幕の件も含めて、その関係については、もう一度、考え直す必要があるだろう。

当然、日本でプレーしている「韓国Jリーガー」まで否定する必要は全くない。彼らは、コストパフォーマンスに優れていて、チームでも貴重な戦力になっている。最近では、高校や大学を卒業してから、Kリーグを経ずに、単身で日本に乗り込んでくる選手も多いが、勤勉で真面目な選手がほとんどで、すぐに日本語も取得してしまうので、コミュニケーションの問題もない。韓国人というと、「ガツガツした人」が多いようなイメージがあるが、彼らは、総じて「穏やかな性格」であり、「シャイ」な選手も多い。見ていると、いい意味で「韓国人」らしくない選手が多くて、Jリーグのレベルアップに貢献してくれるので、彼らの存在を大いに尊重すべきである。

ただ、集団になると、国レベルになると、いつもトラブルが起きている。そして、そのトラブルが、サッカーという競技まで持ち込まれて、代表チームや、クラブチームが激突するたびに、何かしらの問題が起こっている。これは、全くの好ましいことではない。

個人的には、お互いに意識しすぎることなく、もっと「ドライな関係」でいいのでは?と感じる。2002年の共催が決まってからは「友好ムード」も高まって、お互いが歩み寄った時期もあったが、結局、相手のことを知れば知るほど、「ちょっと違うなあ・・・。」という気持ちが強くなって、真の友好関係が築かれることはなかった。

サッカーは、ワールドワイドなスポーツなので、1つの国だけを意識しても、大きなプラス効果は生じない。日本は、2010年のW杯でベスト16に入って、2011年のアジアカップも制した。アジアを超えて、世界に飛び出そうとしている中、かつてほど、「韓国」という1つの国にこだわる必要性が薄れている。今回のC大阪と全北の試合は、いろいろな問題を引き起こしたが、これがきっかけとなって、お互いが、いい方向に進んでくれることを期待したい。