野菜の名前―中国語「菜花児」という単語を巡って
勤務先の授業で使っている中国語のテキストに「菜花児」という単語がでてきたので、アブラナと即決してしまったが、テキストに付された図をみるとどうやらそうでもなさそうだ。
図から見て、ブロッコリーではないか、との意見が受講生から出た。
たしかに、小学館の『中日辞典』には、菜花児は、1.カリフラワー 花椰菜の通称 2.アブラナ、と出ており、アブラナでも間違いなさそうだ。そもそも、カリフラワーも同じアブラナ科である。
別の日中辞書で、カリフラワーを引いてみると、花椰菜と花甘蘭のふたつがでている。ともに初耳の単語であるが、調べてみるとハナヤサイ(花椰菜)もハナカンラン(花甘蘭)も実は和名で、カリフラワーが日本にはじめて入ってきた時に日本で最初に翻訳され、その漢字語がそのまま中国語の語彙の中に入ったものであろう、と私は勝手に推測する。
では、ブロッコリーはどうか。そもそも野菜に疎い私は、カリフラワーとブロッコリーの違いもよく分からないが、アブラナ科で共通してはいるものの、確かに種としての違いがあるようだ。ものの辞書によると、ブロッコリーの中国語訳は西蘭花というようだ。日本語による和名は、ミドリハナヤサイ(緑花椰菜)、ミドリハナカンラン(緑花甘蘭)というようである。緑色のカリフラワーというわけで、カリフラワーの別種であることを意識したものとみられる。となると、この西蘭花という中国語の単語は中国で造語されたものであろう。
似たようなカリフラワーとブロッコリーにしても中国語訳はずいぶん違うものである。また中国のスーパーや市場で実際にどのような単語が使われているのか、興味がひかれる。以上のような辞書的な書誌情報はしばしば使用の実態を離れた机上の空論であることが多いからである。広い中国のこと、地域差もあることであろう。
いずれにせよ、中国語にまつわる(私のようないい加減な?)詮索は楽しいことである。(執筆者:川尻文彦 愛知県立大学外国語学部准教授 編集担当:サーチナ・メディア事業部)
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