親善試合4連敗という結果がチームに与えて危機感は大きかった。だからこそ、戦術変更で先発に絡めなくなった選手も覚悟を決めた。

 誰もが「勝つため」に心をひとつにした結果が初戦の勝利を生み、日本を勢いづかせた。相手の不出来に恵まれた感もあるが、4試合を戦い1失点は立派だろう。とは言え、日本が16強の一員として、世界に認められたかと言えば、それはまた別の話だろう。もちろん、今大会のサプライズとしての評価は得るだろうが、強豪国と肩を並べるまでには至っていない。

 2002年大会、ホームでの戦いとは言え、トルシエのフラットスリーという組織的な守備を用いて、ベスト16入りを果たした日本だったが、日本サッカー協会は組織だけでは勝てない。個の力が必要だと、ジーコを監督に迎えて、また別な戦い方をすることになった。そして個の力を重視したサッカーで挑んだドイツ大会で敗退すると、再び、組織力を生かすサッカーをするためにオシムがやってきた。岡田監督もそのサッカーを継承したが、ボールを奪う位置を下げ、相手の出方を待つリアクションサッカーでW杯を戦った。ベスト16という結果を残し、選手の多くが、守備での手ごたえを口にしながらも「世界と戦う上では個人のレベルをもっともっと上げないと厳しい」と話している。ある意味2002年と同じ課題が突きつけられたような状態だ。

 この結果をどう繋げていくのかが、日本サッカー協会の手腕が問われる。悔しさを晴らすためには冷静な判断と未来を見つめる目が必要になるだろう。

取材・文/寺野典子