ベンチワークを含め、オランダ戦の90分は次戦へと密接につながっていく<br>(Photo by Tsutomu KISHIMOTO)

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シナリオとしては許容範囲である。第2戦でアルゼンチンに1−4で粉砕された韓国に比べれば──アルゼンチンとオランダを単純に比較できないが──敗戦のダメージは最小限にとどめられた。グループリーグ突破の可能性はつながっている。4年前のドイツ大会よりも、はるかに希望を抱ける。

……と、ここまで書いたところでダーバンのプレスセンターから追い出され、カメルーン対デンマーク戦の生放送を観ることができずにジョージへ移動した途中で、デンマークの逆転勝利を知った。24日に行われる第3戦は、引き分け以上で決勝トーナメント進出が決定する。

こうなると、オランダ戦で悔やまれたものがさらに重くのしかかり、敗戦の陰にかくれがちなプレーが輝きを放つ。

悔やまれるのは終了間際の決定機だろう。闘莉王を最前線へ上げたパワープレーから、岡崎がペナルティエリア内でシュートチャンスを得る。DFにコースを限定されつつあったが、確実にゴールを狙えるシーンだ。ところが、左足のボレーシュートはバーを越えてしまうのである。

この試合の日本は、カメルーン戦を上回る10本のシュートを放った。だが、決定機と呼べるのはこのシーンだけだ。世界のトップクラスを相手にチャンスを作り出すのが難しいうえに、守備に軸足を置いたゲームプランで望んでいる現状では、黄金と言ってもいい好機である。鋭い動き出しが評価されるとしても、最低でもワクへ持っていかなければいけないはずだ。「惜しかった」では済まされない。

対象的に価値を高めているのが、川島のふたつのセーブだろう。

リードを奪ったオランダは、守備のブロックを築いてカウンター狙いに切り替えてきた。人数をかけなければ相手の守備網は崩せないし、かけたとしてもカウンターの誘いに乗ってしまうリスクは高い。

果たして、後半終了間際に最終ラインの背後を突かれてしまう。それも、立て続けに二度も。甲高いブブゼラの音色に、日本のサポーターの悲鳴にも似た叫びが入り混じった。ここで川島が見事な対応を見せる。シュートコースを狭めながら間合いを詰め、1対1をしのぐのだ。

各国の守護神を悩ませるジャブラニの影響を受けたスナイデルの得点は、GKにとって自分への怒りが募るものだったはずである。なぜ、どうして、といった自分への疑問はつきなかっただろう。それでも、失点を精神的に引きずることなく、追加点を許さなかった。得失点差で優位に立つ状況でデンマーク戦に臨めるのは、川島のふたつのセーブがあったからに他ならない。

もうひとつ、岡田監督の選手交代もデンマーク戦につながるかもしれない。

大会直前からキャプテンマークを託された長谷部はもちろん、先発出場が危ぶまれた時期もあった松井と大久保も、今大会では指揮官の期待にしっかりと応えている。1対1の局面で戦える共通点を持つ彼らは、攻守において重要な役割を担う。デンマーク戦でも欠かすことのできない選手だ。その3人が後半途中で退いたことが、疲労の蓄積を少しでも軽減することにつながれば──岡田監督の采配もまた、大きな意味を持つことになる。

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