98年のW杯優勝を経験するメンバーがティエリ・アンリ(バルセロナ)ただひとりになったフランス代表。

 ディディエ・デシャン(マルセイユ監督)、ローラン・ブラン(ボルドー監督)、アラン・ボゴシアン(フランス代表アシスタントコーチ)は指導者として活躍するが、それ以外の多くは解説者の道を歩んでいる。

 解説者となったOBが現在の代表を見る目は厳しい。とくにデュガリ(カナルプリュス)、リザラズ(TF1)、プティ(レキップ)の各氏からは、辛辣ともいえる批判が繰り返されている。

 これに真っ向から反発したのが、26歳で代表キャップ31を数えるジェレミー・トゥララン(リヨン)。新しい世代のリーダー格といえるトゥラランは、19日付のル・プログレ紙に、「我々がよくないのは確かだが、いつの時代もフランス代表は予選通過に苦しんできたじゃないか」と批判に不満を示す。

 とくに“フランス98”(W杯優勝メンバーのグループ)に対しては、「糞ムカつくね」と強烈な表現で攻撃した。ふだん口数が少なく、物静かな印象のトゥラランからこのような言葉が出るのは驚きだ。国民からもOBからも冷たく突き放され、孤立無援の感じを抱いている選手たちの胸中がうかがい知れる。

 サポートの得られない不満はフランス・サッカー連盟(FFF)にも及ぶ。「彼らは、よけいに波風を立てるだけで何もしてくれない。(W杯前に)必要なのは、我々が自信を回復することなのに、(親善試合の相手に)スペインを選んだ。これは最悪の選択という以外何ものでもない。僕はスペインと対戦して、これまでにない屈辱を味わったよ」。

 トゥラランによれば、スペインはブラジルを上回る現時点で最強のチーム。何もこの時期に“世界最強”のチームを相手に、わざわざ自信喪失を招くような試合を組むことはないだろう、という言い分だ。

 これには、「そんな弱気なことでどうする!」とまた“うるさい”諸先輩から喝を入れられてしまうかも知れない。トゥラランの言葉を聞く限り、いまのところフランス代表には、敗戦を教訓とする環境が根付いていないようだ。トゥラランの発言で、監督も含めて「リーダー不在」と言われつづけるフランスの問題がさらに明らかになった感は否めない。