残り3試合で首位マルセイユと同じ勝ち点、得失点差わずか2点で優勝を争うボルドー。その最大の牽引力が、ACミランからレンタルしているMFヨアン・グルキュフ(22)であることに異論をはさむ者は誰もいない。数字だけで見ても、チーム最多の34試合に出場し、11得点、8アシスト。チームの総得点(59点)の3分の1に直接からんでいることになる。

 このグルキュフの活躍に冷淡ともいえる反応を示してきたのが、ほかでもないローラン・ブラン監督だった。しかしシーズンも終盤にさしかかり、監督がそうしてきた真の理由が明らかになった。ブラン監督はレキップ紙に「(グルキュフについて)1月から言ってきたことは、彼の活躍だけに頼らぬようにするためだった。でもいまはその必要がなくなったから言おう。彼はほかの選手のいいプレーを引き出せる選手。そしてなおかつ、大事な場面で決定的な働きをする選手だ」とはじめて手放しでほめ称えた。

 “グルキュフ依存症”に陥らぬよう監督が配慮したのはほんとうだろう。ただし、このタイミングでわざわざグルキュフの価値を強調したのは、シーズン終了後の残留がチームにとって至上命題になっていることを感じさせる。そしてもうひとつは、優勝を争うここ3試合で4得点と驚異的な活躍をするグルキュフの力にあらためて強烈な印象を受けたからに違いない。監督は「そして我々は、彼のもうひとつの長所に気づかされた。ヘディングだ!」と付け加える。

 ここ2試合、グルキュフはいずれもヘディングで得点をあげている。前節のソショー戦では、右サイドからのロングボールに上半身を後方にそらしながらという態勢でしぶとく頭を合わせ、ゴール左隅に決めた。身体のしなやかさと同時に首の強さがなくては生まれないプレーだった。第35節のヴァランシエンヌ戦では、同じく右サイドから腰の高さで入ってきたセンタリングに上体をひねりながら飛び込んでのむずかしいゴール。足で合わせればクロスバーを越える可能性が高いボールだった。フランス語でヘディングはそのまま“頭のプレー”という言い方をするが、その使い方は反射的な頭脳の表れでもあることがよくわかるプレーだった。

 グルキュフがミランへの復帰、あるいは他のトップクラブへの移籍を希望するとしたら、「彼にとってボルドーが小さすぎるというのを思い知ることになるだろう」と語るブラン監督。「彼はチームの土台。彼がいるといないでは大きな違いがある。いまは(慰留に)最後の力を出すときだ」と語っている。