リーグ・アン残り5試合の時点で、2位ボルドーに5差(ただしボルドーは第33節を29日に行なう)、3位リヨンに6差をつけ、16年ぶりのリーグ優勝が現実味を帯びてきたマルセイユ。しかしここへ来て、チームの心理状態にマイナスの影響を与えそうな事態が起こっている。マルセイユ躍進の最大の殊勲者ともいえるエリック・ゲレツ監督の去就問題だ。

 マルセイユは昨シーズン、開幕から9試合で1勝4敗4引き分けとリーグ16位に低迷、エモン監督を解任して、PSVやガラタサライなどの監督を歴任したベルギー人のゲレツ氏を招聘した。ゲレツ監督の下で生まれ変わったチームは年明けから順位をじわじわと上げ、最終節で3位に食い込み、チャンピオンズリーグ出場権を獲得するまでに至った。

 今シーズンは精力的な補強も功を奏し、開幕から好スタート。8月後半に一時首位に立つなどつねに上位をキープし、4月に入ってリヨンの下降を機に首位を奪取した。このところ6連勝、2月以来9勝1敗2引き分けとスパートをかけている。

 親分肌の監督として選手やサポーターから絶大な信望を得ているゲレツ監督だが、シーズン終了後に切れる契約については、すんなり更新とは行かなかった。これまでの報道によると、年明けから交渉が行なわれ、マルセイユ首脳陣は契約延長を提示した模様だが、本人はなかなか答えを出さず、その態度は「ミステリアス」と表現されている。

 レキップ紙によると、問題はおもに2つある。ひとつはゲレツ監督が選手の補強でさらなる権限を要求していること。これはクラブのナンバー2、ジョゼ・アニゴ運動部長の、さらにはパプ・ディウフ会長の領域を脅かすことにつながる。

 もうひとつは報酬の問題。クラブは月給を現行の16万ユーロから20万ユーロ(約2500万円)に引き上げる提示を行なったとされるが、28日付のレキップ紙は、ゲレツ氏がサウジアラビアのアル・ヒラルから25万ユーロ(約3120万円)で3年契約のオファーを受けたと報じている。

 ベルギー代表、あるいはクリンスマン監督を解任したばかりのバイエルン・ミュンヘン、という選択肢も取り沙汰されたが、優勝争いの真っ最中というタイミングで実現はならなかった。しかしシーズン終了後には、これまでの実績にマルセイユでの手腕が加わり、“ゲレツ株”は高騰すると見て間違いない。監督はこれに乗じて駆け引きに出ているとの見方が強いが、レキップ紙は、ベルギーのトップクラブか代表の監督でキャリアを終えたいというゲレツ氏の思惑を根拠に、それまでに金銭的なバックを固めるため「マルセイユを出る」と結論づけている。