認知症の人もお客さんも笑顔「まあ、いいか」注文をまちがえるラーメン店 福岡
厚生労働省によりますと、認知症の高齢者は去年、およそ472万人と推計されています。
15年後にはおよそ584万人、高齢者の6・7人に1人が認知症になると予想されています。
増加する認知症の人への理解を深めてもらおうと、福岡県志免町の飲食店で、認知症の高齢者が接客に挑戦しました。
コンセプトは「注文の多い料理店」ではなく、「注文をまちがえる料理店」です。
福岡県志免町の「天龍ラーメン」。
店の看板メニューは、豚骨スープに豚足を加え、とろっとした仕上がりの一杯です。
「おはようございます。」
この店に21日、4人のおばあちゃんが集まりました。
4人は、1日限定でスタッフとして働くイベントに参加します。
■天龍ラーメン・森崎龍之介 代表
「きょうは間違いがありません。失敗とかはありません。」
オーナーの森崎さんが始めたイベントの名前は「注文をまちがえる料理店」です。
4人は認知症と診断されています。
森崎さんは、ラーメンを通して認知症の人と来店客、どちらも笑顔になってもらいたいと、去年からこのイベントを始めました。
■森崎代表
「まあ、いいかと許せるような寛容な気持ちというか。私たちからも歩み寄るし、認知症の人からも歩み寄ってもらって、手を取り合う社会が生まれていけばいいかなと思っています。」
開店は午前11時です。
緊張した様子で客を待つのは、78歳の村山千枝子さん。
■村山千枝子さん
「ドキドキしています。初めてなので。」
「ラーメン店での接客は初めて」と言いますが、実は、去年に続き2回目の参加です。
千枝子さんは、およそ5年前に認知症と診断され、現在はデイサービスに通う生活をしています。
■千枝子さん
Q.何歳の時に認知症になったか覚えていますか。
「(記憶が)ないです。全くないです。ゼロです。生きているだけでよいと思っております。」
【ラーメンと家族の時間】
■ラーメン店のスタッフ
「注文を取りましょうか。」
■来店客
「屋台天龍を2つ、麺は普通で。」
スタッフのサポートを受けながら、順調に注文を記入しますが。
■来店客
「ぎょうざ10個入りを1つ。」
■ラーメン店のスタッフ
「ここにぎょうざって書きましょうか。」
千枝子さんが書いたのは「りょうざ・1人前」でした。
■千枝子さん
「下手くそで、すみません。」
■来店客
「初めてでしょ。それなら、しょうがない。」
そう、ここでは間違えてもいいんです。
■来店客
「徐々に慣れないと大変だと思うよ。私もできないもん。」
「ゆとりを持って、ゆっくり話を聞いてあげて、ゆっくり話してあげたら少しは通じるのかなと。」
1日限定スタッフの最年長は、88歳の田中京子さんです。
■田中京子さん
「お水どうぞ。」
■来店客
「ありがとうございます。」
4年前に認知症と診断されました。
正午すぎ、京子さんを励まそうと、娘の満美子さんと、孫のくるみさんが来店しました。
■京子さん
「麺の硬さは?少々お待ちください。」
■娘・満美子さん
「去年よりもさらにできなくなっていることがあって。でも、一生懸命、頑張っている姿を見て。」
■京子さん
「お待たせしました、どうぞ。」
濃厚なラーメン一杯と、家族の時間を楽しみました。
■京子さん
「みんなと会って、おしゃべりができることがね。」
おばあちゃんたちの勤務時間は、およそ3時間です。
最初は緊張していた千枝子さんも、徐々に笑顔が増えました。
■村山千枝子さん(78)
Q.上手に書けていましたよ。
「そうなんですか。」
Q.働いてみてどうでしたか。
「楽しかったです。」
接客中の笑顔は、おばあちゃんたちの記憶には残らないかもしれません。
けれど、お互いに「まあ、いいか」のゆとりある心が、人々を笑顔にします。その一瞬が大切です。
※FBS福岡放送めんたいワイド2026年9月22日午後5時すぎ放送
