従業員が電話越しに怒鳴られている。理不尽な要求を受けた本人は、翌日も同じ現場に立たなければならない。そんな状況に、経営者や上司は何ができるだろうか。
 
脱・税理士の菅原氏が取り上げるのは、この10月から始まるカスタマーハラスメント対策の義務化である。従業員が1人でもいる企業は対象になり、社内でルールを定めていなければ違法とみなされるおそれがあるという。大企業だけでなく、小さな事業所でも例外ではない。従業員から訴えられる可能性まで指摘されるほどだ。
 
動画では身近な事例が次々に挙がる。タクシーの車内、飲食店のレジ、ドライブスルー。箸だけ出されて憤慨した客の話には思わず笑ってしまうが、どこからが許されない言動なのかという線引きの難しさも同時に伝わってくる。菅原氏自身も、社員が客から激しく責められた際に自ら先方へ足を運んだ経験を持ち、駐車の仕方にまで気を配ったという。
 
カスタマーハラスメントに当たるかどうかは、複数の条件を満たすかで決まるという。暴言や長時間の居座りに加え、SNSでの晒しをちらつかせる脅しや無断撮影、個人情報の詮索まで、示される例は現代的だ。商品の入れ忘れをめぐる対応のように、判断の分かれる場面も少なくない。ただし、店側にも一定のミスを織り込まざるを得ない事情があり、客と店の双方の立場が交錯する。
 
最も深刻とされる業種の実情や、対策を怠った企業に待つ結末も語られる。さらに、ルールの周知は働く側だけでなく客の側の振る舞いにも及ぶのか、という視点へと話は進んでいく。
 
「お客様は神様」という言葉が当たり前だった時代は終わったと語る場面も見られ、企業にも従業員にも意識の切り替えが欠かせない。従業員が独断で客のもとへ向かうことの危うさや、義務の中身にどこか曖昧さが残る点にも、率直な言葉が交わされる。
 
従業員を抱える経営者や、職場で強い言葉に心をすり減らした経験のある人にとって、視野が広がる内容だ。では、施行を目前にした企業は、何をどこまで決めておけばよいのか。その準備の輪郭が、動画の焦点となっている。

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