映画「沖晴くんの涙を殺して」広瀬アリスさん 「悲劇のヒロインにならないで」監督の助言で挑んだ余命1年の教師役

広瀬アリスさん=篠塚ようこ撮影
額賀澪さんの長編小説『沖晴くんの涙を殺して』(双葉文庫)が同名で映画化され、10月2日に全国公開されます。本作で、余命1年を宣告され故郷に戻ってきた音楽教師・踊場京香を演じる広瀬アリスさんに、お話を聞きました。(文:かわむらあみり、写真:篠塚ようこ)
あらすじ末期の乳がんを患い余命1年を宣告され、治療しないことを選択し故郷の瀬戸内海の島に戻ってきた音楽教師の踊場京香(広瀬アリス)。祖母(根岸季衣)の営むカフェを手伝いながら、母校の合唱部の指導をすることになり、そこでいつも笑顔を絶やさない不思議な高校生・志津川沖晴(木戸大聖)と出会う。彼は津波に流されたときに死神に「喜び」以外の感情「嫌悪・怒り・哀しみ・恐れ」を奪われていたが、ある事件をきっかけに失われた感情のひとつがうっすらと顔を出し始め、余命わずかな京香と、感情を失った沖晴の、感情を取り戻す不思議な日常が始まる。
©2026 額賀澪/双葉社「沖晴くんの涙を殺して」製作委員会
人間味あふれるストーリー チャレンジングな役柄ーーまず原作を読んだ第一印象から教えてください。
「死神」というワードや、「死神」に喜び以外の感情を取られたという展開に、ファンタジー要素が強い印象を受けました。一方で、きれいごとだけでは生きていけない世の中で、悩みや葛藤と向き合いながらみんなが生きる姿をとてもリアルに描いていて、人間味あふれるストーリーだと感じました。
私は「京香」という役を通して作品にフォーカスしがちですが、京香のように日々を大切に思って生きられたら……と自分自身の生き方についても考えさせられました。
ーー京香は余命1年と宣告され、治療しないことを選択し、故郷の瀬戸内海の島に戻った音楽教師です。役作りにおいて意識したことや工夫したことはありますか。
死はとても重く悲しいものなので、最初はどうしても悲観的なお芝居になっていましたが、監督から「悲劇のヒロインにならないでほしい」と言われ、悲しさを前面に出さないように意識しました。京香には刹那的な部分や儚さのようなものがないんです。余命をどのように生きるかと考えると、いつまでも落ち込んではいられない心境に至るのではないかと思いました。だからこそ、沖晴にも普通に接することができ、むしろ感情を失った彼のことを救ってあげたいとお世話までしてしまう……。チャレンジングな役柄だと思いました。
ヘアメイク:会川敦子 スタイリング:椎名倉平
ーー生と死がテーマになっていますが、どこか爽やかで優しい肌触りの映画だと感じました。
死に関するシーンといえば、「死ぬなー!」と悲劇的になったり、恋人同士が死ぬ間際に愛を確かめ合ったり、ドラマチックに描かれることが多いのではないかと思いますが、この映画では京香と沖晴が死の話をしている時もほぼ日常会話のような雰囲気。死のシーンはあえて淡々と描かれ、あまり重くならないようになっています。死は意外と身近にあるもので大げさに見せるものではないのかもしれないなと……。監督が死を悲劇的に描きたくないという思いが理解できました。
ーー沖晴役の木戸大聖さんと共演していかがでしたか?
以前から繊細な演技が魅力的な方だと思っていて、いつかご一緒したいと思っていたので、共演できてうれしかったです。木戸さんの明るさにすごく助けられました。初共演でしたが安心感がありました。普通に会話するシーンでの間の取り方や雰囲気作りが絶妙で、感情を爆発させるときの瞬発力もとにかくうまいなと思いました。年齢は私とそんなに変わらないのに、木戸さんは制服がとても似合うんです。
ーー瀬戸内海の風景も物語にとても合っていました。
東京では撮れない景色ですよね。緑がビビッドに広がっていて、海や空は青い。しかもほとんど人を見かけないという贅沢なロケ地でした。映画のシーンの撮影が終わると、撮影スタッフはカメラを持ってダッシュして、インサート用にずっと景色を撮っていました。そうやって撮ったきれいな景色がこの映画にはちりばめられています。
もし「死神」と契約するとしたら、どんなことを?ーー死神と契約する話が出てきますが、もし死神がいて、契約するとしたら、何を契約しますか?
我が家には犬が3匹いるのですが、先に犬の寿命が来てしまいます。犬を見送るのは悲しくて寂しすぎるので、犬の寿命を人間と同じにしてもらいます。同じ寿命になるとみんなが幸せになると思います。
ーー最近のお気に入りの本についてもうかがえますか。
漫画が大好きなんです。今は再び『呪術廻戦』(芥見下々著、集英社)を読んでいます。切なすぎる展開に見入ってしまって、友情を感じさせる同じところではいつも泣けてしまって……。何度読み返しても飽きません。同じシーンや好きなキャラクターを見てはずっと泣いています。
ーー『呪術廻戦』で好きなキャラクターは?
ヴィラン(悪役)の「夏油傑(げとうすぐる)」と「伏黒甚爾(ふしぐろとうじ)」です。『呪術廻戦』に限らず他の漫画でもヴィラン側のキャラクターが好きです。
ーー『呪術廻戦』は「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載されていましたが、掲載されている漫画はいずれも友情や絆が心に刺さる作品が多い印象です。
そうなんです。以前読んでいた時は「バトルシーンがあれば満足」という気持ちでしたが、最近は友情や愛や絆という人生において大切なテーマと思えるものがすごく心に刺さるようになって、私も大人になったなと思います(笑)。好きな漫画やアニメに出会うと「日本に生まれてよかった」とつくづく実感します。日本の漫画は圧倒的にクオリティが高いと思います。
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漫画が好き その世界に没入できるのが読書の喜びーー普段からよく書店に行かれるのですか。
TSUTAYAなどによく行きます。定期的に行って、何があるのか、今はどんな本が売れているのかを偵察しています。少し前に『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博著、集英社)の最新刊39巻が発売されたので、それ以前の37巻と38巻あたりから読み直して、もう一度『HUNTER×HUNTER』への気持ちを作ってから、39巻を読みました(笑)。
ーー読書の醍醐味はどんなところにありますか?
その世界に没頭できる喜びです。仕事で演じる役のセリフがなかなか覚えられなかったり、煮詰まったり、そういう時はお風呂で湯船に浸かりながら漫画を読み、一度違う世界へ行き、現実逃避することでリフレッシュします。そうすると再び頑張ることができます。また、就寝前に漫画を読む時間があると、贅沢なひとときだと感じます。
お話を聞いた人広瀬アリス(ひろせ・ありす)1994年生まれ、静岡県出身。2008年より活動を開始。2010年、東海テレビ制作昼ドラ史上、最年少のヒロインに抜擢される。NHK連続テレビ小説「わろてんか」、ドラマ「探偵が早すぎる」シリーズ(日本テレビ系)、「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」シリーズ(フジテレビ系)、「全領域異常解決室」(フジテレビ系)などに出演。2024年、国連WFP協会親善大使に就任。アニメーション映画「トイ・ストーリー5」では新キャラクター・リリーパッドの日本版声優を担当した。
インフォメーション「沖晴くんの涙を殺して」10月2日(金)全国公開 ※9月18日(金)広島先行公開
出演:広瀬アリス、木戸大聖、満島真之介、北乃きい、戸田菜穂、根岸季衣
原作:額賀澪『沖晴くんの涙を殺して』(双葉文庫)
監督:矢崎仁司
脚本:朝西真砂
主題歌:TOMORROW X TOGETHER「Silence」(ⓟ 2026 BIGHIT MUSIC)
劇中曲:詩・谷川俊太郎 作曲:尾崎世界観(クリープハイプ) 「生きる」
配給:彩プロ
2026年/日本/カラー/ビスタ/DCP/5.1ch/123分/映倫:G
©2026額賀澪/双葉社「沖晴くんの涙を殺して」製作委員会
公式サイト:https://okiharu-movie.jp/
公式X・Instagram・TikTok:@okiharumovie
