脳科学者の茂木健一郎氏が自身のYouTubeチャンネルで「この宇宙と、私たちという存在を、どう理解するか?」を公開した。動画内で茂木氏は、大規模言語モデル(LLM)の進化を踏まえ、これまでの物理学的な「因果的」アプローチにとどまらない、「意味論的」なアプローチによる新しい宇宙理解の必要性について提言している。

茂木氏は、大規模言語モデルが隆盛して以降、「世界の捉え方が変わってきているように思う」と指摘し、議論をスタートさせた。これまで宇宙や世界に対するアプローチは、ビッグバンやインフレーションといった初期状態から方程式に沿って変化していく「物理学的・因果的な捉え方」が主流であった。しかし茂木氏は、陽子や電子の質量、重力定数といった宇宙のパラメータが「たまたまそうなっている」というstring landscape理論の概念などに触れ、「この宇宙って何なんですか」という意味論的な理解が求められているのではないかと問題提起を行った。

具体的な事例として、茂木氏はDeepMind社が開発したタンパク質の立体構造予測AI「AlphaFold」の功績を紹介した。従来の物理学的なシミュレーションでは「プロセスを記述するって、まあキツイ」と限界を指摘する一方、AlphaFoldはアミノ酸の1次配列から3次元構造へ途中経過なしで一気に写像すると説明。「信頼度が低いところっていうのは、タンパク質の中でも動き回っているところ」とダイナミクスとの対応も示唆されており、この意味論的なアプローチが極めて有効であると語った。

さらに茂木氏は、星座の成り立ちやオーロラを祖先の魂とする古代の神話などにも言及し、「迷信とか神話とか言われてきたんだけど、ある意味では自然言語によってこの世界を意味づけるという一つの試み」であったと独自の見解を披露した。動画の結びでは、自然言語によるプログラミングともいえるプロンプトエンジニアリングが有効性を持つ現代において、「その先にある宇宙理解って何なんだろうってことは気になって、時々考えてみます」とコメント。AIの技術的ブレイクスルーが、我々の存在や宇宙の謎を解き明かす新たなカギとなる可能性を示して、静かに余韻を残した。

チャンネル情報

一人ひとりの「個性」が活かせて、「自由」で、「創造的」な生き方ができるように、応援するような発信をしていきたいと思います。複雑な現代を生きるための、科学、社会、本、音楽、映画、文化、芸術、人間、コメディを扱う総合的な脳の教養のチャンネルです。人間の脳のこと、人工知能のこと、創造性のこと、個性のことなどを考えます。