「読解力低下」をどう考える? SNS時代の“読む”と韓国の詩ブーム

フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝の生ワイド「武田砂鉄 ラジオマガジン」(文化放送)。9月16日(水)8時台のコーナー「ラジマガコラム」では、水曜前半レギュラーの組織開発コンサルタント・勅使川原真衣が、「『PISA(国際学習到達度調査)』の結果から考える『読解力』の低下」について掘り下げる。
勅使川原真衣「今日は『読解力』について考えたいと思っています。先日『PISA(国際学習到達度調査)』の結果が発表されました。こちら、2000年から3年ごとに、15歳を対象にしたOECDが行っている『国際学習到達度調査』となっています。
『科学的コンピテンシー』『読解リテラシー』『数学的リテラシー』の3分野からテストが構成されていまして、今回は世界的に『読解力』の低下が特に目立ちました。日本も、2022年の前回の実施のときに516点だったものが503点に下がったということで。世界トップクラスなんですけど、点数はやっぱり下がっています。
“最近の若者は文章を読めなくなったんだね”という話をするのは芸が無いですよね。このコラムはそんなことしません。」
武田砂鉄「はい」
勅使川原「OECDは『読解力』について、さらに細分化して考えています。3つ挙げると、“情報を評価していますか?”という尺度とか、“複数の情報を結び付けて考えていますか?”とか、“批判的に読んで考えていますか?”と問うているんですね。
その結果でいっても、OECD全体で“文章を素早くは読んでいる。読んでパッと答えるけど間違っている”という、いわゆる『Hasty readers』という“早とちり読み”が増えているのではないか? という結果が出ていました。
これ面白いと思っていて、めちゃくちゃSNSっぽくないですか?」
武田「そうですよね」
勅使川原「“じっくり読んで考えて、分からないからもう一度戻ろうかな……”とかじゃなくて、SNS社会において“読む”ってもはや“見る”に近くないですか?」
武田「画像認識とかそれに近くなっちゃってますよね」
勅使川原「そうなんですよ。パッと見て分かった気になって、SNSの特徴として脊髄反射で反応するところまでがセットなのかな、と思います。今は“読む”ということが“見る&反応する”に近しくなっているので、今回のテーマを『読解力』にしています。
そもそも『読解力』ってなんなんですかね? 解剖するにあたって、3つの視点から考えたいと思います。
1つ目は、『韓国で詩のブームが訪れている』という視点。2つ目は、『SNSに書かれたある言葉』について考えます。3つ目は、『報道』という観点で、読解について考えてまいります。
まず韓国の詩ブームですけど、びっくりしました。韓国最大級のオンライン書店『YES24』のデータによると、2025年の韓国の10~20代の詩集の購入量は前年比51.9%増。10代だけだと97.2%増なんです。」
武田「すごい増加ですね」
勅使川原「“読解力低下だ”とか“ショート動画の時代だ”って言ってるのに、10代が詩集を買っていること。なかなか面白いですよね。
この背景は色々と分析されていまして、1つには、韓国は2024年頃から『Text Hip(テキストヒップ)』という文化が流行っています。“本を読むこと”や“好きな一説をSNSにあげること”がカッコいいと捉える文化が流行っています。つまり、SNSが本の敵ではなさそうなんです。むしろ“この文章いいよね”とか“この言葉に惹かれた”みたいなことをインスタとかにあげるわけですよ。そうするとファッションとか音楽と同じように、自分の感性を表す手段になっています。
ちなみにBTSのVさんがSNSで紹介した詩集の販売量は、前月比で450%増。めちゃくちゃ売れるんですって。SNSが詩の立派な入り口になっているのは、興味深いと思いました。
さらに韓国の現象として面白いと思ったのは、本を読むだけじゃなくて、気に入った文章を手で書き写す『ピルサ(筆写)』も若い世代で流行しているそうです。韓国の大型書店チェーンの『教保文庫』の2024年のデータによると、Z世代による筆写関連書籍の購入量は前年比の690%増。
すごくないですか? スマホで一瞬でコピーしてテキストまで拾える時代に、わざわざ手で書くんですよ。背景は色々と分析されてますけど、“短い言葉”がショート動画に慣れた世代と相性が良いとはいえ、刺激の強いコンテンツがSNSに溢れている今、ゆっくりと自分のペースで静かに含蓄のある言葉に救いを求めたいという姿勢もあるかと思います」
武田「詩の一部を書き写してSNSにアップするということは、その一部だけではすべてが説明できないわけですから。その奥行きとか前後や余白を感じさせる投稿が出ているとすれば、今のSNSのやり方と近いようでいて遠いようで。どうなんでしょうね」
勅使川原「そうなんです。良い視点ですね。“SNS時代だから短い『詩』が好まれているんですね”という説明だけでは不十分だと思います。SNSで出会った詩を読むときは、SNSの速度から一旦降りる。こういったことが既にお隣の国で起きているのは、読むことの多義性になかなか驚かされるなと思いました」
