要介護認定の調査員にはどんなことを聞かれる?当日の流れと答え方を解説

要介護認定の訪問調査は、認定調査員が本人の心身の状態や日常生活で必要な介助の程度を確認します。しかし、当日に普段より元気に動けたり、本人が困りごとをうまく説明できなかったりすると、実情を十分に伝えられないこともあります。調査員に聞かれる内容、当日の流れ、家族が準備しておきたいこと、結果に納得できない場合の対応を解説します。

監修社会福祉士:
小田村 悠希(社会福祉士)

・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。

要介護認定の調査員が自宅に来る訪問調査とは


要介護認定の訪問調査の際は、認定調査員が自宅などを訪れ、本人の心身の状態や日常生活で必要な支援を確認します。調査の目的と調査員の役割を解説します。

訪問調査の目的と当日の所要時間

訪問調査は、要介護認定の申請をした本人が、日常生活でどのくらい介助や見守りを必要としているかを把握するために行われる調査です。

市区町村の認定調査員が自宅、入院先、入所施設などを訪問し、本人や家族から聞き取りを行うほか、起き上がりや歩行、食事、排泄、認知機能などの状態を確認します。調査項目は全国共通で、心身の状態に関する基本調査74項目と、過去14日間に受けた特別な医療に関する項目などから構成されています。

調査結果は、主治医意見書とともに一次判定と介護認定審査会(二次判定)での審査に用いられ、最終的な要支援、要介護区分の決定につながります。

訪問当日の所要の目安は30~60分程度です。体調が悪い場合や疲れやすい場合は、無理をせず調査員に伝え、休憩を取りながら進めてもらいましょう。

参照:
『要介護(要支援)認定調査』(昭島市)
『第4回介護DBオープンデータ解説編』(厚生労働省)

認定調査員の立場と役割

認定調査員は、要介護認定を申請した本人について、心身の状態や日常生活で必要な介助や見守りの程度を、全国共通の基準に沿って確認する役割を担います。市町村職員のほか、市町村から委託を受けた法人や、要件を満たす介護支援専門員が担当する場合があり、認定調査に関する所定の研修を修了していることが必要です。

調査員は要介護度をその場で決定するのではなく、本人や家族への聞き取りや動作確認の内容を調査票に記録します。基本調査74項目だけでは伝わりにくい生活上の困りごとは、特記事項として記載されます。調査当日の状態だけでなく、本人や介護者から聞いた普段の様子も踏まえて、必要な情報を収集します。

調査結果は主治医意見書とともに審査され、市町村が最終的な認定を行います。

要介護認定の調査ではどのようなことが聞かれる?


要介護認定の訪問調査は、身体の動きや日常生活、認知機能、医療的ケアなどを確認します。主な質問内容と確認のポイントを解説します。

身体機能や起き上がりなど動作に関する項目

身体機能や起き上がりなどの動作に関する調査は、日常生活の基礎となる身体の動きがどの程度できるかを確認します。

主な項目は、手足の麻痺や関節の拘縮の有無、ベッド上での寝返り、起き上がり、座った姿勢の保持、両足での立位、歩行、立ち上がり、片足での立位などです。

起き上がりは、寝た状態から上半身を起こせるかをみる項目で、何にもつかまらずにできるか、ベッド柵や手すりなどにつかまればできるか、介助がなければできないかを確認します。

洗身や爪切りにおいては介助の必要性、視力・聴力は日常生活への影響も調査対象です。

調査時に一度できても、普段はふらつき、痛み、息切れなどで見守りや介助が必要な場合は、その頻度と具体的な場面を家族からも正確に伝えましょう。

食事や排泄など生活動作に関する項目

生活動作に関する調査は、暮らしのなかで行う基本的な動作で、どのような介助や見守りが実際に必要かを確認します。

主な項目は、ベッドや椅子、車いす間の移乗、室内の移動、飲み込む力、食事摂取、排尿・排便、口腔清潔、洗顔、整髪、着替え、外出頻度などです。

食事摂取においては、食べ物をお口に運び、食べ終えるまでの一連の行為に、見守りや一部介助、全介助が必要かをみます。

排尿・排便は、トイレへの移動、衣服の上げ下げ、排泄後の始末など、普段行われている介助を確認します。

外出頻度も調査対象で、過去おおむね1ヶ月の状況をもとに、1回30分以上、居住地の敷地外へ出る頻度を確認します。

失禁や夜間の介助、むせの際の見守りなどは、頻度と具体的な状況を伝えましょう。

認知機能や精神面に関する項目

認知機能や精神面に関する調査は、本人が周囲の状況を理解し、自分の意思を伝えながら安全に生活できるかを確認します。

認知機能においては、意思を伝えられるか、毎日の日課を理解できるか、生年月日や年齢、自分の名前、季節、いる場所を答えられるか、最近の出来事を覚えているかなどをみます。また、目的なく歩き回る徘徊や、外出後に自宅へ戻れなくなることの有無も確認されます。

精神・行動面は、被害的な訴え、事実と異なる話、感情の不安定さ、昼夜逆転、同じ話の繰り返し、大声、介助への抵抗などの行動の有無や頻度が調査対象です。

本人の前で伝えにくい内容がある場合は、調査員に家族だけで話す時間を設けてもらい、起こる時間帯や回数、必要な見守りを具体的に伝えましょう。

過去14日間に受けた医療やサービス利用に関する項目

訪問調査の際は、調査日までの過去14日間に受けた特別な医療も確認します。

対象となるのは、医師または医師の指示に基づいて看護師などが行う医療行為です。

具体的には、点滴の管理、中心静脈栄養、透析、ストーマの処置、酸素療法、人工呼吸器、気管切開の処置、疼痛の看護、経管栄養などが挙げられます。血圧や心拍、酸素飽和度などのモニター測定、褥瘡の処置、留置カテーテルなどの対応も確認項目です。

実施場所は自宅、病院、施設、訪問看護利用時などを問いません。

また、概況調査の際は、訪問介護、通所サービス、福祉用具貸与など、現在利用している介護サービスの種類や回数も記録されます。利用中のサービスや医療的ケアは、漏れなく調査員に伝えましょう。

要介護認定|調査当日の流れと聞かれ方の実際


訪問調査の際は、調査員が本人の動作を確認しながら、日頃の暮らしや介助の状況を聞き取ります。当日の進み方と、本人や家族への質問のされ方を解説します。

実際の動作を普段の状態を確認される場面

訪問調査の際は、寝返り、起き上がり、座位の保持、立ち上がり、歩行などについて、調査員が実際の動作を確認することがあります。

能力をみる項目は、危険がない範囲で本人に動いてもらい、手すりやベッド柵につかまらずにできるか、つかまればできるか、介助が必要かを判断します。ただし、転倒のおそれ、強い痛み、息切れなどがある場合に、無理に動作を試す必要はありません。

訪問時の玄関での出迎えなど、会話中に動作を確認できた場合は、あらためて試行しないこともあります。調査当日に偶然うまくできた、または体調不良で普段よりできなかった場合は、調査日からおおむね過去1週間のうち、より頻繁にみられる状態を踏まえて評価されます。

家族は、動作が不安定になる時間帯や必要な介助を具体的に説明しましょう。

家族への聞き取りが行われる場面

訪問調査の際は、本人だけでなく、日頃の介助を担う家族や支援者にも聞き取りが行われます。

本人が緊張して普段よりしっかり受け答えできる場合や、認知症の症状、夜間の排泄介助、転倒の危険、服薬の見守りなどを本人が十分に説明できない場合があるためです。

調査員は、食事や入浴、着替え、移動、排泄などで実際に行われている介助の内容や頻度、困りごとを確認します。

調査当日にできた動作と日頃の状態が異なるときは、調査日からおおむね過去1週間で、より頻繁にみられる状態を踏まえて判断されます。

本人の前で伝えにくい被害的な訴え、介助への抵抗、失禁などがある場合は、調査員に家族だけで話す時間をとり、いつ、どの程度起こるのかに加え、対応に必要な見守りや介助の内容も具体的に伝えましょう。

調査で困らないための準備と答え方のコツ


訪問調査の際は、当日だけの様子ではなく、普段の状態や実際に必要な介助の内容を正確に伝える必要があります。事前に困りごとや介助の頻度を整理し、本人と家族で準備しておくポイントを解説します。

日頃の様子をメモにまとめておく

訪問調査の前に、本人の日頃の様子や家族が行っている介助をメモに整理しておくと、短時間の聞き取りでも必要な情報を伝えやすいでしょう。

特に、寝返りや起き上がり、歩行、食事、排泄、入浴、着替え、服薬、認知症に伴う行動などで、できることと、見守りや介助が必要になることを分けて記録しましょう。

介助が必要になる時間帯、週に何回あるか、どのような対応をしているかも具体的に書きます。

例えば、日中は一人でトイレに行けるものの、夜間はふらつきがあり毎晩付き添いが必要などの記録が役立ちます。

原則として調査日からおおむね過去1週間のうち、より頻繁にみられる状態を踏まえて判断されます。本人の状態が日によって変わる場合も、メモをもとに普段の状況を落ち着いて説明しましょう。

できるときだけでなく普段の状態を伝える

訪問調査の際は、調査当日にできたことだけでなく、日頃どの程度できているか、どのような介助や見守りが必要かを伝える必要があります。

本人は調査員の前で頑張って歩いたり、緊張して普段よりしっかり答えたりすることがあります。一方で、痛み、疲労、時間帯、服薬の効き方などによって、動作や認知機能に波がある方も少なくありません。

調査当日の状態と日頃の状態が異なる場合、調査日からおおむね過去1週間のうち、より頻繁にみられる状態を踏まえて判断されます。

例えば朝は一人で着替えられても、夕方は疲れて介助が必要になる場合は、その時間帯、介助が必要な回数、具体的な内容を説明しましょう。

できる場面を隠す必要はありませんが、できない場面や安全のために必要な見守りも、事実に沿って伝えましょう。

本人の前で話しにくいことの伝え方

認知症による被害的な訴え、失禁、介助への抵抗、怒りっぽさ、家族の介護負担などは、本人の前では伝えにくいことがあります。

無理にその場で話そうとせず、日程調整の電話で家族だけの聞き取り時間を希望する、または訪問当日に調査員へ相談する方法があります。

認定調査においては、必要に応じて本人と介護者から別々に話を聞く時間を設けることが求められています。事前にメモを渡す方法も有効です。メモには、本人を否定する表現ではなく、いつ、どのような場面で、どのくらいの頻度で起こるか、どのような見守りや介助が必要かを事実に沿って記載します。例えば、夜間に週3回トイレへ行こうとして転倒しそうになるため、家族が付き添う、のように具体的に記載すると、調査員が必要な支援を把握しやすいです。

要介護認定|調査後の流れと結果への対応


訪問調査の後は、調査結果と主治医意見書をもとに一次判定と二次判定が行われ、市区町村が要介護度を決定します。結果が届くまでの流れと、納得できない場合の対応を確認しましょう。

一次判定・二次判定から認定結果が出るまでの流れ

訪問調査後は、認定調査票の基本調査74項目と主治医意見書をもとに、コンピュータによる一次判定が行われます。一次判定の際は、食事や排泄、移動、認知症に伴う対応などに必要な介護時間を推計し、要支援1・2または要介護1~5に該当するかを判定します。状況によっては非該当の判定が出ることもあります。

続いて、保健、医療、福祉の専門家で構成される介護認定審査会が、一次判定結果を原案として二次判定を行います。二次判定の際、特記事項は基本調査の選択根拠の確認に加え、コンピュータでは十分に反映しにくい具体的な介護の手間や頻度を検討するために活用されます。

審査会の判定を受けて、市区町村が最終的な要介護度を決定し、申請者に通知します。申請から結果通知までは原則30日以内です。

結果に納得できないときの相談先

認定結果が実際の状態と合わないと感じたときは、まず結果通知を確認し、市区町村の介護保険担当窓口や地域包括支援センターに相談しましょう。訪問調査で伝えられていない日頃の困りごとがあるのか、主治医意見書や調査内容に確認が必要な点がないかを整理できます。

認定後に心身の状態が変化し、より多くの介助が必要になった場合は、有効期間の途中でも区分変更申請を行えます。区分変更申請がされると、あらためて認定調査と審査が行われます。

手続きや判定そのものに不服がある場合は、都道府県に設置される介護保険審査会へ審査請求が可能です。申請先や期限、必要書類は自治体により案内方法が異なるため、結果通知に記載された窓口へ早めに確認しましょう。

まとめ

要介護認定の訪問調査の際は、身体機能、生活動作、認知機能、医療的ケアなどが確認されます。調査当日の様子だけでなく、普段の状態や介助の頻度を家族が具体的に伝えることがポイントです。認定結果に疑問がある場合は、市区町村の窓口や地域包括支援センターへ早めに相談しましょう。

参考文献

『要介護(要支援)認定調査』(昭島市)

『第4回介護DBオープンデータ解説編』(厚生労働省)

『II. 調査方法全般についての留意点』(厚生労働省)

『要介護認定等の実施について』(厚生労働省)

『要介護認定における「認定調査票記入の手引き」、「主治医意見書記入の手引き」及び「特定疾病にかかる診断基準」について』(厚生労働省)

『第1群身体機能・起居動作』(厚生労働省)

『第2群生活機能』(厚生労働省)

『第3群認知機能』(厚生労働省)

『基本調査及び特記事項の記載方法と留意点』(厚生労働省)

『認定調査員テキスト』(厚生労働省)

『特記事項の記載演習』(厚生労働省)

『サービス利用までの流れ』(厚生労働省)

『要介護認定に係る制度の概要』(厚生労働省)

『内閣衆質二〇八第九一号』(衆議院)

『平成21年4月から9月に新規に要介護認定を申請された皆様へ』(厚生労働省)