「スーパーでバイトしてます」…前山剛久”息をするだけで誹謗中傷される”人生でたどり着いた境地

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「死なない限り、僕への誹謗中傷は終わらないと思っています」

俳優として舞台やミュージカルで活躍していた前山剛久(35)。街を歩いていただけでSNSで晒され、叩かれる日々に「慣れた……というか、どこで何をしていても、息をしているだけでも悪く言われるんだな、と諦めました」と述べた後、続けたのが冒頭の言葉だった。

2021年12月、当時交際していた神田沙也加さんが亡くなった後、二人の関係を巡る週刊誌報道などをきっかけに、前山に対する厳しい批判や誹謗中傷が相次いだ。その後、2022年に所属事務所を退所。芸能界を引退したのは周知の通り。

表舞台から離れた時期を経て、現在はTikTokでのライブ配信や楽曲制作など、新たな形で活動を再開している。

今なお厳しい声が向けられている中、なぜ前山は再び人前に出ることを選んだのか。芸能界を離れていた時間と現在の生活、そして活動を続ける理由を聞いた。

「SNSで前山には触れるな」

「俳優を志半ばで辞める形になったので、当時はショックが大きかった。芸能活動はもちろん、普通の仕事をすること自体、なかなか考えられませんでした。

日本にいられなくなって、しばらく韓国に留学していましたが、帰国してから『もう一度、芸能の仕事をしたい』と思うようになりました。辞めてから2年くらい経った頃です。ずっと仕事をしないわけにもいかないですし、周囲にも相談していました。それで2024年に舞台の出演が決まりました」

しかし、前山の復帰が決まるや、出演予定だった舞台に批判が殺到。身の危険を感じた出演者らが続々と辞退して、公演は中止となった。再び表に出ようとする中で、自分に向けられている世間の厳しい視線を改めて感じることとなった。

周囲との関係にも変化があった。

「俳優の友達とご飯を食べているときに、『前山と連絡を取っていることをSNSに出さないよう事務所から言われている』と打ち明けられました。自分が叩かれるのはいいんです。それより、仲間に気を使わせたり、迷惑をかけていることのほうがつらくて。僕を応援してくれていることで、その方まで悪く思われてしまうのがたまらなかった。

同じようなことが何回かあって、そこで覚悟を決めました。『これからは誰も巻き込まず、全部ひとりでやろう』と。そうすれば僕以外は叩かれないわけですから。ファンクラブの運営もSNSも、いまはすべてひとりでやっています。マネージャーもつけていません。TikTokもひとりで発信するだけでバトルはしません。実際にやってみたら、僕にとっては楽だった」

現在、活動の中心となっているのがTikTokだ。

「今年4月に、一番下のD5ランクから始めました。誰にも頼らず、独学でやっていたので最初はTikTokのやり方すら知りませんでした。ファンの方が投げてくださるギフト(投げ銭)も知らなくて、『スタンプ送ってくれてありがとう!』なんて返していたくらいで」

それでも世間からの厳しい声が止むことはなかった。

「ファンクラブやYouTubeを始めたときも叩かれました。昔から応援してくださっていたファンの方はどんどん減っていると思います。キラキラしていてスキャンダルもなかった頃の僕が好きだった方を取り戻すのは正直、難しい。

でもその一方で、新しくファンになってくれた方もいます。だから今は、昔のファンを取り戻すより、僕という人間を知ってもらって共感いただけた方に応援してもらうしかないと思っています。自分の人生そのものを見てファンになってもらうしかない、と。俳優として表舞台に復帰することは諦めました。芝居は第三者が関わる仕事ですから」

芸能界に未練はない

現在の生活について話を聞く中で、前山の口から意外な事実が明かされた。

「都内のスーパーでアルバイトをしています」

俳優時代は舞台やミュージカルで活躍し、端正なルックスでも人気を集めていた前山。そんな彼が、ごくごく庶民的なスーパーの売り場に立っていれば、客に気づかれて騒ぎになりそうなものだが--。

「一度だけ店長さんに気づかれて、『いろいろ大変ですね』と声をかけられたことがあります。でも、マスクをしているからか、お客さまに気づかれたことはないですよ」

勤務中は「前山」と書かれた名札をつけ、ほかのアルバイトスタッフと同じように売り場に立つ。レジに入り、商品の品出しもするという。

「野菜もお菓子もすべて扱ってますよ。重量のある飲料の品出しが大変ですね。バックヤードも寒いですし。でも……一番つらいのは、品出しが早く終わってしまうこと。やることがなくなって、でも勤務時間が残っているという状況が一番、つらいんです」

前山が活動の軸にしているTikTokは配信開始からわずか4ヵ月で最下位ランクから上位のA1ランクまで上昇。食べるには困らないはずだが、それでもスーパーでのアルバイトを続ける理由がある。

「働いている間って、自分が叩かれていること……つらい現実を忘れられるんです。バイト中はスマホにも触れられないですし、作業に没頭している間は何ひとつ余計なことを考えずにいられる。僕がアルバイトを辞められずにいるのは、その時間が大切だからなんだと思います」

芸能界から離れた時間は、前山の仕事に対する価値観も変えた。

「同じ舞台に立っていた俳優たちが活躍している姿を見ても、悔しいと思わなくなりました。もしかしたら、叩かれすぎて、落ちるところまで落ちたからなのかもしれませんが、僕は『芸能界にいたい』のではなく、『人前に出ることが好き』なんだなって最近、気づいたんです。

何をもって『売れた』とするのかという基準も、今は曖昧ですよね。たとえば、恋愛リアリティーショーに出たインフルエンサーは有名になるし、SNSのフォロワー数も増えますけど、それは売れたってことなのか。そもそも彼らは芸能人なのか? 

以前は芸能界に戻れないことに対する悔しさがありましたが、今は芸能界という場所にこだわらず、自分のプラットフォームを作って、そこで活動していけばいいんだと思えるようになりました」

前山が自分のプラットフォームで新たに始めた活動の一つが音楽制作だ。もともと前山が芸能界に入ったきっかけは、アイドルのオーディションだった。

「ずっと歌を出したいという気持ちはあったんです。その目標に対して何をすればいいのか考えて、まず舞台で固定のファンの方についてもらおう、その先で歌を出そうと思ってミュージカルにも出演していました。ただ、自分に音楽の才能があるとは思っていませんでした。ファンの方から『前ちゃん、歌出しなよ』と言われても、どこかで格好をつけている自分もいて。

それでも芸能界引退後、レコード会社に『歌を出したい』とかけあったことがありました。前向きな返事をいただけたんですけど、バンドメンバーとか、僕に多数のスタッフが関わることになったら、また炎上して巻き込んでしまうかもしれない。そう考えて断念しました」

「微妙」だった楽曲制作

芸能界を離れたことで叶った夢もあった。前山が本格的に楽曲制作を始めるきっかけを与えてくれたのは行きつけの店の店員だった。

「店員さんがラッパーだったんですよ。その方は僕が前山剛久だということを知らなくて、曲を出したいんだと伝えると、スタジオやレコーディングの仕方、音楽の作り方などを全部教えてくれました。

以前は大手の事務所に所属していたので、何をするにもマネージャーさんとか周囲が動いてくれていました。ありがたいことだったんだなと身に沁みるとともに、自分ひとりで動くほうが話が早いし、自由で僕には向いていた」

現在は「タイプビート」と呼ばれる既成のビートを購入し、そこに自ら歌詞やメロディーなどを加えて楽曲を制作している。

「好きなアーティストの名前などで検索すると、いろいろなビートが出てくるんです。ラッパーの方たちがよくやっている方法らしいんですけど、『この方法なら最短で1日でも曲を作れるよ』と教えてもらって。感動しましたね。

たとえば、TikTokの配信が終わった後の空き時間にYouTubeでビートを探して、思いついたメロディを口ずさんでスマホで録音して……3週間くらいで3曲作れました」

曲作りはイチから学んだが、レコーディングはミュージカルに出演していた俳優時代の経験が生きた。

「いわゆる2.5次元のミュージカルをやっていた頃にレコーディングを経験していたんです。マイクの前で歌うことへの恥ずかしさもなかったので、すんなり入れた。

僕は0か100かの性格で、『これだ!』と思ったら、あれこれ考えずに全力で突き進むタイプ。もともと音楽が好きで、いろいろな曲を聴いてきたので、表現することには慣れていたのかもしれません。

実はコロナで自宅から出られなくなった頃、時間ができたので昔からの夢だった楽曲制作にトライしたことがありました。『バズらせよう』と曲を作ったのですが、試聴した当時のマネージャーさんに『微妙ですね』と言われて諦めた経緯があります。結構、ショックでした(笑)。

それが今は好きな曲を作って、ファンの方に聴いてもらえている。もちろん、自分のことをアーティストだとは思っていません。ただ、『純度100%』で自分のやりたいことをできているのが嬉しい」

活動再開を模索していた時期には、「力になろうか」と声をかけてくれる人もいた。周囲の協力を得てスタートしたYouTubeチャンネルで「盗撮男」など強烈な印象を残す役柄を演じてみたりもした。動画は再生回数を稼いだが、役柄と前山本人を重ね合わせるような反応もあり、厳しい批判を受けたという。

「後悔はしていません。仕事も恋愛も僕は常に本気、100でやってきましたから。人によって意見が違うのは当然ですしね。自分のことを一番わかっているのは自分です。だから今は、繰り返しになりますけど、自分が本当にやりたいことを、自分で一生懸命考えて、ひとりで形にしていきたいと思っています」

現在も前山に対する誹謗中傷は続いている。あまりにも長く叩かれる姿を見て、友人に心身の健康を心配されたこともあった。それでも前山は、表舞台から姿を消す道ではなく、再び人前に出る道を選んだ。

「例えば僕が表舞台から姿を消して、どこか遠くの地でひっそり幸せに暮らしていたとしても、たぶん叩く人は叩く。僕が死ぬこと以外で満足できない人もいると思う。だったら表に出よう。前に踏み出そうと」

TikTokのライブ配信中にも、アンチからコメントが寄せられることがある。悪質なコメントに対しては、「そんなこと言っちゃダメだよ」と諭すこともあるという。

「配信を観てくれてるファンの方が、アンチを注意してくれることもあります。ありがたいですよね。ここまできたら、『悪名は無名に勝る』じゃないけど、もう、前向きに捉えるしかないと思っています。僕という人間を広く知ってもらったことをプラスに変えるしかない」

今回、取材を受けた目的は「上書き」なのだという。

「TikTokライブをしていると、最近僕を知った方から『この人はなんで叩かれているの?』と聞かれることがあります。配信で初めて僕を知って、好きになってくださった方もいるんです。ならば過去から逃げるのではなく、活動を続けて、どんどんニュースになって新しい僕の情報をどんどん上書き、アップデートしていこうと思いました。

炎上したり、バッシングを浴びたことで人前に出るのが怖くなってしまう人もいます。夢を諦めてしまう人もいます。

でも、僕みたいな例があれば、『こういう生き方もあるんだ』と思ってもらえるかもしれない。生きているだけで誹謗中傷されている僕が活動を続けていくことが、そういう人たちにとっての復帰への道標になればいい。

そこに、僕がひとりで頑張っている意味があるんじゃないかな」