〈高市政権で不動産バブル終焉か〉都心マンション「3カ月連続下落」…政策金利2%超えなら“買うも地獄、借りるも地獄”に

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2012年以来、右肩上がりの上昇を続けてきた日本の不動産市場が、ついに曲がり角を迎えたのか。7月の東京都心6区の中古マンション価格は3カ月連続で下落。不動産仲介の現場では「1000万円、2000万円単位の値下げの指値が通ることもある」という。一方、市場では日銀の利上げ加速が意識され、政策金利が2%に達するシナリオも現実味を帯びてきた。金利上昇が続けば、住宅ローンを抱える購入者の負担が膨らむだけでなく、賃貸住宅の家賃にも影響が及びかねない。高市政権の積極財政と円安、その先に待ち受ける利上げによって、「買うも地獄、借りるも地獄」の時代がやってくるのか――。

【画像】政策金利上昇によって真っ先に打撃を受ける人々

市場は「現政権が続く限り、2%で収まればまだマシなほう」

国内最大手の証券会社である野村證券が8月中旬に発表した、日銀利上げシナリオの見直しが経済界で話題を呼んでいる。

「メインシナリオ」(確率60%)ではこれまで10月としていた日銀の利上げタイミングを9月と前倒しした上で、27年1月と4月にさらなる追加利上げを実施すると予測。

この場合、27 年末時点での政策金利は1.75%となる。加えて「リスクシナリオ」として、26年内に2度、27年に2度の計4度の利上げで2%も可能性としてあると指摘した。

2%で打ち止めとなればまだマシなほうだという指摘もある。第一ライフ資産運用経済研究所の藤代宏一氏は利上げの到達点であるターミナルレートを2.25~2.5%と予測する。

みずほ総合研究所の門間一夫氏は「来年以降、政策金利が中立金利レンジの上限を超えて、2.5%~3%まで引き上げられていくリスクシナリオも頭に入れておきたい」と指摘。

もはや、市場は「現政権が続く限り、2%で収まればまだいいほう」という状況を織り込みつつある。

無理してタワマンを購入していた人たちは悲惨な状況

政策金利上昇によって真っ先に打撃を受けるのが、マンションを購入していた人たちだ。仮に5000万円を35年ローンで借り、住宅ローンの適用金利が1%から1.75%へ上昇した場合、月々の返済額は14万1000円から15万9000円と、1万8000円増える計算となる。

2万円程度であればまだ耐えられるかもしれないが、ほとんど頭金を入れず、レバレッジをかけて1億円を超えるようなタワマンを購入していた人たちは悲惨な状況が待ち受ける。

今となっては遥か昔のことに感じるが、数年前まで住宅ローンの金利引き下げ競争が行われていた。当時、ネット銀行の中には0.2%台の金利を提示していた銀行もあったが、今やどこ吹く風だ。

7月の都心6区中古マンション平均希望価格「3ヶ月連続マイナス」

各行とも日銀に追随して金利を引き上げており、このペースで利上げが続けば月々の負担額が借入時から10万円増えるような層も続出することになる。

住宅ローンの返済負担の増加はマンション相場を直撃する。三菱UFJ信託銀行が24年4月に発表したリポートでは、不動産デベロッパーへの調査の結果として、住宅ローン金利が0.5%上昇した場合に「販売価格が10%以上下落する」が16%、「販売価格が10%未満下落する」が56%と、実に7割以上のデベロッパーが不動産価格の下落を予言している。

ちなみに、このリポートが発表されたのは日銀がマイナス金利を解除した直後。0.5%どころか、2%も金利が上昇すれば、どこまで下落するのだろうか。

実際、都心部では価格調整の兆しが鮮明になりつつある。東京カンテイによると7月の東京都心6区の中古マンションの平均希望売り出し価格は前月比1.7%安の1億8195万円(70平方メートル換算)と、3ヶ月連続のマイナスとなった。

港区で不動産仲介業を手掛けるA氏は「今は購入者側も様子見で、慌てて買いたいという人はほとんどいない」と話す。むしろ、「売り手側が焦っており、1000万円、2000万円単位の値下げの指値があっさり通ることもある」と話す。

家賃引き上げもハイペースで進むことが確実な情勢

もっとも、高値で買った人もいるため、バブル崩壊時のように一気に相場が下がることは考えにくい。結果として、金利が上昇する中でじりじりと不動産価格が下がり、住居費の負担だけが増えていく可能性が高いという。

「焦って買わなくてよかった」と溜飲を下げている賃貸派にとっても他人事ではない。

不動産投資用のローン金利は住宅ローンよりも速いペースで上昇しており、既に2%、3%台の負担となっているオーナーも多い。家賃を引き上げなければ採算が合わなくなるため、今後も家賃引き上げはハイペースで進むことになりそうだ。

日本では借地借家法により借主が保護されており急激な家賃の引き上げは難しいとされているが、利上げが続き赤字になるような事態となれば、貸主側も黙っていない。

「訴訟を含めた強硬手段に出るようなケースも増えるのではないか」(A氏)。

つまり、金利上昇により不動産市場は「買うも地獄、借りるも地獄」という状況が現実味を帯びてきたこととなる。

現役世代の多くがダメージを受ける状況

既にローンの返済を終えた高齢世帯や富裕層を除き、現役世代の多くがダメージを受ける状況だ。

円安や財政懸念を通じ、高市政権の政策運営が追加利上げ観測を強める一因になっているとの見方もある。

「元から期待していなかったが、ここまで無能だとは思っていなかった」

都内の大手シンクタンクで働くB氏はこうため息をつく。2025年10月の自民党総裁選前に1ドル150円弱だった為替相場は高市内閣の誕生と同時に下落を開始。7月に163円を記録した。

その後の度重なる為替介入もむなしく、貴重な外貨準備を取り崩しながらも、円高へ反転する気配はない。

円安にはトランプ米政権によるイラン攻撃や貿易収支の悪化など外的要因もあるが、B氏は「首相が円安を容認していることが最大の要因だ」とバッサリ切り捨てる。

高市首相は従前から景気を冷え込ませるとして日銀の金融政策に強い不満を持っており、就任前には「利上げはアホ」など放言してきた。失言癖はマーケットにとっては格好の餌食で、高市氏の金融・財政政策を巡る発言が、市場で円売り材料と受け止められた場面もある。

中央銀行の独立性を無視した振舞いに対する金融市場の視線は厳しかったが、それが表面化したのが7月の「骨太ショック」だ。

円安と債券安を加速させた「骨太方針」のヤバい文言

政府の経済政策の方向性を示す「骨太の方針」の原案に、「『強い経済』の実現に向けては、適切な金融政策運営が行われることも非常に重要」といった文言が盛り込まれたのだ。政府が日銀の利上げを表立って牽制する異例の事態を受け、円安と債券安が進んだ。

政府は慌てて骨太の方針から一連の文言を削除したほか、2011年以来15年ぶりとなる米国との協調介入にも踏み切った。

米国にとっても、円安が続く中で日本政府が介入の原資として米国債の売却に踏み切られることや日本の通貨危機がアジアに波及することを防ぐ狙いがあるとされる。

もっとも、米国の協力を得ただけでは円安を防ぐことはできない上、代償も大きい。米国のベッセント財務長官はCNBCのインタビューで「日銀の植田総裁が必要な措置を講じるだろうと確信している」と述べ、日銀に対し、利上げを促した。冒頭の利上げ観測は、こうした環境を織り込んだものだ。

「消費減税という財政赤字を拡大する政策を撤回しない限り、再び通貨安に振れるのは時間の問題」とB氏は語る。

「セルフ経済制裁」によって、不動産市場は曲がり角

市場では、高市政権が積極財政や減税策を撤回しない限り、円安傾向は続くという見方が大勢を占める。為替介入といった対症療法では限界があり、日銀の利上げという伝家の宝刀を連発せざるを得ないところまで追い込まれているというのが市場の見方だ。

現在、円安対策としてもっとも効果的なのは消費税減税という政策を撤回しマーケットに働きかけることだが、消費税減税を「悲願」と言ってはばからない高市首相は真逆の対応をとりつづける。

そもそも飲食料品の消費税を減税したところで小売店が値下げをするとは決まっておらず、むしろ円安によりさらにインフレが加速する可能性が高い。

政財界は様々なルートで首相官邸に働きかけているが、高市首相は「外為特会の運用。いまホクホク状態」などと耳あたりの良い経済政策に執着する。

財源もないのに消費税を減税し、産油国でもないのにガソリン価格を抑え、補助金をバラまく。その結果、待ち受けるのは通貨安とインフレによる国民の窮乏だ。

自国経済にダメージを与え続ける「セルフ経済制裁」によって、不動産市場は曲がり角を迎えている。

文/築地コンフィデンシャル 写真/shutterstock