【解説】新米が古米より安い“逆転現象”…要因は? 「大離農時代へのトリガーになるかも」生産者らからは不安の声
全国のスーパーで販売されたコメの平均価格が再び3100円台まで下がりました。こうした中、スーパーでは、今年の新米が去年のコメよりも安い“逆転現象”が起きています。経済部・農水省担当の嶋粼凜記者が解説します。
■主なコメの産地の概算金…去年より約4割安く

──新米の価格が古米より安くなる現象も見られるとのことですが、どうしてでしょうか。
その要因をひもとく上で注目したいのが、JAなどが農家からコメを買い取る際に支払う“前払い金”いわゆる「概算金」です。北海道の「ゆめぴりか」が玄米60キロで1万8000円。そして根強い人気の新潟県のコシヒカリでさえ1万8500円。どちらも去年よりおよそ4割も安くなっています。
──けっこう下がっていますね。
いわゆる“令和のコメ騒動”でコメの価格が急に高くなってしまったこともあり、政府としても価格が下がっていくだろうと予測していました。
■農水省主導で“最低ライン”価格の目安を設定

そこで、農水省が主導して“コスト指標”という価格の目安を初めて設定しました。コスト指標とは、肥料や資材の値上がりが続く中、生産者が赤字にならずコメを作り続けていけるだけの適正な価格を考えて交渉をしましょう、という“最低ライン”のようなものなんです。
それがこちら、2万535円です。
──“最低ライン”を下回ってしまっていますね。
これはあくまでも目安としての指標なので、実効力を持てなかった結果となってしまったんです。
■「コメ作りが全体的に衰退してしまう」価格下落で不安の声

──そうなると、生産者の方は不安ですよね。
はい、現場からは不安の声が多くあがっています。
JA全中のトップは「農家の皆さんが今後も持続的にコメ作りをできる生産額でなければ、コメ作りは全国的に衰退してしまう」と強い懸念を示しました。
埼玉県の大手コメ生産者・山粼さんは「大手でも先行きが見通せない」「大離農時代へのトリガーになるかもしれない」と、危機感を強めています。
さらに、来月ごろ本格化する新米の稲刈りのシーズンを迎えても、買い手のつかない新米が続出し、行き場を失ったコメが大量に発生するだろうと話しています。
■備蓄米の買い戻しは? 当初は“6月半ばの方向”も見送りに

──政府はどんな対応をしてきたのでしょうか?
政府は去年、コメの価格高騰を受けて備蓄米およそ59万トンを放出しましたが、放出した分の備蓄米の買い戻し時期については「適切に判断する」としていました。
ある農水省幹部はこの「買い戻し」について当初は、各地の概算金が決まる前の6月半ばに行う方向で話が進んでいたといいます。ところが、物価高の中、コメ価格があがることを懸念する声もあがり、政府内での調整がつかず、買い戻しは、見送られてしまったというのです。
鈴木農水相は「全国の作柄が8月末にはおおよそ分かってくる」とした上で「買い戻しを早急にしなければならない」と急ぐ方針を示しています。
■専門家“買い戻し”の「タイミング失ってしまった」

──今後買い戻しが行われれば、コメ価格にも影響はあるのでしょうか?
コメの流通に詳しい専門家は、「買い戻し」について「タイミングを失ってしまった」と指摘しています。
概算金が出そろった後に買い戻しを行ったとしても、価格への影響がどれほどあるかはギモンです。
専門家も「このままでは農家の経営に深刻な影響を及ぼし結果的に生産基盤が失われる」、その結果、またコメが足りなくなり価格が高騰する悪循環に陥る可能性もあると指摘しています。