競泳日本代表最年長の35歳・鈴木聡美「そんな怖いお姉さんじゃない」入江陵介「チームにとって不可欠」レジェンド同士の本音対談【アジア大会】
32年ぶりに日本開催となるアジア大会(愛知・名古屋)が9月19日に開会式を迎える。10代、20代の選手が名を連ねる競泳日本代表の中、唯一の30代にして、チーム最年長の35歳で代表入りしたのが鈴木聡美(ミキハウス)だ。
鈴木は50m平泳ぎの日本記録保持者で、2012年ロンドン五輪200m平泳ぎで銀メダルなど合計3つのメダルを獲得。24年パリ五輪まで3大会に出場を果たすなど、長年に渡り日本代表を牽引してきた。そんな“現役レジェンド”に話を聞いたのは、1つ年上でアジア大会TBSアスリートアンバサダーを務める入江陵介さん。入江さんも五輪に4大会連続出場し、12年ロンドン大会200m背泳ぎと4×100mメドレーリレーで銀メダルを獲得。アジア大会では2006年ドーハから5大会連続出場し、金メダル6つ、銀メダル10個、銅メダル2つを獲得した。
35歳の今なお現役を続ける鈴木と、34歳まで現役を続けた入江さん。日本代表として多くの時間をともにしてきた戦友同士による笑顔の絶えない対談となった。
若手選手からの刺激
入江陵介:(日本代表に)若い選手がどんどん入ってきて、若手の影響ってどう感じていますか。
鈴木聡美:自分に対しての活力にもなりますし、トップの選手を見て若い世代が影響を受けて上がってきてくれるんじゃないかっていう、もっと先の期待もあって。一人に背負わせるのは酷かもしれないですけども、成長ぶりっていうのは非常に楽しみですね。
入江:今回の代表は高校生が多いじゃないですか。その中で最年長でいらっしゃる。
鈴木:特に自分から提言するわけではないですけども、「私は怖くないんだよ」っていうことを見せながら、気楽にお話していけたらなって思っています。聞かれたら何かアドバイスができればというくらいの立ち位置でいようと思っています。
入江:鈴木選手の力はすごいですし、チームにとって不可欠なものだと思うので、どんどん話していってほしいなっていう。きっと若手の選手は話したことがないと、畏れが多かったり。
鈴木:食事の席でそういう話になって。「聡美さんだ、どうしよう」みたいな。「そんなことないよ、ただゲームが好きなだけなんだよ」っていう。「そんな怖いお姉さんじゃないもん」とか言って(笑)ちょっとずつアピールはしていってます。
入江:腹立つでしょ、最年長、最年長って聞かれるの。
鈴木:あの時は嫌ですね、泳いでる時に実況の方ですかね「最年長!最年長!」って。名前が連呼される分は全然いいんですけど(笑)
入江:泳いでいる時は関係ないもんね。
鈴木:そうなんですよ。「最年長の!最年長の!」って言われると、「いや、もう分かった!」っていう(笑)
母校・山梨学院大学を拠点にほぼ毎日トレーニング
入江:どれくらいの頻度でトレーニングされているんですか、水中とウェイトと。
鈴木:水中は週7回、ウェイトは週3回ですね。月水金とウェイトをやって、火木土とケアが入るので、そこは体を壊さないことを重点的にやっていますし、その分トレーニングもしっかり積んで、しっかり落としてっていう繰り返しを行っているので、それが体を壊さないサイクルになってるのかなと思いつつも、金曜日が一番しんどいですね(※取材当時)。
入江:なぜですか?
鈴木:金曜日に早朝練習があって、お昼にウェイトをやって、午後練習をやって翌朝の土曜日に朝練習をやって、ようやく1日半オフなんですよ。そこが一番きついです。
入江:何でそんな練習に耐えられるんだろうって。歳を重ねるとしんどいじゃないですか。そういった中で50mから200m全てをずっと続けられているってのは、どういったメンタルなんですか?
鈴木:やらなきゃいけないしなって(笑)50mも100mも200mも、どの種目も全部に活きているので。どれかが欠けてしまうと弱くなるというか、上がってこられないなっていうのが顕著に現れているんです。200mなんて50mのラップの積み重ねなので、0.何秒ずれると1秒2秒と遅くなってしまうんですけど。トップスピードでいかに貯金を稼げるか。でも、200mの練習をやっているから落ちることはまずない。じゃあ100mの後半も大丈夫。50mのキレの動きがあれば200mの前半に活かせるよねとか。後半でもそのキレを持っていけば、上げることができるよねって。
32年ぶりの日本開催となるアジア大会
入江:アジア大会の印象はどうですか?
鈴木:記録だけで見ると本当に世界大会と変わらないので、気分的にはオリンピック感のあるような、選手村が設けられてたり、そういった雰囲気が味わえるのはアジア大会ならではと思うので、非常にいい経験にはなるんじゃないかと思います。
入江:中国は50m平泳ぎでアジアレコードを出していて、すごい記録でしたけども。そういったライバル選手もいますけど。
*2024年、カタール・ドーハで行われた世界選手権の女子50m平泳ぎ決勝で中国の唐銭婷(トウ・センテイ)が29秒51のアジア新記録を樹立。
鈴木:いや〜勘弁してくれ〜(笑)って思いながらも、まだ29秒台に入れていないので。私もその世界観を体験したいという目標があることはすごくありがたいことです。勝ち負けは今の段階では難しいと思うんですけれども、どれだけ近づけるかはチャレンジしていきたいですし、その50mのスピード感があれば100mもいい勝負ができるんじゃないかって思うので、頑張りたいと思います。
6月上旬に行われた日本選手権。鈴木は100m平泳ぎで2位に2秒以上の差をつけて大会3連覇を達成。200m平泳ぎも制し、50m平泳ぎも優勝して大会9連覇。50m、100m、200mの3種目で3冠を達成、圧倒的な強さを見せつけた。
入江:(アジア大会では50m、100m、200mでのエントリー。)目標、意気込みを聞かせてください。
鈴木:50m、100mでは自己記録以上、日本記録(50m:30秒10、100m:1分05秒19)ですね。日本記録をしっかりと狙って。金メダルは難しいかもしれないですけれども、金メダルを取るようなつもりでアジア大会はしっかりと頑張っていきたいと思います。
入江:日本開催のアジア大会、楽しみですか?
鈴木:楽しみですね。競泳は名古屋じゃないっていうのは、ちょっと寂しさはあるんですけれども。(会場の)東京アクアティクスセンターは広いですし、観客もたくさん入るということで、普段以上にたくさんの方に来てほしいという思いの中で、国内の大会は経験ありますけど、世界大会は多分初めてじゃないかなと思うので。
■鈴木聡美(すずき・さとみ)
1991年1月29日、福岡県出身。2012年ロンドン五輪に初出場し、200m平泳ぎで銀メダル、100m平泳ぎと4×100mメドレーリレーで銅メダルを獲得。16年リオ五輪にも出場したが、21年東京大会は代表落選した。23年の世界選手権女子100m平泳ぎでは、14年ぶりに自己ベストを更新し、24年パリ五輪は史上最年長の33歳で代表入りを果たした。9月に開催されるアジア大会には代表最年長の35歳で出場する。
■入江陵介(いりえ・りょうすけ)
1990年1月24日、大阪府出身。2008年北京五輪から4大会連続出場し、12年ロンドン大会では200m背泳ぎと4×100mリレーで銀メダル、100m背泳ぎで銅メダルを獲得した。男子背泳ぎの第一人者として日本競泳界をリードし、24年4月、34歳で現役を引退した。9月に開催されるアジア大会ではTBSアスリートアンバサダーを務める。
