(※写真はイメージです/PIXTA)

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大学全入時代と言われる昨今、「とりあえず大学へ行く」という選択肢が一般化する一方で、親の世代には親なりの切実な本音があります。我が子を思えばこそ、親子でぶつかることもあるようです。事例をご紹介します。※事例の人物名はすべて仮名です。

高校2年生の娘が大学に行きたい理由

マモルさん(50歳)の娘・サキさんは、高校生。昔から勉強にあまり興味がなく、高校もあまり偏差値が高くない学校を「制服が可愛い」という理由で選びました。成績も学年で中の下あたりです。

そんなサキさんが高2の秋になり、「アパレル業界で働きたいから、服飾やファッションビジネスが学べる4年制私立大学に行きたい」と言い出しました。

マモルさんが、サキさんの志望している4年制の私立大学を調べてみると、ここ数年定員割れが続いているところであることがわかりました。「実質的に誰でも入学できるんじゃないか」。そうマモルさんは思いました。当のサキさんが、受験勉強をしている様子はほとんど見られません。

「アパレル業界を目指すなら、現場での実務や、2年制の短期大学、服飾系専門学校でもいいはずです。それなのに、4年間の学費だけで約450万円、さらに一人暮らしの費用までかけて行く意味があるのか……」

共働きの妻は娘の進学に賛成していますが、マモルさんにはどうしても納得がいきませんでした。

苦労して国立大を出た父

マモルさんが娘の大学進学を厳しく考える背景には、自身の経験があります。マモルさんは必死に勉強し、国立大学へ進学しました。親に頼らず、アルバイトと奨学金を頼りに学費と生活費をやりくりして卒業しています。苦労して大学を出たマモルさんからは、サキさんの姿勢は甘い考えに見えます。

そこでマモルさんは、サキさんに対して「どうしても大学に行きたいなら、いまから必死に勉強して、国公立大学を目指すこと。そして、実家から通える範囲の短期大学か専門学校に進学すること」と宣言しました。

これに対し、サキさんは猛反発。その最大の理由は、長男(サキさんの兄)の存在でした。

娘の反論「お兄ちゃんだけずるい」

「お兄ちゃんは私立大学に行ってるのに、私だけ駄目だなんておかしい。それ、兄妹差別だよ」

サキさんはそう訴えられ、マモルさんは「兄妹差別」という言葉に少し怯みました。しかし、マモルさんには長男を私立大学に行かせた明確な理由があったのです。

長男は高校時代、国立大学を目指して必死に受験勉強に励んでいました。結果的に不合格となり第二志望の私立大学に進学したものの、その大学は偏差値も高く、専門領域を学べる学校だったからです。親として「努力の過程」と「学ぶ明確な目的」を確認できたからこそ負担を決めました。

貯金があっても「出さない」選択

現在のマモルさんの家庭には、余裕がないわけではありません。マモルさん自身の月収は48万円(賞与別)、一定の貯蓄もあります。しかし、だからといって無条件に娘の大学進学費用を出すつもりはありませんでした。

「老後資金を考えると、将来子どもたちに金銭的な迷惑をかけないためにも、親の蓄えを安易に切り崩すわけにはいきません。また、奨学金を借りさせて進学させるという選択肢も反対です。アパレル業界の平均的な給料水準を考えると、卒業後に数百万の奨学金返済を背負わせることは、結果として娘自身を苦しめることになります」

サキさんの卒業後の返済リスクや、自分たちの老後資金まで見据えたうえでの判断でした。

親がどこまで教育費を負担するか

大学進学にかかる費用は年々増加しています。全国大学生活協同組合連合会の2024年調査によると、入学前に必要な費用は下宿生で217万円、自宅生でも153万円にのぼります。授業料の値上げが続くうえ、パソコンや自宅で授業を受けるための環境整備など、学習に不可欠な機器の購入も当たり前になりました。

こうした教育費の高騰背景があるからこそ、親が「どのような基準で、どこまで教育費を出すのか」という明確な軸を持つことが、家計防衛と子どもの将来のためにこれまで以上に重要となっています。

親から見れば「努力や目的に応じて費用を出す」という基準は一貫しており公平な判断です。しかし子ども側から見ると、「兄は私立、妹は不可」という事実だけが切り取られ、「機会が不平等だ」と捉えられがちです。

また、定員割れの私立大学に4年間通うコスト(学費約450万+生活費)と、得られるスキル・生涯賃金のバランスを冷静に試算することは重要です。アパレルや服飾関係のように専門学校で実践的に学べる業界であれば、実家通いの専門学校や短大という選択肢は合理的な判断といえます。

さらに、子どもの希望をすべて叶えた結果、親が老後破綻して子供の負担になるケースは少なくありません。「親が自立した老後を送ること」自体が、長期的には子どもへの援助となります。

高校生の子どもに「差別」ではなく、親の考えを少しでも理解してもらうには、感情論ではなく、具体的な学費・将来の収支シミュレーションを見せながら対話を重ねていく必要があるでしょう。