(撮影:前康輔)

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2026年8月10日放送の『徹子の部屋』に、坂本美雨さんが登場。16歳で顔と名前を伏せてデビューし、大ヒットを記録した舞台裏や、9歳での突然のNY移住、家族のことなどを語ります。今回は、坂本さんが子育てについて語った『婦人公論』2022年11月号の記事を再配信します。*****父は音楽家の坂本龍一さん、母はシンガーソングライターの矢野顕子さんという音楽一家に育ち、自身も音楽活動や執筆、演劇など多方面で活躍している坂本美雨さん。東京新聞で2016年から連載されていた子育てエッセイに、大幅な書き下ろしを加えた書籍『ただ、一緒に生きている』が刊行されました。書き下ろしエッセイで子育てへのより深い思いを書くうち、自分の幼少期を振り返る必要性を感じたそうで――(構成:山田真理 撮影:前 康輔)

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温かくて、愛ある景色

今年7歳になる娘が誕生してしばらくした頃、新聞にエッセイの連載をすることになりました。その7年分の記録を1冊にまとめたのが本書です。その過程は、自分の子ども時代や、両親(編集部注・父は音楽家の坂本龍一さん、母はシンガーソングライターの矢野顕子さん)とのかかわりを見つめなおす時間でもありました。

私は日記も三日坊主なので、月1回の連載というペースはちょうどよかった(笑)。無理なく子育ての記録を残しておける良い機会と思い、大事に書き綴っていきました。

ただ、幼児期って、1日単位で変化していくので、月1だと「何々ができるようになりました」といった物理的な成長は、とても追いきれない。それよりも、その時どきで一番心に残ったこと、忘れたくない瞬間をちゃんと見つめて文章にしたい。そう考えながら、毎回の原稿を書きました。

たとえば、娘が4歳の時、歯医者さんでもらった風船の糸が切れて空に飛んでいってしまったことがありました。娘は最初、「またもらえるし」と何でもないふりをしたけれど、「ちゃんと持ってたのにね」と声をかけると、私の体に顔をうずめて「きれいだったのにー!」と泣き出したのです。

自分のせいだから我慢しなきゃと思ったり、「大したことない」と虚勢を張ってみたり、でも本当はすごく悲しかったんですよね。

子どもって、感情をすべて素直に出すと思っていたのに、こんなにいくつもの思いがからみあって表に出るのかという驚きと、いじらしさ。その時は私も一緒になって大泣きしてしまって、娘に「もう大丈夫だって〜」となぐさめられてしまいました。(笑)


『ただ、一緒に生きている』(光文社 1760円)

長文の感想に励まされて

そんな泣き虫でいつもおたおたしている私と、正義感が強くてしっかり者の娘。連載では同じ子育て世代からの共感のお手紙はもちろん、子育ての大先輩がご自分の体験と照らし合わせて寄せてくれる長文の感想に、励まされてきました。

特に嬉しかったのは、ある女性が「将来、子どもを持ってみるのもいいんじゃないかと思えた」と書いてくれたこと。

子育てで、失敗しちゃいけない、完璧なお母さんを目指さなきゃいけないというプレッシャーが、日本の社会では強い気がします。でもそんなのは無理だし、私は最初から諦めている。むしろ自分の価値観だけで育てるのは怖いので、できるだけ周りに頼って育てられたらいいなと思っています。

単行本にまとめるにあたって、理論物理学者の佐治晴夫先生に対談をお願いしたのは、宇宙というより大きな世界から子育てを俯瞰する視点が欲しかったから。

「子どもは命の循環」「子どもは私有物ではなく、一時預かりの存在」といった、宝物のような言葉をたくさんいただきましたし、天文台で娘に月や星を見せてくださったりもしました。

自分の幼少期を振り返って

書き下ろしエッセイで子育てへのより深い思いを書くうちに、なぜこういう育て方、愛し方なのか、自分の幼少期を振り返る必要性を感じました。特に両親とのことは、一回ちゃんと向き合わねばならぬと覚悟を決めて。書き出すまでにはかなり勇気が必要でしたね。

書き進めるうちに思い出すこともたくさんあり、それはぱーっと目の前が開けるというより、深い森をかき分け、かき分け進んでいくような、けっこう大変な作業でした。

でもその先に見えたのは、すごく温かくて、愛のある景色で。たとえば東京の家には両親の仕事仲間がいつもいて、音楽的にはすごく才能があっても社会人としてはダメな人とか(笑)。でも魅力的でかっこいい大人がたくさんいた。

私も子どもが生まれてすぐの頃から、周りの人たちに協力してもらいながらレギュラーラジオの収録現場や自分のコンサート会場にも娘と一緒に行っていました。それは、「あの頃が楽しかったし、自分の人生にも良い影響があったと思ってるからなんだな」と再確認できました。

音楽と向き合う両親に対して幼少期に抱いていた正直な気持ちや、思春期の頃の父からの告白など、ここまで家族についてきちんと書くのは初めてでした。両親には「書いてもいい?」と一応お許しはもらって。人間くさい魅力が伝わるように書けたらいいなと思っていました。

母からは全部を書き終えた後に、「よく書けてるじゃん」と、一言いただきました。(笑)

娘のおかげで出会ったこと、気づいたことを、本書を通じて皆さんにもお伝えできたら幸せです。