●パチスロとギャラ飲みで生計を立ててきた男
フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00〜 ※関東ローカル)で2日に放送された「クズ芸人の生きる道 前編 〜58歳 恋も笑いも崖っぷち〜」。パチスロとギャラ飲みで生計を立てるお笑い芸人・小堀敏夫の近況を追った作品で、9日には「後編 〜58歳 コンビ解散と運命の恋〜」が放送される。

芸人としての相方を失い、人生の相方と出会った小堀。約6年にわたってカメラを向けてきた朝川昭史ディレクター(NEXTEP)が、これまでのシリーズでは見たことのない小堀の変化を語った――。

小堀敏夫

○認定こども園の子どもたちの前で見せた意外な姿

小堀が番組に初めて登場したのは、2020年放送の「52歳でクビになりました。〜クズ芸人の生きる道〜」。芸を磨く努力をせず、パチスロやギャラ飲みに明け暮れ、所属していたワハハ本舗をクビになった姿が描かれた。昨年1月の放送では、老後への不安から「お金持ちの女性と結婚して養ってもらいたい」と婚活に乗り出すも、人生は行き詰まったままだった。

シリーズ第3弾となる今回は、初の前・後編。2日に放送された前編では、ラーメン店での修業に初日から遅刻し、寺での修行もわずか2日で逃げ出す一方、芸人として『キングオブコント』に挑戦。さらに、後輩芸人を通じて年下女性との思いがけない出会いが訪れた。

ガッポリ建設で『キングオブコント』に挑戦 (C)フジテレビ

「出家したい」と言い出した小堀が挑んだ寺での修行は、休憩もほとんどなく、座禅と食事を繰り返し、朝は5時半起床という厳しいもの。案の定、小堀は途中で逃げ出してしまった。

しかし、住職は短い時間で小堀の本質を見抜いていたという。朝川Dは「住職は小堀さんのことを結構認めていて、“あんたには人徳があるね”、“その人徳をうまく生かさないとね”と言っていたんです」と振り返る。たしかに、ギャラ飲みで知り合った経営者をはじめ、なぜか周囲からかわいがられている。

出家してみた小堀敏夫 (C)フジテレビ

もう一つ、小堀の意外な一面が表れたのが、ギャラ飲みのつてでアルバイトさせてもらった認定こども園で子どもたちと触れ合う場面。無邪気な小堀に園児たちは次々と飛びつき、わずか1日半ほどの滞在にもかかわらず、別れ際には「行かないで」と泣き出す子もいたそうだ。

小堀自身は当初、「子どもは嫌い」と話していたものの、次第に楽しそうな表情を見せるようになった。

これまで番組で描かれたのは、遅刻や借金、約束破りといった“悪い部分”ばかりだったが、住職と子どもたちとの出会いによって、朝川Dは「いい部分も若干あるんだな(笑)」と気づかされた。

○相方・室田稔から「最後まで面倒見てください」

昨年末の『ザ・ノンフィクション』4時間特番の収録本番中、長年振り回されながらも支えてきた相方・室田稔が小堀の言動についに激怒し、結成から28年を数えたお笑いコンビ・ガッポリ建設は解散することになった。

そして室田から朝川Dに、電話がかかってきた。

「“いろいろすみませんでした”というのと、“朝川さん、小堀を本当に最後まで面倒見てください”と頼まれたんです。“僕はもう何もできないので、朝川さんだけが頼りです”と言われてしまって」

室田に小堀を託された朝川Dは「番組としてこの先も追いかけていくと思うので、そういう意味では支えていけるんじゃないか」と、その思いを受け止めた。

『ザ・ノンフィクション』特番収録中に室田稔が激怒 (C)フジテレビ

●水ダウ「ザ・スベリドリームマッチ」優勝の背景に…
こうして芸人としての相方を失い、婚活に励んでいた小堀の前に現れたのが、後輩芸人を通じて連絡してきた30歳の女性だった。

突然の申し出に、小堀は当初、何かの罠ではないかと疑い、朝川Dに「ついてきてくれ」と頼んだという。だが、彼女は小堀の歩んできた人生そのものに引かれたといい、急速に距離を縮めていく。普段は人にお金を出さない小堀は、一万円札を出しておごってあげるほど舞い上がっていた。

しかし、交際を始めて1カ月後、彼女から“大きな秘密”を打ち明けられる。それは小堀にとって簡単に受け入れられる内容ではなかったが、彼はそこから逃げず、むしろ“クズ芸人”人生を変えるチャンスをつかもうとしている。

これまでも事務所からの解雇や婚活の失敗など、人生を変える機会は何度もあったが、そのたびに逃げ出し、元の生活へ戻っていた。しかし今回は違うと、朝川Dは感じている。

「小堀さんは、たぶん死ぬまでクズ芸人なんだろうなと思っていたんです(笑)。でも、ここに来て覚醒した感じがしますね。途中で音を上げると思っていたのですが、本当に彼女のことを思っていて、人は変われるんだなと思いました」

彼女と出会ってから、芸人としての意識にも変化が表れた。「本気で売れたい」と口にし、生活のためにも笑いで結果を出したいと考えるようになったという。

7月に放送された『水曜日のダウンタウン』(TBS)の企画「ザ・スベリドリームマッチ」で、モグライダーの芝大輔と即席コンビを結成すると、次々に笑いを取って見事優勝。朝川Dが「相当練習したのでは?」と尋ねると、小堀は「全然していない」と答えたというが、小堀の変化がもたらした結果でもあると感じた。

交際女性とデートする小堀敏夫 (C)フジテレビ

○「これはドキュメンタリーなんです」と胸を張れる作品に

後編では、小堀と母との時間も描かれる。息子の生き方に心を痛めていた母が、予告映像で彼女を紹介されて涙する姿が流れた。

カメラを向け始めて約6年。遅刻し、逃げ出し、誰かに頼って生きてきた小堀を追いかけてきた中で、時には「これはドキュメンタリーなのか」と言われることもあったという朝川D。

しかし今回は、「初めて小堀さんのいい部分が出てきて(笑)、やっと“これはドキュメンタリーなんです”と胸を張れる作品になったと思います」と手応えを語る。

初めて守りたいと思える存在と出会った小堀。59歳でたどり着いた“クズ芸人”の新たな生きる道を、朝川Dは今後も追っていく考えだ。