東大理三の約6割輩出の塾「鉄緑会」を買収…ヒューリックが”本当に手に入れたもの”

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2026年7月7日、ヒューリックは鉄緑会を運営する東京教育研(東京・渋谷)の全株式をベネッセコーポレーションから取得し、完全子会社化すると発表した。

買収総額は非公表だが、一部報道では数百億円規模とされる。

鉄緑会は2026年度入試で東大合格者584人(占有率20%)、最難関の理科三類では57人・占有率59%という圧倒的な実績を持つ。 

だが、ビル賃貸を本業とするヒューリックがなぜ塾を高額で買うのか。シナジーの中身を具体的に検証したい。

ヒューリックの課題は「利益の質」?

結論を先に言えば、ヒューリックが数百億円を投じて手に入れたのは「塾」ではなく、自社に欠けていた利益の質であるというべきだ。

ヒューリックのROE(自己資本利益率)は13%と、1ケタ台後半とされる不動産業界の平均より大幅に高い。

だが、その高収益は賃料の蓄積だけで成り立っているわけではない。「物件を安く仕入れ、価値を高めて売る」売却益の寄与も決して小さくない。

実際のところ、2025年12月期の最高益も、不動産価格の上昇を背景とした物件売却益も主要因のひとつだった。つまり同社の利益は、もちろん賃料に伴う堅実な収益源もあるが、打ち上げ花火に近い一過性の利益拡大も全体業績を左右するため、一定の割り引き評価を受けやすい。

そんな利益の性質を持つヒューリックの課題を解決するM&Aとして、なぜ鉄緑会に白羽の矢が立ったのか。

鉄緑会の不動産は優良か

まず「鉄緑会の不動産資産はどうなのか」という論点が浮かんでくる。しかし、結論から言えば、鉄緑会は不動産をほとんど持たないとされている。

鉄緑会はたしかに代々木・新宿という一等地に校舎が集中し、関西に数拠点が確認されているが、その多くは賃貸ビルを借りているとみられる。

つまり鉄緑会は、都心の狭い商圏に少数の校舎を構える固定資産の少ない財務基盤で事業展開している可能性が高い。

この事実は、買収の狙いを逆説的に浮き彫りにする。

ヒューリックが今回手に入れたのは「土地建物の塊」ではない。狭い坪数で、東大合格者の2割を生み、高い授業料を稼ぐ「坪あたりの収益性が桁外れに高い超優良テナント」であるといえよう。

つまりシナジーの方向は、「鉄緑会の不動産を取り込む」のではなく、「ヒューリックの不動産に鉄緑会を載せる」方向になるのではないだろうか。

都心の一等地に多数のビルを持つヒューリックが、その空間に鉄緑会という高収益・高集客のビジネスを保有することで、既存エリアの拡充や新規展開へと踏み出せる可能性がある。

ブランドと教育ノウハウは鉄緑会、箱と資本はヒューリック、という分業が成立する。

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しかし奇妙なのは、ヒューリックがこの巨額買収に踏み切ったのが、よりによって「少子化」のただ中だという事実である。子どもが減り続けるこの国で、なぜ同社は教育に賭けるのか。詳しくは後編記事〈なぜ"少子化"なのに教育に賭けるのか…ヒューリック「鉄緑会」買収で描く経常利益3000億円への道筋〉でお伝えする。

古田拓也

1級FP技能士・FP技能士センター正会員

中央大学卒業後、フィンテックスタートアップにて金融商品取引業者の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、広告DX会社を創業。サム・アルトマン氏創立のWorld財団における日本コミュニティスペシャリストを経て株式会社X Capitalへ参画。

【つづきを読む】なぜ”少子化”なのに教育に賭けるのか…ヒューリック「鉄緑会」買収で描く経常利益3000億円への道筋