世帯年収1,050万円・50代夫婦が念願のマンション購入。「賃貸とは設備のレベルが違う」「ご近所さんもいい人ばかり」と歓喜も、2年後に暗転。毎日天井を睨み、溜息を零すワケ

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人生で一番大きい買い物とも言われるのが住宅の購入。自分の家が手に入るという満足感、充実した設備など賃貸にはない魅力がたくさんありますが、結果として「悲しい買物」になるケースもあるようで……見ていきましょう。

終の棲家として買ったマンションに満足していたが…

「マンションを買ったときは、本当に“いい買い物をした”と思っていたんです」

そう話すのは、神奈川県で暮らす会社員の中村直人さん(仮名・51歳)。3年ほど前、終の棲家にと新築マンションを購入しました。しかし今、彼は「家を買ったことを少し後悔している」と打ち明けます。

中村さんは妻(50歳)と24歳の娘との3人家族です。それまで住んでいたのは駅から徒歩10分ほどの賃貸マンション。3LDKで家賃は月14万5,000円でした。

娘も大学を卒業し、教育費がかからなくなりました。世帯年収は約1,050万円、コツコツ貯めた貯蓄は2,000万円超。周囲よりは遅くなったけれど、いよいよ終の棲家を決めよう……夫婦でそう決断しました。

いくつかモデルルームを見て回り、最終的に購入したのは新築分譲マンションの6階。価格は約5,200万円、3LDK・72平方メートルの部屋です。入居の際には上下左右の住人と挨拶をし合いましたが、「ご近所さんも、すごく感じがいい」と大満足。快適な生活が続きました。

ところが、入居から2年が経った頃、状況が変わります。上の階の住人が引っ越し、数週間後、新しい家族が入居。異変に気づいたのは、それからすぐのことでした。

ドドドッ…上階からの「異音」

休日の夕方、リビングでくつろいでいると、天井からドン、ドンという音が響きます。 ドン。ドドドッ。明らかに、子どもが走り回るような足音でした。

「まあ、引っ越してきたばかりだし……」

そう思って様子を見ていましたが、音は毎日止まらず、朝早いときもあれば、夜10時を過ぎても響くことがあります。

特に影響を受けたのは妻でした。 妻は在宅で仕事をしており、家にいる時間が長く、音が聞こえるたびに天井を見上げるように。

さすがに気になり、管理会社へ相談。すると「上の階の方に、それとなくお伝えしますね」との返答。その翌日の夜には、上階の家族が「管理会社から連絡をいただいて……」と菓子折りを持って謝りにきました。

「子どもがうるさくて、本当に申し訳ありません。これから気を付けますので」。 横にいた男の子も、小さく頭を下げました。

「いえいえ、わざわざありがとうございます」

その場は穏やかに終わり、数日は静かな日が続きました。ところが、しばらくすると再び音が戻ってきました。しかし、一度謝罪に来てくれているだけに、何度も苦情を言うのは憚られます。

「今、走ってるよね。気のせい?」

妻は憂鬱な顔でつぶやきます。何をしていても、いつ音がするか気にしてしまい、していないときでも、幻聴のように聞こえることがあるといいます。対策として、騒音用のイヤーマフをつけたり、近所のカフェに行ったりするように。

娘はといえば「朝からうるさいんだもん」と恋人の家に避難するようになり、家に寄り付かなくなりました。

賃貸だったら…よぎる後悔

最近、妻はこんなことを口にするようになりました。

「賃貸だったら、もう引っ越してたかもしれないね……」

マンションそのものに不満があるわけではありません。立地も設備も満足しています。 しかし、人の問題だけはどうにもなりません。

「購入前に周辺は何度も見に行きました。でも、どんな人が住むかまではわからない。今は、上階のお子さんが小学校に入って、家にいる時間が短くなったり、落ち着くのを待つばかり」

中村さんは苦笑します。最悪の場合は売却もできますが、せっかく手に入れた家。その判断は簡単ではありません。

マンションなどの集合住宅では、生活音をめぐるトラブルは珍しくありません。国土交通省のマンション総合調査(令和5年度)でも、居住者トラブルの第1位は「生活音」となっています。

中村さんは今、こう話します。

「もしもう一度買うかどうか選べるなら……もう少し慎重に考えたかもしれません」

どれだけ物件を調べても、実際の住環境は住んでみないと見えない部分もあります。また、住人の入れ替わりで環境が変わってしまうことも。持ち家か、賃貸か。 その選択は人それぞれですが、どちらを選んだとしても、どんなに下調べをしても後悔する可能性がある。それは心に留めておく必要がありそうです。