【政界】歴史的勝利を収めた高市早苗首相 「重い責任」を背負う中で求められる覚悟と手腕
笑顔なき圧勝
「重要な政策転換についての訴えが国民の皆様から理解、信任をいただけたものだと受け止めている。おごることなく、謙虚に受け止め、党一丸となって公約に掲げた政策を力強く推進していく」─。高市は衆院選から一夜明けた2月9日、自民党本部で記者会見し、圧勝した勝因についてそう語った。
そして「重要な政策転換」として挙げたのが、責任ある積極財政への転換や国家安全保障戦略など安保3文書の前倒し改定、そして国家情報局の創設といった政府のインテリジェンス(情報収集・分析)機能の強化などだった。
そのほかにも、予算編成の単年度主義からの決別などにも言及。「政策転換を何としてもやり抜けという力強い形で背中を押していただいた。党一丸となって、歯を食いしばって、国民の皆様とのお約束を実現していく。私はその先頭に立ち、やり抜いていく」と訴えた。
株式市場も自民党圧勝を好感した。高市が積極財政路線を推し進め、様々なリスクを最小化する「危機管理投資」や先端技術を花開かせる「成長投資」の動きが加速するとの見方が広がり、2月9日は日経平均株価が一時3000円以上も急上昇し、終値は5万6363円と史上最高値を更新。10日も続伸して終値が5万7650円となり、連日の最高値更新となった。
期待が膨らみ、高揚感も漂うが、9日の記者会見では高市に笑顔はなく、緊張感を漂わせていた。「重い重い責任の始まりで、身の引き締まる思いだ」。自身が訴えてきた「重要な政策転換」が進まなければ、期待は失望に変わり、一気に失速しかねないからだ。
そもそも高市が賭けに出た衆院解散・総選挙は周到に戦略が練られていたとされる。まず、争点を封じたことだ。その争点のひとつが消費税減税だ。《飲食料品は、2年間に限り消費税の対象としないことについて、今後『国民会議』において、財源やスケジュールの在り方など、実現に向けた検討を加速します》。高市は自民党の衆院選公約に「悲願だった」という消費税減税を盛り込ませた。
国民にとって税金は安いにこしたことはない。物価高が家計を直撃しているから、なおさらだ。中道改革連合は「食料品消費税ゼロ」と公約で掲げ、国民民主党などは消費税全体を一定期間5%に引き下げると宣言している。消費税減税に慎重だった自民党が減税を打ち出したことで野党との対立軸はなくなった。
争点封じて結果
もっとも、食料品の消費税率をゼロにした場合、年間で約5兆円の税収が失われるとされる。一律5%に引き下げれば、約15兆円の税収減になる。消費税は年金、医療、介護など社会保障の財源に充てることになっており、当然、社会保障サービスを維持するための財源確保が欠かせない。
高市は当初、財源を巡り「2年間の限定であれば特例公債(赤字国債)に頼らなくても確保できる」と主張していたが、選挙戦が始まると「今後、設置される『国民会議』で検討を加速する」との説明にとどめた。
新たな国民負担につながりかねない財源論には野党も踏み込まず、「政府保有資産の運用益を充てる」(中道改革連合)、「ありとあらゆる財源を使う」(国民民主党)などと具体性に欠ける対策を示した。選挙期間中も財源を巡る議論は深まらなかった。
