高梨沙羅選手を揶揄、「りくりゅう」の関係を邪推…下世話なSNSに弁護士が警鐘「愚かな投稿を振り返れ」
ミラノ・コルティナ冬季五輪が盛り上がりを見せている。日本選手のメダル獲得も好調で、開幕前に比べても注目度は一段と高まっている。しかし、選手への心ない声も問題視されている。
誹謗中傷対策に取り組むJOC(日本オリンピック委員会)によると、1月18日以降、中傷を含む投稿が6万件以上確認されたという。
五輪に限った話ではないが、女性アスリートに対し、競技の本質とは関係のない顔立ちやメイク、体型などに言及する下世話な投稿がSNS上で相次いでいる。
さらに、フィギュアスケート・ペアで金メダルに輝いた「りくりゅう」コンビ、三浦璃来さんと木原龍一さんの関係性を邪推する投稿も散見される。
こうしたSNS上の言動にとどまらず、スポーツ紙など一部のネットメディアが「美しすぎる」など外見に焦点を当てた記事を量産し、そのコメント欄にも心ない言葉が書き込まれる構図が生まれている。こうした現状に対して、寺林智栄弁護士が警鐘を鳴らす。
●女性アスリートへの中傷にみる「日本がまだ男社会」
スポーツ選手の中でも、とりわけ女性アスリートの容姿は、SNSや報道で話題にされます。
「美人」「かわいい」といった称賛の言葉がある一方で、「ブス」「化粧しろ」、さらには「化粧しすぎ」などと揶揄する投稿もよく見られます。
男性アスリートについて容姿が話題にのぼることはあっても、外見をあからさまに揶揄する投稿はほとんどないのが実情です。
こういった風潮は、日本社会がまだまだ「男社会」であり、男性の容姿を否定的に論じることははばかれる一方で、女性に対しては外見を評価・批評することが許容されやすい空気があると考えられます。
●公に発信すれば慰謝料請求のリスクも
競技にどう向き合い、どのような身なりで臨むかは、性別を問わずアスリート本人が決めるべき問題です。
もちろん観戦者側が「もう少し整えれば良いのに」「あそこまでお化粧しなくても良いのに」と心の中で思うことは自由です。
しかし、本人の目に触れることを半ば前提として、SNS上へ書き込めば、人格を否定する表現と評価され得ます。その内容によっては、不法行為(民法709条)に該当し、慰謝料請求を受ける可能性もあります。
●「りくりゅう」や高梨沙羅選手への無配慮な言葉
今回のオリンピックでは、フィギュアスケートの「りくりゅう」ペアについて「男女関係にある」と決めつける投稿や、スキージャンプの高梨沙羅さんについて「顔が変わった」「美容整形している」などとするコメントも多数見受けられます。
言葉遣いも非常に下世話で、読んでいるほうが恥ずかしくなるものも少なくありません。
このような投稿は、選手のイメージを悪化させうるものであり、先ほどと同じように、個人の人格を侵害するものとして、民事責任を問われる可能性があります。
●名誉毀損罪に問われることも
それだけでなく、不特定または多数の人が閲覧できる状態で、具体的事実を摘示してその人の社会的評価を下げる投稿で、あまりに悪質であれば名誉毀損罪(刑法230条)が成立するリスクもあります。
投稿者は、自分が感じたことを面白半分でSNS上にコメントしているのでしょうが、残念ながら、法的なリスクがあることにまったく思い至っていません。
表現の自由は重要な権利ですが、無制限ではありません。個人の人格を傷つける表現については、法的責任が生じ得ることをすべての人が認識する必要があります。
●極限で戦うアスリートに指図するな
世界を舞台に戦うアスリートは、日々、自らを極限まで追い込みながら競技に向き合っています。
自己表現のあり方も含めて、アスリート本人が決めるべきことであって、観戦者がこうしろああしろと指図すべきものではありません。
●「男女関係」と決めつける→人間として恥じるべき行為
また、複数の人が組む競技は、当然のことながら高度な信頼関係が必要であって、そこには一般人の理解を超えた感情があると考えられます。
男女ペアの種目を見て「仲が良さそうだから男女関係があるに違いない」といった憶測を断定的に発信する行為は、人間として恥ずべき行為といえるでしょう。
このような投稿をしてしまった人は、自分の愚かな行為を振り返ってほしいと思います。
冷静に投稿を見返して、もしそれをされたのが自分だったとしたらどう感じるでしょうか。それをよくよく考えることが必要ではないでしょうか。
【取材協力弁護士】
寺林 智栄(てらばやし・ともえ)弁護士
2007年弁護士登録。札幌弁護士会所属。法テラス愛知法律事務所、法テラス東京法律事務所、琥珀法律事務所(東京都渋谷区恵比寿)、ともえ法律事務所(東京都中央区日本橋箱崎町)、弁護士法人北千住パブリック法律事務所(東京都足立区千住)、NTS総合弁護士法人札幌事務所を経て、2025年12月からてらばやし法律事務所。離婚事件、相続事件などを得意としています。
事務所名:てらばやし法律事務所
事務所URL:https://www.attorneyterabayashi.com/
