(写真提供:越乃さん 以下すべて)

写真拡大 (全2枚)

100年を超える歴史を持ちながら常に進化し続ける「タカラヅカ」。そのなかで各組の生徒たちをまとめ、引っ張っていく存在が「組長」。史上最年少で月組の組長を務めた越乃リュウさんが、宝塚時代の思い出や学び、日常を綴ります。第118回は「マックスパパの特等席 番外編」です。

【写真】劇場の空気は、やっぱり特別です

* * * * * * *

前回「男役のスイッチが入る瞬間は、音よりも早く一瞬。最初にそのすごさを感じたのは、ある方の…」はこちら

男役の色気

男役の色気とは、いったい何なのでしょう。

かつてよく聞かれた「色気」というものについての質問に、「自分ではわからない」といつも答えていました。

理屈では説明できない現象であって、理論ではないのです。

宝塚を客観的に見られるようになった今、その説明不能な正体が、ようやく少しだけ見えてきました。
 

単純な演出などではなく…

男役の色気というものは、実は見せようとした瞬間に、すっと逃げていきます。
わざとらしく足せば足すほど遠ざかっていくのです。

宝塚の男役の色気は、そんな単純な演出などではなく、もっと静かで、もっと厄介です。
力を抜いた立ち姿。
ほんの少しの「間」。
表情よりも、仕草よりも、「余白」に宿るものなのかもしれません。

何かを見せつけるわけでもなく、媚びるわけでもなく、ただそこに立っているだけで、空気の密度が変わってしまう。
視線を奪うのではなく、呼吸を奪っていく。

そして、格好つけているようで、じつは自然体で、作っているようで、作っていない振りをして、全部作っている。

そう。
男役とは、厄介な生き物なのです。

客席の空気がふっと揺れる瞬間

先日『エリザベート TAKARAZUKA30周年 スペシャル・ガラ・コンサート』の幕が上がりました。
期間限定のお祭りは、どの組のバージョンも熱く、そして濃い。

衣裳をつけて舞台に上がると、空気が一変します。
独特の緊張感と高揚感。
そして、元タカラジェンヌたちが放つ熱量のすさまじさ。

経験を重ねた男役が、そこにいるだけで場を支配してしまう瞬間には、正直ゾクッとします。

元タカラジェンヌ達は、魅せ方を知っています。
そして同時に、力の抜き方も知っています。

頑張っているのに頑張って見えない。
無駄がない。
迷いがない。
焦りがない。

その絶妙な余裕と、男役の残り香のような色気に、客席の空気がふっと揺れる瞬間を、今なお最も体感している一人です。

今の宝塚を牽引するトップスターは…

男役の色気とは、たぶん「見るもの」ではなく、「浴びるもの」なのでしょう。
そして浴びすぎると、人生観が少しだけ変わってしまうようです。

今の宝塚を牽引するトップスター、鳳月杏さんと朝美絢さん。
私が組長時代の下級生です。

鳳月杏さんは、静かに人を落とすタイプです。
男役の美学を極め、大人の包容力と余裕をまとい、ふとした仕草に色気を感じさせる人。
大人の包容力と余裕が、観る人を安心させつつ翻弄するという高度な技術をもっています。

朝美絢さんは、反対にエネルギー溢れる動の人です。
美しさと視線で射貫き、ふとした瞬間に少年のように笑ったかと思えば、次の瞬間は誰も近づかせない大人の顔をする。
その振り幅が観る人の心をくすぐり、強引に奪っていくタイプです。

注)どちらも私の勝手なイメージです。

色気を感じた時は、大概本人が無自覚な時だったりします。
そんな無防備な色気を目撃してしまうたびに、思うのです。

男役って、やっぱり恐ろしい。

あれを知ってしまったら最後。
人生観が少し狂ってしまいます。

一度ハマると抜け出せない宝塚という沼に、さぁあなたもハマってみませんか?


『エリザベート TAKARAZUKA30周年 スペシャル・ガラ・コンサート』感謝を胸に駆け抜けます