子どもに「スマホやめなさい」は逆効果すぎる…勉強中でもYouTube三昧だった息子を変えたシンプルな声かけ
※本稿は、高橋暁子『スマホで受験に失敗する子どもたち』(星海社新書)の一部を再編集したものです。

■スマホを取り上げたらキレて暴れた中学生
ここでは、実際に生徒・学生がスマホとどのように付き合ってきたか、具体的な対処法について解説していきます。その前に、大前提としてお断りしておきたいのが、スマホ・ゲームを取り上げたからといって、勉強や受験勉強などをするとは限らないということです。
考えれば当たり前のことですが、受験生ではない保護者の皆さんがスマホやゲームを捨てたからといって、受験勉強をするようになりますか?昇給などに役立つ資格試験ならともかく、する必要もないのにわざわざ大変な受験勉強をするわけありませんよね。
子ども達も同じです。「志望校に合格したい」「次のテストではもっと順位を上げたい」など、勉強に対するモチベーションがなかったら、単にスマホやゲームを失っただけで終わってしまうのは当たり前です。
そもそも「取り上げる」と保護者主体となっている時点で間違っているのです。以前、スマホゲーム依存となっている中学生の保護者から、「スマホを取り上げたのに、思ったように勉強してくれなかった。それどころか取り上げたことにキレて暴れて大変だった」という相談を受けたことがあります。
詳しく聞いてみると、やる気以前に学校の授業についていけない状態が長引き、だんだん勉強そのものが嫌いになって、スマホやゲームに逃避していたということがわかりました。
■我が子がスマホゲームに依存した本当の原因
この生徒は小学生時代、勉強が得意なタイプでした。努力の甲斐あって中学受験では志望校に合格しています。ただ、親のすすめで受験したため、その学校に入りたいとか、通いたいという主体的な気持ちはありませんでした。
生徒が進学した進学校は高校2年生までに大学受験に必要なすべての学習内容を学び終えて、高校3年生は大学受験のための勉強に集中できるように学習進度が速いことで知られています。それ故、気を緩めたら授業についていけなくなってしまう生徒も少なくはありません。
学業不振になった生徒も受験勉強から解放された気の緩みから勉強をサボりがちになった結果、授業についていけなくなっていました。小学生までは勉強につまずくことがなかっただけに、効果的な勉強法を知らずに、どうしたらよいかわからなくなった生徒が逃避先として選んだのがスマホゲームだったというわけです。
つまり、本当の問題はスマホゲームではなく、生徒の学習内容に対する理解と学習に対するやる気だったのです。『スマホで受験に失敗する子どもたち』の中では、スマホやゲームは、学業不振や人間関係トラブル、家庭内不和などの逃避先になることが多いとご説明しました。このような例は、決して珍しいことではないのです。
■「取り上げ」や「制限」の前に親がやること
この生徒の場合、まず、つまずいたところから復習し、理解できるようにして、勉強への抵抗感を除いてやる必要があります。自分の好きなことややりたいことについて考えさせ、改めて学習する意味を考えさせる必要もあるでしょう。
自分がスマホゲームを逃避先にしてしまっていること、その時間を減らして自分の生活を取り戻す必要があることが理解できれば、徐々に日常生活を取り戻していけるはずです。根本的な理由を理解せず、スマホやゲームを取り上げたり制限したりしても、何の効果もなかったのです。
本書では様々な制限する方法をご紹介してはいますが、実はどれも完璧な方法というわけではありません。ここでは深くご紹介しませんが、ほとんどのものには、バグ的な抜け道や制限突破の方法があります。そのような方法を公開している場も、たくさんあります。少し調べる力があれば、方法を見つけ出して制限を解除するのは、それほど難しいことではないでしょう。「既に抜け道を知っている」という方もいるかもしれませんね。
しかし、抜け道があったらその方法は無意味というわけではありません。それを使えばやはり制限しやすくなるし、長時間利用になりづらいだけでも効果があります。
■子ども自身が「自分のため」だと思えるか
素直なお子さんなら黙って制限されているかもしれませんが、反骨心があり、リテラシーや検索スキルなどが高いお子さんの場合は、抜け道を見つけ出してしまうかもしれません。そのようなタイプのお子さんであればより一層、制限する意味を理解し、それが自分に利することを理解し、自ら協力して制限したいと思わなければ意味はないでしょう。
そして前提として、子ども自身に「学習内容を理解したい」「成績を上げたい」という強い気持ちや、「志望校に受かりたい」という強い願いがあることも大切です。子ども自身が、「悪い成績でも気にしない」「高校や大学への進学に興味がない」のであれば、悪い成績をとっても失敗ではないので、このやり方が成り立たないかもしれません。
子どもが、学習内容を理解したい、成績を上げたい、志望校に受かりたいと思っていること。スマホ、ゲームやSNSの利用時間が長いことで支障が出ることがわかっており、利用時間は短くすべきであり、自分のためになると考えていること。それが、制限が効果を発揮するためのほぼ唯一絶対の条件なのです。
以前講演会で、「子どもがスマホ、ゲームやSNSを制限したい気持ちにならなかったらどうすればいいですか」と、ある保護者から聞かれたことがあります。「制限機能をかけていたのに、いつの間にか破られていました。どうすればいいでしょうか」という相談も、何度も受けています。皆さんは、どう思われますか?
■YouTubeをやめられなかった息子
私の息子はYouTubeを観ることが好きなのですが、一時期勉強中もやめられないほどハマってしまい、その結果、彼自身が後悔した出来事があります。もちろん、家庭で使用するタブレットなどYouTubeを視聴できる端末には制限機能をかけていました。では、息子はどうやって制限時間を超えてもYouTubeを観ていたと思いますか?
なんと、学校から貸与された端末のゲストモードで観ていたのです。息子が学校から貸与された端末は、残念ながら親からは制限できませんでした。息子がYouTubeを観ながら定期考査の勉強をしているので、「それでは気が散って勉強にならないから、勉強のときは観るのを止めたら」と指摘しましたが、「観ながらでも勉強できる!」と強気で、観るのをやめませんでした。

そこで、私は思案した挙げ句、あえてそのまま放っておくことにしました。制限機能だけで制限することは難しく、本人にその気がなければ効果に乏しいと思ったからです。受験生ではないので、自分の思うとおりにやったらどうなるのか、しっかり失敗を体験してみるいい機会ではないかと考えました。
勉強部屋から笑い声が聞こえてきたり、開いている問題集のページが同じところで2日くらい止まっていたりしました。それでも、あえて何も言いませんでした。
■テストの点数が下がり学年順位も低下
その結果、定期考査の点数がかなり下がってしまい、学校内の順位も落ちてしまいました。順位表を私に出したがらず、「順位がものすごく落ちた」と肩を落としていました。不本意な点数と順位を取ってしまったことは明らかで、本人も見るからにショックを受けていました。
「原因は何だと思う?」と聞くと、本人から「YouTube」と返ってきました。「じゃあ、次はどうしたらいいと思う?」と聞くと、「テスト前だけ端末を預ける」と自分から言い出しました。
そこで、次の定期考査前は、学校のタブレットを含め、私がすべての端末を預かりました。はじめは静かなのが気になったようですが、すぐに慣れて集中して勉強できるようになりました。休憩中などに、「端末を返そうか?」と言いましたが、意外なことに、「いらない」と観たがりませんでした。
結局、端末を預けて勉強した結果、順位も点数も大幅に上がり、元に戻りました。「勉強したら、このくらいの点数はとれるんだ! よかった!」と、本人が安心したように言っていたのが印象的でした。
「子どもに制限機能をかけたのに破られた」
「ルールを決めたのにいつの間にかなし崩しになった」
そのようなご家庭は多いはずです。では、なぜこのやり方はうまくいったのでしょうか。
■本人に自覚させることがスマホ依存脱出のカギ
それは、本人が不本意な失敗をして、その原因を自覚できたからです。「YouTubeを観ながらでも勉強はできる」と本気で信じていたけれど、できないということがわかったのでしょう。

もう一つは、本人が「自分で決めて、端末を預ける」提案をしたということです。私は取り上げたのではなく、その協力をしただけです。反対に、保護者だけが問題と思っている場合、先回りして制限することがありますが、当人が問題に思っていない場合は、ただ「親に取り上げられた」と思うだけです。
この年代の子どもは特に、親が無理矢理押し付けても、反抗して逆に言うことを聞きません。私が無理矢理取り上げていたら、こっそり観ようとして、逆に集中できなくなっていた可能性もあります。
本人が「YouTubeの視聴をやめたい」とか「端末を預けるべき」と思っていないのに、制限したり取り上げたりしても、子どもはなんとかして抜け道を見つけ出します。制限機能で制限をかけるだけでは成功せず、子どもが制限を破ってしまうのは、本人が制限するべきだと思っていないからです。
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高橋 暁子(たかはし・あきこ)
成蹊大学客員教授
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、webメディアなどの記事の執筆、講演などを手掛ける。SNSや情報リテラシー、ICT教育などに詳しい。著書に『若者はLINEに「。」をつけない 大人のためのSNS講義』(講談社+α文庫)ほか多数。「あさイチ」「クローズアップ現代+」などテレビ出演多数。元小学校教員。
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(成蹊大学客員教授 高橋 暁子)
