記事のポイント
トランプ政権による税控除終了でEV需要の減速が懸念され、ボルボは米国市場でのシェア拡大に挑む。
ボルボは広告費の約30%をブランド認知向けチャネルに投じ、州ごとに最適化した地域密着型戦略を展開している。
厳しい業界環境のなかで、ボルボはブランド信頼の構築とパフォーマンス重視の地域戦略を両立させようとしている。


ドナルド・トランプ米大統領のいわゆる「ビッグ・ビューティフル・ビル」により、電気自動車(EV)購入への7500ドル(約110万円)の税額控除は9月末で打ち切られる。これにより、EVの売上は落ち込む可能性があり、経済の逆風や関税による自動車価格上昇の影響も合わせて懸念される。

こうした逆境のなか、ボルボ(Volvo)は米国での市場シェアを現在の1%から2%に拡大し、EV売上を伸ばすことに取り組んでいると、ボルボ・カーズ・アメリカズのマーケティング部門を率いるラファエル・ウゴ氏は語る。目標達成のため、グローバル自動車ブランドである同社が選んだマーケティング戦略は、オフラインの地域密着型アプローチだ。

「我々が見るかぎり、この転換、この移行は、数年前の我々の想定よりもスローペースで進んでいる」と、ウゴ氏は述べる。「我々としては、この2%への成長を、ガソリン車から電気自動車への転換を象徴するものとしたい。そうした顧客はすでに市場にいるのだから」。

州ごとに異なるEV戦略を展開



ボルボはこうしたマネーの流れの変化を受けて、広告費の30%をブランド認知チャネルに配分することを決めた。ここには屋外広告、スポンサーシップ、パートナーシップ、インフルエンサーマーケティング、対面イベントなどが含まれる(ウゴ氏は広告費の具体的な数字を明かさなかった)。同社がこれまで、全方位・全国規模のデジタル戦略を主軸とし、顧客にボルボのEVの購入を促すだけでなく、カテゴリーとしてのEVの普及を推進してきたことを考えれば、明らかな方針転換だ。

「特に大きな効果が期待できる、特定の州や地域にフォーカスする必要があるだろう」と、ウゴ氏は述べる。「市場、ビジネスチャンス、文化輸出といった観点から、より投資が合理的といえるエリアへの、集中的な予算配分に着手している」。

ボルボの地域密着型アプローチは、今年1月の時点で、IPG傘下の新興グローバルメディアエージェンシーであるイニシアチブ(Initiative)が手掛けている。ボルボのマーケティング戦略は、全米50州のすべての人々をターゲットにするのではなく、技術革新やサステナビリティーへの関心が高いと思われる、特定の州にフォーカスすることを意図していると、ウゴ氏は(具体的な州や地域の名前を出すことなく)説明した。

「将来的には高級EVブランドとしての認知を確立したい。そのためには、州ごとに異なるアプローチが必要だ。各州の住民がどんな人々で、どんな行動をとり、どんな生活をしていて、それぞれのエリアでEV化がどのような本質的メッセージをもち得るかを、じっくりと検討しなければならない」と、ウゴ氏は語る。

ボルボがブランド投資と地域戦略を再構築



この戦略転換は、決定的なタイミングで進んでいる。EV売上はまだ順調だが、このブームが長くは続かない可能性があり、各自動車ブランドはEV戦略の再考を迫られている(たとえば、EVメーカーのリビアン[Rivian]は今夏、経済的逆境のなか市場シェアを拡大すべく、同社初のブランドキャンペーンを展開した)。

EVへの連邦税額控除が9月30日で終了する見通しとなったことに加え、輸入関税、法整備をめぐる不確実性、インフラ整備の遅れといった要因が、少なくとも米国においてEV普及を妨げている。会計・コンサルティング大手EYによる最近の調査によれば、米国でバッテリー式EVの普及率が50%に達するのは2039年になる見通しで、前回の予測から5年先送りされた。

一方、ボルボグループの第2四半期収支報告書には、同社がいう「自動車業界にとって厳しい環境」の影響が感じられる。同社の報告書によれば、今年上半期の自動車売上は、前年同時期と比べ9%減となった。

独立系メディアエージェンシーのトゥルーメディア(True Media)で統合メディアディレクターを務めるデリン・マッキー氏によれば、ボルボの戦略は、ブランド構築と地域密着型パフォーマンスマーケティングのバランスの適正化だという、これは、ほかの大手ブランドの取り組みと軌を一にするものだ。「不確かな時代に、自身を信頼できるブランドとして位置づけようとしているのだ」と、マッキー氏は述べた。

[原文:How Volvo is marketing its electric vehicles in a moment of uncertainty]

Kimeko McCoy(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:坂本凪沙)